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THE Farm<テネシー>

アメリカやヨーロッパでは、病院でのアメニティ(居住性)がとても大切にされていています。「世界の分娩室から」では、最新の設備と居住性を備え、注目を集めている分娩室を取材し紹介します。


アメリカ/テネシー州 THE Farm

THE Farm


ホーム・バース。
今、世界的にも自然なお産を目指す人々に注目されている、古くてもっとも新しいお産。

本でも、最近、少しずつだけれどホーム・バースが増えてきた。
医療機関に移動して出産を迎えるのではなくて、自分の家で産むホーム・バースは、太古の昔から行われていたお産の形だけれど、医療にお産が取り込まれてからはどんどんその数が少なくなっていた。そこに、また登場してきたホーム・バース。今、世界的にも自然なお産を目指す人々に注目されている、もっとも新しいお産でもある。

アメリカ南部のテネシー州、ナッシュビル。そのそばに、『The Farm』という、かつてヒッピー・ムーブメント華やかし頃、ヒッピーたちが集まって作ったコミューンがある。ここの住人たちは、全員がベジタリアン。彼らは、野菜を栽培して食べ物をつくり、学校、家、エコロジーなエネルギー開発と、開設当時からなんでも自分たちの手で手作りして、生活してきた。

お産も当然のように、自分たちの手で行ってきた。ファームの中で赤ちゃんが生まれるとき、当初は、女性同士助けあって介助していたのだけれど、そのうち、産婆のような役割をする人ができた。その人はその後、独学で医学の勉強をして、今では世界的に注目される助産婦になっている。

アイナ・メイ・ガスキン
彼女の名前は、アイナ・メイ・ガスキン。
私がファームを訪れると、アイナ・メイは広いファームの中を案内してくれた。
ファームの中には、クリニックもある。ここでは、妊婦検診のほかにも、怪我をした人の簡単な治療などを行っている。今は住人が190人と少なくなってしまったので、医師はいなくなってしまったけれど、かつては医師がいて、ファームだけでなく、近隣の人たちも診療に訪れてきたという。

お産は、このクリニックで行われることもあるけれど、ほとんどはそれぞれの自宅で行われる。
今は、あまり赤ちゃんを産む年齢の女性が少なくなって、ほとんどお産は行われていないようだったが、今までファームでは2000人ほどの赤ちゃんが生まれている。ファームに住んでいる人ばかりでなく、シングル・マザーが出産しにくる場合もあるし、アイナ・メイに取り上げてほしくて、カップルでファームを訪れて出産する人もいる。
助産婦はアイナ・メイのほかに、もう2人ほどいて、陣痛が始まると、広いファームの中を車で産婦の家に駆けつける。もちろん薬を使わない自然なお産だ。西洋の国々は、日本に比べてお産のときに麻酔を使うことがはるかに多いので、麻酔を使わないお産と聞くだけで、日本人より、ずっとビックリするようだ。もちろんお産が緊急な場合には、ナッシュビルの大きな病院まで、産婦を運ぶこともある。


赤ちゃんがたくさん生まれていた頃。最初の1000例(70〜79年)について、アイナ・メイは統計をとっている。そのうち訳は、自宅出産925、クリニックでの出産32、病院への搬送43。母体死亡0、周産期死亡15。帝王切開900例中8。1000人のうち15人の赤ちゃんが死んでしまっているのは多いのでは?と思うかもしれないが、1979年当時、日本の周産期死亡はまだ、1000例中21.6人だったことを考えると、ちっとも多い数ではない。しかも、日本のこの数字は、ほとんどが病院出産のものだ。
本当に自然に出産の経過をみていくと、これくらいの統計になるのではないかとアイナ・メイも言っている。帝王切開、死亡などの率が、一番自然ではないかというのだ。「しかし、これは20年ほど前の数字、今なら助産婦の技術も上がり、病院の医療技術も高くなっているから、もっと多くの赤ちゃんを救うことができるでしょう」と彼女は言う。
私たちはなんとなく、自宅出産は危険、という先入観がある。しかし、自宅出産は、かえって病院での出産より危険性が少ないというデータもある。
ファームのようなお産を行っているところは、世界広しといえども、コミューンという形ではここしかないだろう。自然に囲まれた環境の中で、しっかりした技術を持つ助産婦に手厚い援助を受けながら出産することは、都会の人にとってはある種、理想のお産の形かもしれない。

写真/文 きくちさかえ 1996掲載 1997,1999更新


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