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ドイツの水中出産(2)

永瀬ライマー桂子さん(2006)

私には5歳、3歳、6ヶ月の子供がいますが、3人とも水中で出産しました。水中出産といっても、まさか私が水の中に潜って出産したわけではありません。出産用に設計された大きめの浴槽に、赤ちゃんが9ヶ月間育った羊水と同じ温度のお湯を入れ、その中で赤ちゃんを産むのです。
私がドイツで体験した、産婦と赤ちゃんにやさしい水中出産を紹介します。


第1回:産婦と赤ちゃんにやさしい水中出産
第2回:陣痛がきてから/産後
第3回:退院してから/ファミリーヘルパー




陣痛がきてから

陣痛が定期的になってから病院に行くと、分娩室に通されます。陣痛中を過ごし出産をするこの部屋は、ホテルの一室のようで、陣痛の間隔や強さ、赤ちゃんの心拍を測定する機械以外の医療機器は見当たりません。第1子と第2子を産んだベンスベルクの病院では、ベッドのシーツやカーテン、部屋の壁紙、水中出産用の浴槽、医者や助産師のキッテル、タオル等全て、深いピンク色で統一してありました。子宮の中と似た深いピンク色で統一することで、赤ちゃんが生まれたときに、できるだけショックを与えないようにしているのです。真っ白な蛍光灯の光は赤ちゃんをびっくりさせるからと、出産時も部屋は薄暗くしてありました。第3子を産んだデュイスブルクの病院では、壁は幼児教育などで有名なシュタイナーのデザインになっていました。溶けるような模様で、ピンク系とオレンジ系の部屋がありました。この部屋で好きな音楽をかけたり、アロマをたいたりして、リラックスすることができます。

出産までまだまだ時間がかかりそうなときは、外を散歩したり、階段を上り下りしたりして、できるだけ運動するように言われます。私たちは、リンゴの木が続く病院の広々とした庭や、それに隣接した公園を散歩しました。第3子のときは陣痛が途中で止まってしまったので、陣痛を促進するために、助産師さんにオイルでお腹をマッサージしてもらい、足に針を打ってもらいました。とくに足の小指に脇から刺す針は、効果抜群でした。ペパーミント茶は陣痛を進める効果があるというので、私は陣痛中何杯も飲みました。

第1子出産のとき、子宮口が十分に開いて力む段階になってから、医師に「お風呂はどうですか?」といわれました。お湯に入ってみると、陣痛の痛みがスーッと軽くなりました。夫もパンツ一丁になって浴槽に入り、私を後ろから支えてくれました。
いよいよ赤ちゃんの頭が出てきた時、陣痛の合間に医師に「頭が出たよ、触ってみて」と言われました。手を伸ばすと、髪の毛がふさふさした頭と、むにゅっとした肌(おそらく、ほっぺだったのでしょう)にふれました。「次の陣痛がきたら、自分で取り上げてね」という医師の言葉に、「そんなこと、できません」と返事したとたん、次の陣痛が来て、助産師さんの言うとおりに力むと、無意識に自分で赤ちゃんの頭をしっかりつかみ、お湯から取り上げていました。
あの瞬間の幸福感は、今でも忘れられません。赤ちゃんは、チュパチュパと口をならして生まれてきました。赤ちゃんの身体が冷えないように頭だけお湯から出して、すぐにおっぱいを口に含ませました。そして、しばらくゆっくりとした時間をお湯の中で過ごしました。へその緒は、脈うつのが止まってから、夫がはさみで切りました。
生まれたばかりの赤ちゃんには、肌と肌のふれあいが大切というので、胎盤を出している間も、産後の検診をしている間も、ずっと赤ちゃんを抱っこしていました。私が抱っこできない間は、夫が上半身裸になって、赤ちゃんを抱っこしていました。赤ちゃんの身長や体重も、私が横になっているベッドから見えるところで測ってくれました。小児科医や助産師さんが、慣れない夫と一緒にあれこれしている姿が、とてもほほえましかったです。

第2子のときは、水中出産以外の方法にトライしてみたかったので、「椅子に座って出産してみたい」と助産師さんに希望しました。陣痛が強くなると、リラックスするためにお湯に入りました。すると、あれよという間に陣痛が進み、結局そのまま浴槽から出ないまま第2子も水中で出産しました。安産で、陣痛がはじまって2時間半で生まれました。第2子も第1子と同様、私が水中から取り上げました。出産時に医師は立ち会ってはいましたが、特に必要がなかったので助産師さんが主導権を握って、彼女の誘導で出産しました。第2子も生まれた直後にオギャーとは泣きませんでした。しばらくして全身をお湯から出したとき、はじめて「オギャー」。暖かいお湯から出て冷たい空気にふれたので、びっくりしたのでしょう。
第3子は、最初から「水中で」と助産師さんにお願いしました。とても上手な助産師さんで、彼女の誘導で、陣痛が本格的になってから2時間半で生まれました。今回も赤ちゃんが生まれるまで医師の出番はなく、医師が部屋に入ってきたのは、赤ちゃんが生まれたのとほぼ同時くらいでした。第3子もやはりオギャーとは泣かず、穏やかな誕生でした。

日本では生まれたばかりの赤ちゃんを産湯に入れるのが普通だと思いますが、ドイツでは「産湯はどうしますか」と聞かれました。産湯に入れると赤ちゃんの肌を守る膜が取れてしまうというので、産湯には入れないほうがよいと聞いていたので、3人とも産湯には入れませんでした。水中出産では、赤ちゃんが生まれた後も浴槽のお湯はきれいで、生まれてきた赤ちゃんにも血はついていませんでした。そのせいか、産湯に入れてきれいにする必要性を特に感じませんでした。最初にお風呂に入れたのは、どの子も生後1週間以上たってからでした。でも湿気の多い日本では、1週間もお風呂に入れないのはよくないかもしれません。


産後

ドイツでは、出産後数時間後まで母子ともに異常がなければ、そのまま帰宅することもできますが、私は念のため数日間入院しました。

私が出産した両方の病院とも、Familienzimmer(ファミリールーム)と呼ばれる部屋が準備されていました。赤ちゃんが生まれたらすぐに、家族が水いらずで過ごせるように、この部屋が準備されています。ここに父親や子供たちも一緒に泊まって、赤ちゃんと最初の時間を一緒に過ごすことができます。ただし、たくさんの出産があり病室が不足しているときには、ファミリールームは利用できません。私たちは運よく、3回ともファミリールームを利用することができました。部屋はホテルの一室のようで、窓から病院の庭の緑が見渡せました。部屋の中に、トイレとシャワーもついていて、食事をできる簡単な椅子とテーブルがありました。

いつも赤ちゃんと一緒とはいっても、赤ちゃんが泣き続けて眠れないときは、もちろん助産師さんや看護婦さんに預けることができます。オムツを取り替えるのがつらいときには、真夜中でもお願いできます。どこの新ファミリーも、夜中には母親が眠れるようにと、たいていは新米パパたちが泣く子をあやしながら廊下をうろうろ歩きまわっていて、真夜中の廊下が父親同士の情報交換の場となっていました。

参考文献
Wikipedia Wassergeburt
Dr. Gerd Eldering ?Eine M?glichkeit zur Selbstbestimmung“. In: Hebammenforum 3/2005, S.154-157.
A. Th?ni, J. Holzner ?Geb?ren im Wasser: Bericht nach 385 Wassergeburten am Krankenhaus Sterzing“. In: Speculum 18 Jahrgang, 2/2000, S.15-18.

2006年 12月 永瀬ライマー桂子


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安産と楽しいマタニティライフに役立つ101用語を解説。 監修/医学博士・産婦人科医師(故)進 純郎先生(監修当時)葛飾赤十字産院院長





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