まよなかのだいどころ
モーリス・センダック/作 じんぐうてるお/訳 冨山房 ¥1,512-
夜、眠ってる間にサンタクロースがやってくるっていうのなら、家の中で何が起こってたって、不思議じゃない。
ミッキーは、夜中に聞こえる音がさわがしくて、「しずかにしろ!」とどなったら、ふわっとベッドからおっこちて、下の部屋を通りぬけ、はだかんぼになってついたのが、あかるいまよなかのだいどころ。
そこでは3人のパンやさんがパンを作っていた。もちろんミッキーも、パンのねりこの飛行機に乗って、ゆかいな台所の町で大活躍。
「しあげはミルク! しあげはミルク! さあできました!」ミッキーは大満足で、ベッドへふわり。ぬくぬくと眠りにつくんだ。「これですっかりわかったよ。ぼくらが まいあさかかさずに ケーキを たべられるわけが。」・・・・問題は、最後のこの文だ。
お休み前に読んでいたとき、息子が真面目くさってこう言うんだ。「おかあちゃん、明日の朝、台所にケーキあるのかなあ?」
我が家の朝は和食党。そんな期待は困るなあ。そこで私は息子に、アメリカと日本の食文化の違いを論じたのだ。「ね、わかった? だからうちは、朝起きるとごはんと味噌汁があんの。ケーキはない。ね。」なるほど。日本の現実はごはんなのだなあ、と、息子は納得して眠りについたわけ。
ところが次の朝。
テーブルの上に見覚えのない白い箱。中を見ると、車の形をしたケーキではないか。大騒ぎしていると、夫が
「あ、それ職場のMさんがくれたんだ。もらいものだけど、どうぞって」
朝ごはんの後、早めのおやつ・・・と、ケーキを食べながら、「おかあちゃん、ここは、アメリカ?」
更に息子は考え深気にため息ついて、「このケーキ、Mさんがつくったんだね。ここでね」
「やっぱり、そう思う?」
「うん」
そしてパラパラと絵本をめくり、24ページのまんなかのおじさんを指さして、「ほら、Mさんがいるよ」
見れば、なんとなく似てる雰囲気・・・。
願いかなった息子よ。夢想にふけるのもいいが、口を閉じないとケーキが落ちるぞ。
(文;森 ひろえ)