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photo by きくちさかえ

半年に渡って特集として取り上げた「電磁波問題」も今回が第6回となりました。そこで、電磁波問題に取り組み、ここまでいろいろな現状を教えてくれた市民科学研究室の上田さんといっしょに、子ども達を産み育てる私たちがどう電磁波リスクと向き合 い、子どもたちが生きる未来に何ができるのかを話し合いました。
そこからは、いままでの生活をどう変えて、子ども達とどう生きてゆくのかのヒントが見えてきました。




電磁波、どんな影響があるの?

家の中にも電磁波がいっぱい?

街やオフィスの危険な電磁波

子どもと電磁波

妊娠と電磁波

今、未来の子どもたちのために

「不確実な危険だから大丈夫」とは言えない!
  子ども達のために今すぐに予防的生活を始めよう

たくさん使って、たくさん食べて......
  そんな社会が長くはもたないことは誰もが感じているはず

「便利が豊か」という思い込みはもう捨てて、
  安全と健康という本当の豊かさを見つめ直すこと

【電磁波の被害がはっきりしないそのワケは?】

各国の電磁波対策/国際機関の基準






「不確実な危険だから大丈夫」とは言えない!子ども達のために今すぐに予防的生活を始めよう

この特集を通して、電磁波問題というのが私達の想像以上に深刻だったことが本当によくわかりました。
家庭でも外でも、子ども達のすぐそばには電気を過剰に使う環境がすでに出来上がっています。そのなかで、子どもの心と身体を守ってあげることがいかに難しいことか!中でも母親のおなかの中にいるときから、赤ちゃんはすでに電磁波に被曝しているというのは本当に衝撃的でした。
健康な子どもを産み、育てたいという当たり前な願いさえ難しくなっているとしたら、私たちはこれからもっと真剣にこの 問題に向き合わなければいけませんね。

「そうですね。今までお話してきたとおり、電磁波のことはまだまだわからない部分はたくさんあります。本当に危ないのか?健康への影響があるならどの時期にどう出るのか?個人で対策をとっても防げないことが多いならばどうしてゆけばいいのか?不確実なことはまだ山積みです。でも、個人がかかえるリスクがはっきりとわからないからこそ今できることはやっておく、という考えは持つべきであることがいままでのお話でわかってもらえたと思います」


『予防原則』の考えですよね。健康被害のメカニズムがわかっていなくても、何かのリスクを持っている可能性があるなら事前に回避、対処すること...私達はこれから子育てをするうえでしっかりその考えを生活のなかに取り入れることが大切だと思いま した。
今、早い時期から習い事や受験の準備とかいろいろ整えるお母さんが増えていますが、本当に何よりも早く必要なのは、子どもが健康に育つための根本的な生活環境なんだと思います。

「そう、予防医学という言葉も最近定着してきましたが、何ごとも予防するほうが効率がよいのは確か。できる限りリスクを小さくするように、予め打てる手は打っておく。これは子どもを持つ親に限らず、環境リスクにさらされている人なら誰もが生活の基本にしてほしい考え方です。『予防原則』と言うのはこれから政府がとってゆくべき政策の指針ですが、日本はまだその考えが定着していませんよね。
電磁波はその健康被害の研究が難しいために不確実な部分が多いということで立ち遅れているのが現状なのですが、ヨーロッ パではすでにこの予防原則にのっとった政策を出しているところがとても多い」
各国の電磁波対策・国際機関の基準等


特に子ども達を守るための内容となっている政策が多いですよね。

「身体ができあがった成人の大人より、まだ未成熟で影響を受けやすい子ども達を守る必要性のほうが高いという考えからですね。前にも話に出ましたが、そもそもリスクを回避する基準というものは"最も弱いもの"を優先に考えてあげるべき。
具体的に言えば、すでに健康被害のある人、おなかの中の赤ちゃんなどを基準にすることです。いままでそうした考えがないがしろにされていたと思いますね。しかし、環境ホルモンが示すように、胎児は化学物質などへの感受性が高く、種々の環境リスクが深刻な影響をもたらしかねないことが明らかになってきているのです」


お腹のなかの赤ちゃんでも、環境に対して何かしら反応しているということがとても衝撃的でした。

「妊婦さんたちはそのことをしっかりと頭に入れて、環境リスクからおなかの中の赤ちゃんを守ってあげて欲しい。そして出産に関わる医師たちも、妊婦さんたちにあたりまえに環境リスクに対する予防のことを指導してあげなければいけないと思います」


日本でお医者さんがそういう指導をする、というのはあまり耳にしませんよね。

「世界的な動きとしては、例えばアメリカでは『子供環境健康ネットワーク』というのがあり、次の世代が健康に育成してゆく社会のために活動している学際的な全米プロジェクトがあります(http://www.cehn.org/)。
複合的な原因となっている環境リスクに対して、医学、生命科学、社会科学など様々な領域の学問を統合させて、研究や教育を盛んに行っています。
また同様の趣旨を掲げた『子供環境健康研究所』(http://www.iceh.org/)や『子供健康環境連合』(http://www.checnet.org/)などのNPOも盛んに活動しています。」


これからそうした動きが日本にも広がってゆく可能性はあるんでしょうか?

「最近、千葉大学の森千里氏ら環境医学の専門家たちが『次世代環境健康学』の創設を提唱しています(http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/bioenvmed/cehsfg/)。
こうした動きを市民として注目していきたいですね。電磁波について言うと、WHO(世界保健機構)では電磁波に関するレポートがまとまりますが、そうした世界の動きに私たちが注目することが、社会をかえてゆくことにつながってゆくんです。政府が動かないなら市民が声をあげてゆくことが大切。
電磁波のリスクを避けるための対策は、個人では対処しきれない部分があります。例えば家電製品に関しては自衛の手段がとれますが、携帯タワーや高圧線、放送電波などは個人では対処しきれませんよね。たとえば今、全国では携帯タワーに関する紛争が100件近くあります。」



携帯タワーは何の規制やルールもないまま、爆発的に増えましたよね。

「それはルールを作る前に、携帯電話を使うのがあたりまえという社会が先にできあがってしまったがゆえの衝突でしょう。携帯がないと仕事や人間関係に差しつかえが出たり……というわけでアンテナがたくさん必要になってどんどん作られた。こうなってしまうと、後から規制をつくって一律にそれを守りなさい、ということが難しくなってきます。
一度、 生活や社会に普及したものを排除することは大変ですから。しかし「学校や病院の周りには高圧線や携帯タワーを建てない」など、状況を見極めた上での細かい方針をたててゆくことはできます。
電磁波の規制に関しては、これからはこうしたきめ細やかな政策的アプローチを考えてゆくことが必要になるでしょうね」





たくさん使って、たくさん食べて......そんな社会が長くはもたないことは誰もが感じているはず

一度使うと手放せない...。それは子供達にもとてもあてはまることですよね。子どもに 一旦与えたものを取り上げるのは大変ですから。

「そのとおりです。子どもの時期に携帯電話やテレビゲームを与えてしまうと、それが手放せなくなる。長時間テレビをだらだらと見たり、いつまでも蛍光灯をこうこうとつけて夜更かしをする生活習慣も、一度定着すると直すのは大変でしょう。だから親がコントロールする必要があるんです。これは子どもに対する携帯だけではなく、すべてのことにあてはまります。
生活家電や街の照明など、大量の電気を消費する社会は、電磁波被曝の多い社会です。電磁波のリスクを予防するためには、電気の使用を上手に抑制していくことがどうしても必要になってくるのです」


それは確かに言えますが、先ほどの話の通り、一度便利な生活を味わってしまうとそれをなくすことは難しいですよね。

「別に不便な時代に戻れというわけではないですよ。例えば1980年代初頭とくらべる と、今の電気の消費量は3〜4割増しくらいになっています。
でも、1980年代はそんなに不便な世の中だったでしょうか? 充分に快適な生活をおくれるレベルだったと思います。 そのころの電気消費量に戻せば、原子力発電所も必要なくなるんですよ」


そうしたら電磁波と原子力という両方のリスクが避けられるわけですね!
そう言われてみると、必要だと思い込んでいるものって意外と多いような気がします。家電でもそうですがどんどん新しいものを取り入れて、便利になっているようで 便利じゃないものって多いかも。IHクッキングヒーター、DVDレコーダー、食器洗い乾燥機など新しい家電がどんどん出ていますが、いろいろな情報が飛び込んできて必要だと思い込まされているのかもしれません。
手入れが面倒だったり、場所をとったり、使い方が複雑で自分の手を使った方が早かったり...。

「それはあるでしょうね(笑)。それに私たちは親の世代とくらべると、自分の手で何かを創るという生きる力が低下していると思います。
便利さにどっぷりとつかってしまった弊害だと思いますが、衣食住すべてにおいてそれは言えるでしょう。
特に食べ物は顕著ですよ。過剰摂取がどんどん進んでいて、肥満や慢性の成人病がまんえんしています。食べなくてもいいものがたくさん溢れていて、色々なものを食べるのがいいのだと情報に踊らされているんです。自分で調理して食べる楽しさやシンプルな食べ物のおいしさを再確認して欲しい。
過剰消費のなかで必要だと思い込まされている錯覚に早く気付いて欲しいと思うんです」





「便利が豊か」という思い込みはもう捨てて、安全と健康という本当の豊かさを見つめ直すこと

「この過剰消費社会が長く続かない、変えてゆかなくてはいけないというのは誰もが感じているはずです。
エネルギーの枯渇や環境破壊のスピードを見れば、先がないことは明らかですよね。今、この過剰消費、過剰開発の社会から抜け出すことが電気消費を少なくして、ひいては電磁波被害を予防することができるんです。
今のように電気を消費しないと楽しめないというのは錯覚であり思い込み。もっと本来の生きる力や楽しさを取り戻すこと。ゆっくりとした穏やかな生活を楽しむこと。それが大切だと思うんです」


そういえば、最近ではスローライフ、スローフードをうたう本やテレビが多くの人の興味をひいています。穏やかな生活を楽しみたいという人が増えてきているように思えます。早さや便利さばかりを追求する生活から"ゆっくりと生活することを楽しむ生活"へ。
それが電磁波被害から子どもたちを守るためのキーワードになりそうで す。

私達はたくさんの情報のなかからリスクとメリットを計りにかけつつ、本当に自分達、子ども達に必要なものを見定める目をちゃんと持っていなければいけない。子ども達 が当たり前に健康に育ち、安心して生きていけることが一番の豊かさなんですね。
親である私達は、これから何を選ぶ時もそれを基準にしていきたいと思います。





【電磁波の被害がはっきりしないそのワケは?】

 電磁波が何にどう作用して危ないのか?どれくらいのリスクがあるのか? まだ不確実な部分がたくさんあります。それには電磁波というものの性格による難しさがネックになっているようです。そのため、電磁波の実験と研究は個々の研究者たちが行っているとはいえ、リスクを論じるのを避ける研究者も多いといいます。
しかし、それでもヨー ロッパの多くの国では『予防原則』の考えにのっとった政策をとっています。  ここではどうして電磁波の研究が難しいのかの理由と、他国で行われている予防原則的政策を改めておさらいしてみました。なぜ電磁波の弊害がはっきりしないのか?  はっきりしないのにどう予防するのか?のヒントにしてもらえればと思います。

●電磁波の研究の難しさはココにある

 電磁波の健康被害に関する研究は、大きくわけて3つの方法で行われています。
 ひとつは『細胞レベルでの実験研究』。細胞に電磁波を当てて、遺伝子やホルモン等の変化をみるものです。電磁波が細胞に対してどう作用するのかのメカニズムを探ることが目的です。しかし、実際の人体内の細胞は他の多くの因子がからみ合うためにこうした実験で使われる細胞とは環境が大いに異なります。そのため、実験結果が実際の人体の「健康」と直接結びつくとは言い切れません。もうひとつの『動物実験』も、動物で得られた結果をそのまま人にあてはめることには限界があるといえます。そのため、細胞や動物の器官に対して電磁波が何かしら影響があることが実験で現れても、イコール生きている人体にも同じ変化があらわれる、と断定ができないのです。
 三つ目に『疫学研究』があります。これは発病のメカニズムはわかりませんが、 病気との因果関係を推定することができます。しかし、やはり電磁波以外の因子(化学物質や生活習慣など)は人それぞれ違うものが関わってくるために推定でしかなく、断定することは難しいといえます。
 そして電磁波の研究や実験をもっと断定できないものにさせているのが電磁波の "不確実な性格"です。例えば、町中にも家にも電磁波は常に溢れているため、人や環境によって一日の電磁波の被曝量を正確に計ることはとても難しいといえます。そして、被曝している条件が非常に似ていても「発症」の現れかたや程度は明確に一致するとは限りません。また、同じ理由からある研究者が行った実験を、他の研究者が同じ方法で行っても同じデータ出ないこともあったりするようです。
 このように目に見えず、正確に被曝量を測れない電磁波については正確に実験、研究することはとても難しいのが現状なのです。
 

●リスクと対処をどう考える?

 環境リスクについてあえて2つに類別してみると、ひとつは“生じる確率が低くても予想しえる被害が大きいリスク”で、これはたとえば一旦起きれば被害が甚大となる原子力発電所の事故などのケースを含みます。もうひとつは"予想しえる被害が小さくても広範囲の人にかかわるリスク”。電磁波はこちらにあてはまります。普通の環境で電磁波を浴びたとしてもすぐに健康被害を被るわけではなく、個人としてはリスクは比較的小さいものと考えられます。しかし、今の日本の社会のなかで電磁波を浴びていない人はほとんどいないとも言えます。そのため、もし被害が現れはじめたらそれは非常に広範囲なものとなると考えられるのです。
 それだけ広範囲な人々が浴びているということは、それだけ電気というものに非常なメリットがあり、なくてはならないものであるということ。そのため、電気の使用そのものを否定することは不可能でしょう。そのメリットを計りにかけながらどの程度使用を制限してゆくか?予防原則の考えと照らし合わせながら考えてゆくことが大切になります。


2004年2月掲載 2005年9月更新


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