なつのいちにち
はたこうしろう/作 偕成社 ¥1,050-
「外でサッカーしたいな」と言う息子。
近所には同じ年ごろの友達がたくさんいるので、「誰か誘って来るー。行ってきまーす!」と自転車で出かけていった。しばらくして帰ってきた息子は、「だれもおともだちなんかいない」と、しゃくりあげて泣きだした。聞いてみると、習い事をしてたり、テレビゲームしてたりで、外に出て遊べる子はいなかったらしい。私は息子の頭をぐしぐしっとなでて、「かわいそうに」と思ってしまう。
・・・かわいそうって、誰が?
その時、私たちの目の前を、黒アゲハが優雅に横切っていった。息子は、「おっ・・・」と、あわてて網を持って駆け出して・・・そして、またしばらく帰ってこなかった。
大きな麦わら帽子をかぶり、背丈の倍ほどもある網を持って、輝く海の浜辺を、緑の草の中を、ひとりで駆け抜けていく男の子。
私はふと、私の知らない息子ひとりの時間を想った。
絵本の中に、男の子が蹴る砂ぼこり、ざわめく木の声、子どもの頃感じた夏休みの光と影・・・。
虫の声までも聞こえてくるようだ。
そうだ。子どもの時、何かに夢中になっていたその時、こんなむせかえる夏の暑さの中に、はてしなく長く思える時間があった。
たったひとりで何かを真剣に求めることの大切さに気付いたのは、大人になって、それもつい最近のことのように思える。
ひとりはさみしい。そう思えばさみしい。でも、大人数で遊ぶ楽しさを知ってしまっても、ひとりの時間を楽しく過ごすことができる子は、自分を大切にできる子は、きっと友達も、友達と一緒に過ごす時間も、大切にできる子になる・・・、そう私は信じてる。
「ただいまー! お母さん トンボいっぱいつかまえたよー。ちょうちょも3コ。アゲハは逃げちゃったけどね。」見ると、息子の後ろに近所の男の子ひとり。
「あれ? 友達もひとりつかまえた?」息子とその男の子は、顔を見合わせてにやっと笑い、今度は2人の時間を楽しみに、また駆け出して行ったのだ。
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