アメリカ不妊事情レポート-7
babycom ARCHIVE

出生前診断と揺れる母性(1)

「出生前診断と揺れる母」
ニューヨーク市立大学社会学教授バーバラ・カッツ・ロスマン氏に聞く

出生前診断と揺れる母

女性のからだと社会システム

代理母.....妊娠はサービスか?

産むことと育てることは別な問題

自分らしいチョイス



2003年、babycom では、アメリカの不妊治療の状況についてレポートしてきた。最近では、アメリカの代理母に依頼して双児が誕生したというタレントの向井亜紀さんの報道が伝えられ、また、アメリカの代理母の元に生まれた子どもの戸籍が問題になっている50代の日本人カップルについてもニュースで報じられた。
2003年は、そうした意味で、日本の不妊治療の事情が大きく変ぼうを迎えた年と言っていいかもしれない。一方、アメリカ国内でも、代理母による出産に対して、賛否両論の議論は続いていることも事実。

バーバラ
2003年9月、ニューヨーク市立大学社会学教授のバーバラ・カッツ・ロスマン氏が来日。ロスマン教授は、フェミニストとして、また社会学者として長年、生殖医療について研究してきた人だ。その著書「母性をつくりなおす」(勁草書房)では、出生前診断や不妊医療、生殖テクノロジーの発展と母性との関係について、ラジカル・エコ・フェミニストとでも言うべき論調で、警告を鳴らしている。
ロスマン教授が来日したさい、babycom ではインタビューをお願いし、生殖医療と母性に関しての意見をうかがった。


ロスマン教授は、1974年に、はじめての子どもを出産。大学院で社会学を勉強する学生だった彼女は、病院で麻酔による無痛分娩が主流だった時代に、女性として大切にされる出産がしたいと、自分で医師を探し、自宅出産をする。
その体験がきっかけとなって、社会学のテーマに、出産や生殖医療を選ぶことになったという。
その後、ロスマン教授は、多くの助産婦や妊娠、出産した女性たちに会い、学会などに出席し、文献を調べ、出産にかかわる研究を続けた。80年代になると、羊水検査を含む出生前診断が普及。彼女のテーマも広がっていくことに。

「出生前診断が登場してきた当時、女性たちはこれで障害をもった子どもを産むことを事前に防ぐことができると、福音のように言われた時期もありました。けれど実際には、出生前診断を受けた女性から、いろいろな問題があるという話を聞くようになりました。検査を受けたことで傷つく母性というものが、新たに出現するようになってきたのです」

出生前診断がなかった時代には、ありえなかった新たな不安や心配が母親たちを取り巻くことになったのだ。

「妊娠するとすぐに検査がはじまり、女性たちは妊娠しているあいだ中、出産するまでさまざまな検査を受けなければなりません。まるで妊娠して、出産するためには免許が必要で、そのために検査をくり返しているかのように思えるほどです。
ところがこのような検査は、つねに女性に幸福感を与えてくれるわけではありません。むしろ女性にとって、妊娠や出産が大変な道であるかのように思わせ、負担に感じさせることがあります。
検査結果によっては、『あなたには赤ちゃんをもつかもたないかの選択をする必要があります』とか『何らかの危険性がある』と教えられることがあります。けれど、妊娠を継続するか、しないかと選択を迫られても、すでにもう妊娠しているわけですから、ひじょうに難しい問題です。
女性にとってもうひとつ別のチョイス、検査を受けないというチョイスの道があります。検査を拒否すれば、女性は夫や両親、まわりの人たちから、反対されるかもしれません。これは女性にとって大変勇気がいることですが、自分と赤ちゃんを守るために、大切な選択肢のひとつではないでしょうか」

取材:きくちさかえ(2004年2月)

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