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24時間計測を終えて
見えたこと。思うこと。

NPO市民科学研究室 上田昌文さん

はっきり見えてきた、IHの電磁波リスクの本当のところ

ここ数年の間で、IHクッキングヒーターが新しい調理器として急速に普及し始めています。やはり、電磁波のリスクについて研究をしているものとしては、とても気になることでした。
そこで、3、4年前からIHクッキングヒーターについて、電磁波の計測をはじめとして様々な面から検証を始めたのです。そして今回、初めてIHを含めた実際の家庭生活のなかでの電磁波被爆状況を把握することができました。

今回の測定で、際立って大きな被曝量を示したのが、業務用のIHクッキングヒーターです。保育園で調理師をしているAさん(ケース2)の場合、IHによる調理時間は午前で3時間20分、午後で2時間5分、合計で5時間25分。特に午前中の調理でIHのフライヤーを使用した際のピーク値は、今回の実験で最高値である64.14μTを記録しています。一日平均でも0.57μTとなっており、これは高圧線のもとで常時0.4μTを被曝する環境とトータルな被曝量では変わらないか、それを上回るという状態になっていると思われます。

国際安全基準の約10倍という数値を計測した業務用IH

このことが浮き彫りになったとき、いちばん最初に頭をよぎったのは、妊婦や 胎児への健康影響のことです。「妊娠と電磁波」の回でも取り上げましたが、 アメリカの研究機関がサンフランシスコの妊婦を対象に行なった研究では、最 大で16mG(ミリガウス)以上の電磁波を日常的に浴びていた10週目未満の妊 婦さんは、流産のリスクが約6倍にもなるという結果がありました。16mG は、1.6μT(マイクロテスラ)ということです。今回、業務用IHから瞬間 的に被曝するのが64.14μTですから、そのリスクを心配しないわけにはいきま せん。

確かに、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が定めているガイドラ インでは、今回計測した50Hz(ヘルツ)〜800Hzの範囲の周波数においては、 「磁場の強さは100μT(50Hz )〜6.25μT(800Hz)([磁場の強さ]×[周波数 の大きさ]=5000に収まるような磁場の強さ)以下でなければならない」と定 めています。その点からすると、今回計測器で拾えたのは主に50Hz の周波数 の磁場(電源からの電磁波)ですから、その基準値は100μTとなり、64.14μT はそれ以下ということになります。しかし、0.4μTの磁場で小児白血病のリス クが増加するという報告や、1.6μTで流産のリスクが増加する報告がなされて いることを思うと、この基準はあまりにも甘いと考えるべきでしょう。しかも IHには、今回の計測器では拾えていませんが、その特殊な加熱のしくみため に、これまでの家電製品からは出なかった25kHz(キロヘルツ)やその整数倍 の周波数の磁場が出ていて、私たちの別の計測でも、業務用のものはその周波 数での磁場の強さがガイドラインを超える場合のあることがわかっています。

また、家庭用のIHも機種によって放出している電磁波の大きさに違いがあること、IH上の調理プレートの大きさに対して小さい鍋を使うほど曝露する電磁波が大きくなることなどが、今回新たにわかりました。

IH以外にもこの基準に抵触しうる可能性があるものとしては、電車、電気カーペット、ドライヤーなどであることもわかっていただけたことと思います。また、電気ストーブをかかえるようにしていたケース3のKさんや、家電製品に身体を密着させるクセをもつケース1のIさんのように、電化製品の使い方や身体の位置によって、曝露量を増やしてしまっている例もありました。


瞬間的に曝露量を跳ね上げたナゾの犯人とは…

そして今回、新たに計測したグラフをみていて気づかされたことがありまし た。改めてグラフを見て頂くとわかると思いますが、特に家電製品を使ってい ないときにも、瞬間的にグンと数値が跳ね上がるときがケース1から4まで見 て取れます。最初は不思議に思っていたのですが、ふと思い当たったのが携帯 電話です。
携帯電話は電波をキャッチした受信のときと発信したときに、瞬間 的に大きな電磁波を放出するのが特徴。もちろんそれはマイクロ波を使ってい ますから、それ自体は今回の計測器では計れません。ところが、電波には情報 を乗っけるために変調というの操作が加えられていて、そのときに低周波 (50Hzを主とする周波数の電磁波)を使っています。この値も、受信と送信の 瞬間には大きくなります。計測器が拾ったのこれだったのです。計測器との距 離がどれほど離れているかで大きく値は変わりますが、おそらく腰の部分に装 着してその近辺で携帯電話で送受信したと思われます。その場合に2〜3μTの 値を記録していることから、もし送受信時に端末を頭部に密着させるようなこ とがあると、頭部への曝露はさらに大きくなっている可能性があるわけです。

ちなみに、携帯電話を所持していない私のケース(ケース5)では、この特徴的なピークは見られませんでした。


電磁波による健康被害リスクを避けてほしい母親予備軍の女性たち。

今回の測定から思うのは、被曝の強さや被曝時間のいずれの面からみても、IHだけが必ずしも主要な被曝源となるとは限らないということです。使用時間や使い方、機種によって大きく差が出ることがわかりました。
そしてそれは、IHだけに限らず、家電製品全般に言えることだと思います。家電製品も携帯電話も「使うときには身体からなるべく離す」。これが曝露量を減らす一番のポイントでしょう。

もう一つのポイントは、電磁波被曝のリスクが高い時期にハイリスクの電化製 品をできるだけ使わないことではないでしょうか。感受性がとりわけ高くなる と考えられるのは、妊娠中や胎児期、そして神経系の発達が完成にむかう子ど もの時期です。そうした時期には、被曝量の大きくなりそうな製品を上手に避 けたり、もし使ったとしても被曝量が少なくなるように使い方を工夫したりす ることが心がけていただきたいと思います。


●今回の実験の被験者17名全員の電磁波曝露量その他の平均値:データはこちら


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