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WM特集 エッセイ 子育て・仕事・わたし3

お母さんの秘けつ

babycom「育児・子育て」で、生後一ヶ月からの『子どものからだと病気 - ひだまりクリニック』を担当していただいているDr.ひだまりさんの連載エッセイ。「子育ても仕事もどちらも大事」と言うひだまりさん。ふたりのお子さんを育てているご自身の体験からの、ほんのりあたたかいワーキングマザーへの応援エッセイです。

 ........ファミリーサポート
 ........どうしょうもないお母さん?
 ........素敵なお母さんの秘けつ


ファミリーサポートをご存知でしょうか。自治体単位で行われている、公的なベビーシッターのようなサポートシステムです。子育てで困っている人を、同じ地域の人が助けてあげましょう、というありがたいもので、地域によって制約はいろいろあるようですが、随分と浸透してきたようです。
私は時々、こうしたファミリーサポートを提供している会員向けに「子どもと病気」に関する講義を引き受けています。提供会員の方は、主に子育てに一区切りついた主婦の方が多く、ご夫婦で面倒をみてあげようと退職されたばかりの男の方、結婚前の若いお姉さんといった感じの方と、いろいろです。
子育て経験のある方々が、こうして次の世代の子育てに参加してくだることは、とても嬉しいこと。経験を生かして、さらにお母さんの気持ちに寄り添ってサポートしてくだされば、お母さん達はどんなに楽になることでしょう。私自身は実家と保育園が近くて、お世話にならないですんでいますが、双子を出産した友人は出産前後に随分助けてもらったという話を聞いています。

講議では、子どもに多い一般的な症状や病気の対処法をお伝えして、事故にくれぐれも注意してくださいとお願いしています。でも、あまり怖いことをいうと、やっぱりやめようかなあなんて思われたら大変ですから、その辺も気をつけながら・・・。病気や事故の対処は万一のときのために知っておきたい知識ですが、一番大切なのは子どもを預かってくれるサポーターの方々と、お母さんとのコミュニケーションだと思います。


先日、その講議の中でこんな質問をいただきました。
「先生が健診や外来で会うお母さんの中で、最近会ったどうしょうもないお母さんと、この人は素晴らしいなぁと思うお母さんをそれぞれご紹介ください」と。
私は、この「どうしょうもないお母さん」というフレーズにひっかかりを感じ、ちょっと動揺してしまいました。私自身、自分の子育ての中で「優等生の母」などと自慢できることは何もありません。もしかしたら「どうしょうもないお母さん」かもしれないと、内心不安になっていたくらいです。だから、どのお母さんを見ても「どうしょうもない」なんてとても思えないのです。

どうしょうもないお母さん?
母親はそれぞれに、一生懸命に頑張っているに違いありません。子どもを産んで、それまでの人生とはまったく異なった環境の中で、思ってもみなかったことに直面してしまうようなこともあります。それでも、必死でなんとかやっていこうとしている人の気持ちは、私にはとてもよく理解できます。「どうしょうもない」なんてとても思えません。ただただ「頑張ってね、後で振り返ればあの悩みが私を育てたんだと思える日が来るから逃げないでね」と祈るような気持ちになります。
「どうしょうもない人」という言葉には、ある種の人たちにレッテルを張り、ほかと区別するようなニュアンスが感じられます。けれど、質問された方は、べつに悪気があってそう言ったわけではありません。「ただただ常識のないと感じられる人がいて、最近困っている」というのです。

ファミリーサポートでのルールを守らない人や、クレームを議員や役所を通して言ってくる人もいるそうです。頼んでいたのになんの連絡もなく、サポート会員が保育園に迎えにいくと「今日はお子さんは来ていません」ということが何回もある、という驚くべき人もいるのだとか。結局は常識のない人、権利ばかりを主張する人、約束を守れない人、そういう人が時々お母さんの中にいるという話でした。互いに気持ちよくいい関係を築けることも多いけれど、中にはこういう残念なこともあり、めげてしまうんですという話してくれました。「どうしょうもないお母さん」というのは、こういう意味だったのですね、納得。


もちろん、心に残る素敵なお母さんはたくさんいます。最近、健診で出会ったひとりのお母さんは、二年あけて二人目を出産をしたばかりでした。疲れた様子でも、母親らしく充実した幸せそうな雰囲気が印象的でした。「手伝ってくださる人はいますか」と聞くと、実家に帰っていないので夫だけが頼りだとのこと。老婆心ながら「やってもらってあたりまえ、と思わずに感謝の気持ちを言葉にした方がうまくいくみたいよ」といったら、そのお母さんはにっこり笑って「そうですよね。言葉はなんといってもタダですしね」ですって。笑っちゃいました。
そのお家の円満の秘密をかいま見た気がしました。彼女はタダだから言ってるんじゃないんだなぁ、心からの感謝の気持ちを持っているんだなぁ、とその言葉から感じました。

父親なんだから、夫だから、やってもらって当たり前、と思ってしまうこともあります。でも、お互いに気持ちよく過ごせるように、そういう小さいけれど大事なことはこころがけたいものだなぁと、改めて教えてもらいました。当たり前のように思えることでも、よく考えると当たり前でないことは多いもの。子どもを授かったこと、無事に生れてきてくれたこと、元気に生きようとしていること。本当は、自分が元気でいることも、子どもと過ごせることも、当たり前ではなく、感謝しなくてはいけないのに、何かないと意識することができないというのは、残念なことです。感謝の気持ちを忘れない、というのは幸せの一つのポイントなんでしょうね。



ワーキングマザー応援エッセイ

子育て・仕事・わたし CONTENTS

昔の常識、今の非常識?

子どもの要求とお母さんの生活

お母さんの秘けつ

力を持っているからこそ.......

「母性のかたち」

子育てはキャリア(1)

子育てはキャリア(2)

ワーキングマザーの5月病


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