お産のための中医学
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「中医学」は、日常生活に活かせる知恵の宝庫。妊娠・出産、育児の 強い味方でもあります。
10年以上にわたる取材で得た知恵の数々、ひとりじめは もったいない!ということで、 みなさまにも中医学の知恵をおすそ分け!です。

楽しい中医学 その5

風邪をこじらせないコツ

「気」の不足が風邪を招く?
インフルエンザで「衛気」の力を実感
漢方薬は使い分けが大事!


by 中医学ライター 高島系子 掲載:2003年11月

「気」の不足が風邪を招く?

インフルエンザが猛威を奮った昨年の冬。私は、おもしろい体験をしました。
昨年の夏から秋にかけてどういうわけか、とても疲れやすく、子どもの風邪を次から次へともらってしまう、という状態が続いていました。これまでは、風邪用に何種類かの漢方薬を常備して、症状や体調に合わせて飲む、という方法をとっていたのですが、この時はそんなセルフケアもまったく効かず、風邪をこじらせてばかりいました。
これではいけない、と中医師に相談したところ「気の不足は明らか」と指摘され、その他もろもろの問題点を改善する漢方薬に加えて、「玉屏風散(ぎょくへいふうさん)」という漢方薬を毎日服用することになったのです。

「玉屏風散」という薬には、体の抵抗力のもとである「衛気」の働きを高める作用があります。「風邪をひきやすく治りにくい」という症状のほか、花粉症の予防・治療などにもよく用いられます。黄耆(おうぎ)、白朮(びゃくじゅつ)、防風(ぼうふう)という、たった3つの生薬しか入っていない、とてもシンプルで穏やかな薬です。


インフルエンザで「衛気」の力を実感

それから2ヶ月経った、今年の1月下旬。子どもが、保育園で大流行中のインフルエンザをもらってきました。
高熱で、うわごとまで言い始めた息子が心配で、ほとんど眠れぬ夜を過ごし、ようやく熱が下がったときには、看病疲れでクタクタになっていました。そして、翌日には夫がダウン。ああ、次は私だ、ただの風邪でさえ、こじらせてしまうのに、こんなに疲れているときに、インフルエンザになんてかかったら、どうなってしまうんだろう!と戦々恐々としていた私だったのですが……。

きたきた!と思ったのは、ほんの一瞬のこと。体が熱っぽく感じた時点で、「玉屏風散」をやめて、風邪の熱症状をとりのぞく漢方薬に変え、さぁて、次は咳か?鼻か?と構えていましたが、どういうわけか、体調はそれほど悪くならず、熱も37.5度までしか上がらないのです。結局、当時「品不足」と話題になっていた某抗ウイルス剤を、たまたま入手・服用した夫より、ずっと早く、簡単に治ってしまいました。


漢方薬は使い分けが大事!

こんなふうに、「衛気を高める漢方薬」をのんだことによって、「風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりにくくなる」「かかっても軽くすむ」などの体験をすると、ともすると絵空事に思える中医学の理論も、ぐんと身近に感じられるようになります。
といっても、「玉屏風散」をのめば、誰もが同じ体験ができるというわけではありません。風邪をひきやすく、こじらせやすい人には、比較的使いやすい薬ではあるのですが、体を温める作用があるので、体に熱がこもっている人には不向きですし、私のように、体の弱点を補う薬をプラスするといった工夫が必要な場合もあります。
ちなみに、風邪薬で有名な「葛根湯(かっこんとう)」だって、合うときと合わないときがあります。葛根湯は温めて発汗させる作用が強い薬なので、ゾクゾクと寒けがして、水っぽい鼻水が出るようなときにはよいのですが、のどの痛みがひどく、体がほてって布団をはぎたくなる、などというときにのんでしまうと、かえって症状を悪化させることもあるのです。こういう「熱い風邪」には、体の熱をさましながら発汗させる漢方薬(「銀翹散(ぎんぎょうさん)」など)が、強い味方となります。

大切なのは、風邪を予防したり、治したりするときには、そのときの体の状態に合った漢方薬を選ぶ、ということです。「漢方薬は即効性がない」「風邪の初期には漢方薬をのむけれど、効かない」と思っている人も多いようですが、それはもしかすると、そのときの体の状態に合った漢方薬ではなかったのかもしれません。


風邪をこじらせずに治すためには

じつは、私のインフルエンザ体験には後日談があって、高い熱は出なかったものの、食欲がなく、だるくて、胸部や体が締めつけられるような感じが2〜3日経っても消えませんでした。そのときに中医師に相談して出してもらったのが、「柴胡(さいこ)」という「気」をめぐらせる作用が強い生薬が主成分の漢方薬。
1包飲んだだけで、体がふわ〜っとほどけていくのが分かり、2包目をのんだあとは、ほとんどいつもの体調に戻っていました。
「玉屏風散」のように、長くのみ続けることで効果が表れる薬もあれば、こんなふうに1包で効く漢方薬もあるのです。

風邪ひとつとっても、バリエーション豊富な漢方薬を使いこなすためには、やはり、中医学の基本的な考え方を知っておいたほうがトクです。最初は、話をよく聞いてくれる専門家に相談しながら薬を選ぶと、徐々に理論のほうも頭に入ってくるはずです。
ただ、その「専門家」をみつけるのに苦労している人も多いことでしょう。そこで、次の機会には、「中医学の診察を受けるには?」というテーマで、専門家の選びかたや、中医学の診療の特徴を紹介したいと思っています。


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監修/医学博士・産婦人科医師(故)進 純郎先生(監修当時)葛飾赤十字産院院長




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