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『マタニティ・ムーン』第一回
マタニティ・コーディネーター  きくちさかえ

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●世にもめずらしい妊婦たち!?

クラスは現在、東京新宿区にある「お産の学校ミニ博物館」をお借りして、隔週土曜日の正午から開いている。午前中には、マタニティ・ヨーガ・クラスも設けている。

クラスは合計5回のコース。内容は、

第1回/自己紹介、お産ってなんだ?、お産&出産場所の選び方、
    医師&助産婦とのつきあい方。
第2回/からだとのつきあい方、マタニティ・ヨーガ、リラックス&呼吸法。
第3回/お産のしくみ、陣痛期の過ごし方、出産姿勢。
第4回/お産ビデオ、お産の始まり方、ディスカッション。
ベビークラス/胎児の話。授乳、育児について(ゲスト講師)。

『マタニティ・クラス』が、病院などの施設で行われている出産準備クラスと大きく違う点は、それぞれ異なった施設で産む人たちが集まってくるということだろう。だからこのクラスでは、ひとりひとりに合ったお産の情報を提供することを目的としている。今まで参加した人たちの半数は、助産院や自宅で出産し、あとの半数はクリニックや病院で出産している。現在、助産院での出産は全体の0.9%ほど、自宅出産にいたっては0.1%ということを考えれば、半数が助産院、自宅出産というこのクラスの人々は、世にもめずらしい妊婦集団と言えるのかもしれない。昨年は神戸でも『マタニティ・クラス』を行ったけれど、出産施設を選ぶ割合は東京のクラスと同じだった。
クラスはまず、出産場所と出産方法の選び方のガイダンスから始まる。施設で行われる準備クラスには「どこで産もうかなあ」という人はいないので、このガイダンスは必要ないけれど、実は施設を決める前のこうしたガイダンスは求められている。保健所では、公的な立場から特定の施設を紹介することを避けているので、妊婦たちは出産施設選びを口コミかあるいはマタニティ雑誌などに頼るしかない。
出産施設を決めるガイダンスをするにあたって、私の方から「ここがいいですよ」とか「こういう産み方がいいですよ」とすすめることは決してしない。これは、欧米のバース・エデュケイターの鉄則でもある。出産方法や、場所を選ぶのは、あくまで出産する本人。クラスを担当する者は、産む人たちがほしがっている情報を提供するだけだ。
助産院や自宅で出産する人たちが人数的に多いといっても、彼女たちはクラスに参加する前から自分たちで産み方や場所を決めてくるケースがほとんど。参加者たちは、出産に対して自分なりのビジョンをもって『マタニティ・クラス』にやってくる。多くが自然なお産を望んでくる人たちなのだけれど、中には麻酔による計画分娩を望んでいる人もいれば、「私、帝王切開にしたい」という人、「里帰り先の大学病院で産みます」という人もいる。そういう人たちには、各自が選択した施設の中でベストな方法は何かをいっしょに考えていくいようにしている。
クラスに助産婦が参加することも多いのだけれど、彼女たちがまず驚くのは『マタニティ・クラス』の参加者の積極的な姿勢だ。「こんな妊婦、見たことない」というほど、きわもの(?)が多い。まあ、ある程度の金額をとるので、それだけ払って出席しようという人たちというのは、お産に対してかなり前向きな人たちであるということなのかもしれない。


●クラスの設定のし方

土曜日の午後にクラスを設定したのは、働いている妊婦が多くなったことへの配慮からだ。パートナーも土曜日のこの時間なら出てきやすい。わがクラスの人たちは、95%が夫立ち合いの出産をしているのだけれど、カップルでクラスに参加するのは40%ほどで、さらに毎回出席するパートナーは全体の20%ほどしかいない。「事前にクラスに参加しない方は立ち合いはできませんよ」というなかば強制的な参加を促していないからだと思う。もちろん仕事が忙しいこともある。この不況のおりでも、男性たちはもくもくと仕事に勤しんでおられるようだ。
時間は12時から3時まで。途中15分ほどのティータイムを入れながら、じっくり3時間かける。長いのではと思われる方もいらっしゃるかもしれないけれど、これまで時間に関しては苦情が出たことはない。講師はベビークラス以外は私ひとりで担当しているが、私ばかりがしゃべるのではなくて、毎回ひとりひとりの参加者やそのパートナーの話を聞いているし、参加者の中に助産婦がいればその人の職場での話や、妊婦へのアドバイスを聞くこともあるから、内容は毎回盛りだくさんで、終いには「時間がきたから早くやめましょう」と、バタバタと解散になることもしばしばだ。
隔週の土曜日で5回というと、始めのクラスから終了するまでに少なくても2ケ月半ほどのタイムラグがある。これは、実は意図的に設定したものだ。妊婦は月をおってからだが変化するので、できるだけ長くおつきあいすることによって、その人の変化にクラスの中で対応することができる。
多くの参加者は妊娠中期にやってくる。すでに出産場所を決めてくる人もいるけれど、半分くらいはこれからどこの施設で出産しようか思案中の人だ。そういう人たちとも、2ケ月以上あれば、彼女たちがいくつかの施設を回ったり、医療者に会ったりして出産場所を決める経過におつきあいすることができる。
これまで、15年間にクラスに参加した人は、460名ほど。15年もやっているわりには、実に数が少ない。年間だいたい4回行われるこのクラス、平均すると毎回の参加者は7組ほどになるが、私には10名くらいが一番やりやすい。
クラスの期間中、私は参加者と5回お会いすることになるのだが、あまり人数が多いと、その間に名前やその人のもっている背景や考え方、からだのリスクなど、覚えることができなくなってしまう。私にとってクラスはもちろん仕事ではあるのだけれど、その人との出会いを大切にして、先輩か近所のおネエさんにでもなったつもりでアドバイスできればベストだと考えている。
10組集まると、クラスの雰囲気もいい感じに盛り上がるし、なにしろいろいろな妊婦の体験が互いに聞ける。クラスというのは、半分は参加者同士の情報交換の場だと私は思っている。それぞれ異なる医療施設に通っている参加者たちは、ほかの施設がどんな対応をするのか、あるいは健診料がいくらかなのか、聞いてビックリなんていうこともあるし、人によってからだの調子もいろいろなので、こうした情報がことのほか勉強になる。クラスが終わったあと、アンケートをとっているが「ほかの人たちの話が聞けておもしろかった」という意見はとても多い。


●クラスは楽しいのが一番

クラスの以外でのサービスもいくつか行っている。ひとつは電話での相談だ。マタニティ・クラスの参加者には、電話でいつでも対応できるようにしている。
電話でよくある相談は、「このあいだまで元気だったのにからだの調子がくずれた」「健診に行ったら、こんなこと言われましたけど、どうなんでしょう」というもの。やはり妊娠中は不安定なので、ちょっとしたことでも心配になる。電話で問題を解決することはできないとしても、彼女たちの思いを聞くことだけでも、気持ちを落ち着けることはできるんじゃないかと、アドバイスはほんのちょっとにして、話をよく聞くようにしている。話を聞いた上で「で、あなたはどうしたいと思っているのですか?」と投げかけて、本人自身から答えを引き出す。いわゆるカウンセリングだ。もちろん私ではわからない医学的なことは、医療者に相談してみたほうがいいでしょうと伝える。むしろそのほうが多いのだけれど、そうした場合には、どの医療者に聞くといいいのか、どのような聞き方がその場合に適しているか、というようなアドバイスをする。
tea time もうひとつ、本の貸出もおこなっている。クラスの中で話し足りないことや、もっと詳しく知りたい人のために、私の蔵書をみなさんに貸し出している。お産関係の本が中心なのだけれど、中には食事の本や育児の本、パパの読める育児マンガや小説もとりそろえている。
そのほか、マタニティ・クラスサービス部門としてはティータイムのお茶とお茶菓子にも力を入れている。お茶はフォーションなどの有名ブランドをできるだけ買うようにして、それにカモミールなどのハーブティーをブレンドする。高いアールグレイなども人気。お茶がおいしいと、みんながうれしいものだ。
お菓子は、自然食品店で売っている甘さ控えめのマドレーヌやクッキーを買う。究めつけは手作りのケーキ。最後のクラスに私がオーブンで焼いたケーキを出すようにしている。バナナブレッドやアップルパイを「私がつくったのよ」と、おおげさに講釈をたれながらみんなで食べる。「甘さを抑えた食事メニューを考えましょう」と、食事のアドバイスもいっしょにできるので、これはとても評判がいい。

クラスというと、かた苦しいイメージがあるけれど、楽しくなければ通ってこようとする意欲も半減してしまう。あの手この手で、いろいろ引きつけることは大切だ。それを工夫することも、私の楽しみになるから、やるほうも参加する人たちも楽しいクラスが一番です。

*この原稿は、メディカ出版「ペリネイタルケア」4月号(1999)に掲載されたものです。

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