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不妊体験・不妊治療レポート
不妊を考える「ウノトリはやってくる?」


日本の不妊医療について感じること N・Aさん、研究者、New York, USA

不妊医療を受けることを自然に受けとめたい M・Mさん

冷え性の克服 ぴよよ さん、エドモントン

アメリカでの代理出産 KBさん、カリフォルニア州

心のケアを担う場所を S.Kさん


 40歳、妊娠10週。渡米前は、内科医師として総合病院で働いていました。結婚は、7年前の33歳。35歳から子づくりに積極的に取り組むようになりました。
 38歳の時に、不妊症の精密検査を夫婦ともに受け、その時点では異常なしといわれ、排卵誘発剤を使う治療を行いましたが、仕事も忙しく、通院不能となっていました。2000年12月末に主人のニューヨーク赴任に伴い、留学先を探して渡米。渡米後、下腹部激痛に悩まされ産婦人科を受診したところ、子宮内膜症が疑われ、2001年6月に腹腔鏡下手術をうけ、子宮内膜症IV期(骨盤内で癒着)と診断され癒着剥離と、骨盤腔内の子宮内膜の焼却術を受けました。手術後、激痛は消失し(生理前、生理中の鈍痛は残っていますが)、数カ月後より人工受精、そして、2002年になってからは体外受精に切り替えていきました。医師の最初の説明では、1回で妊娠する確率は40%、2回では80%といわれ、気をよくしていたのですが、卵巣の機能を反映しているとされている生理3日めのFSH(卵胞刺激ホルモン)値が正常より高く、すなわち卵巣機能が低下していることが判明し、その後の説明では、1回目の妊娠確率は25%にまでに落ちてしまいました。医師の説明の通り、第1回目の卵胞刺激ホルモン治療では、卵胞が3個しか育たず、3個以下では体外受精と人工受精の妊娠の確率は同じということで、低費用の人工受精となりました。その時点で、2回目の方法を少し変えた治療でうまくいかなければ、提供卵使用の選択があり、卵を提供してくれる姉妹はいないかという話になり、私には姉妹はいなかったのですが、他人の卵使用の体外受精は日本に戻ったらできないことを考え、かなり真剣に提供卵使用と養子について考えました。ところが、2回目の治療では、うまく卵胞が6つまで育ち、うち2個を子宮に戻すことができ、今は晴れて、10週目で、つわりと腹痛(内膜症の癒着のためといわれています)に苦しんでいます。
 前置きが長くなりましたが、この貴重な体験を通じて、少しでも日本の不妊医療が改善されればという気持ちで書かせてもらっています。


1. 日本の不妊治療は働きながら通える環境にはない。

 検査は期限が限られています。でも、治療は無期限、そして予定もたちません。日本では、勤務先からタクシーで15分ほどの不妊外来というのに通いましたが、待ち時間は約2時間で仕事をしながら通えるものではありませんでした。また、医師に次回の受診日は都合が悪い旨をいうと仕事か子供かの選択を示唆される始末で、日本では二兎は追えないのかと思ったものでした。こちらに来ると、マンハッタンの真ん中のセンターであるからでもあるのでしょうが、仕事を持つ女性がほとんどと見受けられます。そして、なによりも救われるのは、朝7時から受け付けで、早く行きさえすれば仕事には全く支障ありません。もちろん、土日もやっています。また、ホルモン注射は全て自己注射もしくはパートナーに打ってもらう。私も、主人に打ってもらいました。従って、治療中ももちろん採卵する時と胎芽を子宮に移植する時には休まなければいけませんが、その他は、時間的には仕事との両立が可能なのです。

2.アメリカの不妊治療は情報が全て公開されている。患者も受け身ではいられない。

 第1回目と特別に予約をとった時以外は、アメリカでも診療は3分間診療でした。内診台の上で経膣エコーをしながら、話しをするだけです。医師も、行くたびに変わります。一時は私も、説明不足に対し、主治医に不満をぶつけました。でも、その施設のホームページをのぞくと、ちゃんとそこの施設の治療の仕方、薬についての説明があり、最新の約1年間の成績が40歳未満、40歳以上で明記されているのです。過去のデーターに基づいた治療をなされていることを確認でき、安心させられました。もちろん、医師に説明を求めてもすぐに説明は戻ってきますが。また、ボイスメイル、E-メイルで質問すれば、すぐに返事が戻ってきます。日本でも、不妊治療を積極的に行っている施設はたくさんあると思います。それでも、アメリカのように1施設に症例は集まっていないせいもありますが、情報公開がまだまだと思うのです。また、こちらの患者さんは本当によく勉強しています。こちらの医療だって何から何まで説明してくれるわけではありません。ぽんと何ページもある専門用語だらけの承諾書を兼ねた説明書を渡されるとか、質問しなければ、それこそ全てわかっているとして対処されてしまうのです。アメリカでは患者は受け身ではいられない。そのためか、ウェブサイトでも病気に対する正確な情報を結構入手しやすいような気がします。

3. アメリカでは不妊治療は夫婦で受ける。

 アメリカでは、共働きは普通です。周りの人たちも子育ては夫婦でほぼ同じ負担でやっており、それと同様、子づくりについても、ほとんどの場合、痛み、苦しみ、楽しみを夫婦で分かちあおうとしています。不妊治療についても考え方は同じです。不妊外来も多くの人たちは夫婦で来ていますし、診察室にも一緒に入ります。妊娠すると、職場の人たちも心から祝福してくれます。不妊治療、妊娠に対する精神的なストレスが、これらによって軽減されるような気がします。

4. 不妊治療費負担について。

 アメリカでは、不妊治療に対しては、保険によって異なるようですが、薬と検査の一部については保険が効くようです。でも、医療費が(マンハッタンがまた特に高いのかもしれませんが)なにしろ高い。不妊治療についていえば、おそらく3倍から5倍の金額なのではないでしょうか。だから、一部のヨーロッパやニュージーランド、オーストラリア(よくは調べてはいませんが、年令や回数によっては負担はほとんどないときいています)に比較すると、そんなに恵まれているとは思えません。日本政府も、本気で少子化対策を考えているのであれば、子供を生みたいと思っている夫婦の経済的負担を軽減すべく、医療費とは別枠で考えてはもらえないものでしょうか。

 医療制度、医療者側の意識、患者側の意識の改革、不妊治療を含む子育てに対する夫婦間や社会の意識の改革など、日本の不妊医療を改善するにはまだまだ問題が山積みと思います。でも、社会を本当に変えることができるのはこのサイトのような、当事者のナマの声だと思います。私も、babycom で討論に参加できればと思っています。

1.コウノトリはやってくる?

2.先端的不妊治療の中で

3.もう一つの不妊治療

4.不妊症のメンタルケア

5.コウノトリと母性



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