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ちきゅうの食卓1

地産地消で地球にやさしい食スタイル


1.畑とつながる台所

 東京都世田谷区に住む岡嵜(おかざき)さん家族の週末は、近くの体験農園で畑仕事をすることからスタートします。草むしりをするお父さんの横で、お母さんと娘、息子は真っ赤に熟れたトマトやピーマン、ナスなどの夏野菜を収穫。
家に帰れば採れたて野菜の料理と天然酵母パンでゆったりランチ。旬の美味しさと家族の愛情がたっぷりの岡嵜さん家の食卓は、まさに地球にも家族にもやさしい食卓。

協力/NPO法人市民科学研究室 2009年10月掲載

2. 地球に負担をかけない食べ方「地産地消」


ラタトゥユ

料理は家族みんなでつくる。主に均さんがレシピを組み立て、畑で採れた野菜を計画的に、無駄なく食べ尽くす。ラタトゥイユの隠し味は、畑で間引いた人参の葉っぱだ。

岡嵜均さん、泉圭子さんご夫妻は、共働きながら毎朝、毎夕ご飯を家族みんなで食べ、子どもにも調理に参加してもらうなど、「食」を生活の基本に据えています。旬の美味しさと家族の愛情がたっぷりの岡嵜さん家の食卓にみる、地球にやさしい食のあり方とは……


 トントントン……。包丁がリズミカルな音を立てています。包丁を握っているのは、何と6歳の女の子。岡嵜さんファミリーの長女・香奈子ちゃんです。
「玉ねぎを切ると、目が痛くなるの」。そう言いながらも、香奈子ちゃんはとても手際よく、玉ねぎをみじん切りにします。「ありがとう。助かるわ」。圭子お母さんが褒めると、香奈子ちゃんは得意げに微笑んで、今度はパンを捏ねている均お父さんのところへ。お父さんの育てた天然酵母のパン生地を、弟の厚史くん(3歳)と一緒にコネコネと丸めます。「あっくんは、トウモロコシが好きなんだ」。生地を丸めてトウモロコシを混ぜ込む厚史くんの手つきは、とても3歳児とは思えないほど手慣れたもの。いかにお手伝いが身についているかがわかります。

 取材の日は、夏の暑い盛り。この日はトマト、キュウリ、ナス、ピーマン、ししとうが収穫できました。これらの野菜を調理して、夏野菜のラタトゥイユ、キュウリの冷製スープ、自家製天然酵母のピタパンとコーンパン。焼き立ての香ばしいパンは、ナス、ピーマン、玉ねぎ、トマトを野菜の水分だけでじっくり煮込んだラタトゥイユにぴったり。キュウリの冷製スープは、さっぱりしていて夏の火照ったからだをクールダウンしてくれます。ほとんどの食材が今日採れたばかりの新鮮なもの。何と贅沢な食卓なのでしょう。


畑の朝食

畑の朝食
メインディッシュはもちろん採れたての野菜。自分の顔ほどの大きさがある真っ赤なトマトにかぶりつく香奈子ちゃん。さぞかしお腹がいっぱいになったことだろうと思うと、畑じゅうを厚史くんと元気に駆け回り、お昼ごはんもたっぷり食べる。キュウリは自家製の味噌につけていただく。

 岡嵜さん一家の週末は、朝早くから世田谷区の体験農園に出向き、畑の野菜とパン、紅茶で軽く朝食にした後、家族全員で汗を流します。一家族あたり約10坪の面積で、収穫の時期はご近所におすそわけしても余るくらいに大量に採れるとか。一時期に同じ野菜がたくさん採れるので、それをいかに無駄にせず、食べきるかに知恵を絞ります。ここで岡嵜家のお父さんの出番。均さんの料理の腕前は玄人はだしで、和洋中印、驚くほどのレパートリーを披露してくれました。

「ナスなら、焼きナスにすれば10本は食べられるし、ココナッツオイルで炒めてピーナッツ粉で和えればアジア風。中華風にアレンジするなら味噌炒め、オリーブオイルと胡椒でグリルすれば簡単にイタリアンになりますよ。レシピのバリエーションを増やすことで、同じ食材でも飽きないんです」

 なるほど、主婦顔負けのアイデアです。畑の野菜で足りない分は、長野県で有機農業をやっている農家から取り寄せで補い、スーパーで買い物をすることはほとんどないとか。
「露地栽培の新鮮な野菜を毎日食べているから、スーパーで買った野菜の味はすっかり忘れてしまいました。たまの外食も、満足できるお店がなかなかなくて、困ってしまいます」。そう言いながらも、圭子さんはそんな生活を心から楽しんでいるようです。実は、圭子さんは妊娠するまでは畑仕事に興味はなかったといいます。「子どもができてから食の嗜好が変わったんでしょうね。鮮度のよい、ちゃんと味のする食材でないと、食べられなくなったんです。そして、ついには畑仕事までするようになってしまった」と笑います。

 さて、子どもたちは畑で収穫のお手伝いをしながらも、チョウチョやクモ、毛虫を見つけてはおおはしゃぎ。大きく成長した里芋の茎をおもちゃにして、遊んでいます。野菜だけでなく、虫や雑草も含め、畑は子どもたちにとって教材の宝庫です。食べものがどうやってできるのか、そして食べものを大切に食べきる心を、畑に出ることで自然と学んでいるようです。


岡嵜家ではさぞやご両親が熱心に「食育」をしているのかと思いきや、意外にも均さんからはこんな答えが返ってきました。 「実は“食育”という言葉に、アレルギーがあるんですよ。我が家は特別なことをやっているとは決して思いません。お手伝いというのは、子どもにとっては家庭のなかで役割を与えられること。美味しい体験ができることがわかれば、子どもたちは一生懸命働くし、おのずと学ぶんです」
 確かに一昔前までは、子どもが親の手伝いをするのは当たり前の風景でした。香奈子ちゃんや厚史くんにとっては、包丁を持ったり、野菜を炒めたり、畑仕事をすることは、テレビを観るよりもずっとエキサイティングかもしれません。

岡嵜さん 岡嵜さん一家
 しかも、生きた野菜たちは何よりの教材です。暑い季節に食べる生の野菜は、ほどよい水分と酸味でからだに元気を与えてくれます。スーパーで年がら年中同じ野菜を食べるより、旬を楽しみ、その季節に味わい尽くす。そんな贅沢を岡嵜家の子どもたちは当たり前のものとして体験しています。
「これからますます温暖化が進んでくると、今は普通に食べられる食材も、なかなか手に入りづらくなるかもしれません。現に、石油の高騰で、輸入食材や、ハウス栽培の野菜がどんどん値上がりしています。結局は“地産地消”で、旬のものを食べるという当たり前の食生活に戻ることが、子どもの未来にとって必要なことかもしれませんね」(均さん)

地球の食卓 by babycom

ちきゅうの食卓 INDEX

1.地産地消で地球にやさしい食スタイル

2.その食べもの捨てないで!フードロスを考える

3.食品ラベルから始めるエコライフ

4.「もったいない」のセンスで考える

5.伝えたい、豊かな自然環境と食文化


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