ロッタちゃんとじてんしゃ
リンドグレーン/作 ヴィークランド/絵 やまむろしずか/訳 偕成社 ¥1,728-
子どもの頃、私は一度だけ、空を飛んだことがある。
乗っていた自転車が勢い付いて、道ばたの垣根に引っかかり、
私はハンドルの上を飛びこえて、空中で一瞬、止まった・・・。
私を助けてくれたのは、ドスンと落ちた下の畑のおばさんだった。
「おやおや、どこか痛いのかい?」
驚いた。ほとんど、ロッタと同じじゃないか。
5歳の誕生日にもらったプレゼントの中に、
ロッタが欲しかった自転車はなかった。
お兄ちゃんもお姉ちゃんも、素敵な自転車を
仲良く乗り回してるって言うのに・・・!!!
「まだしばらくは、三輪車でがまんするんだね」とパパ。
ロッタは、三輪車をけとばして、
「おまえなんかにゃ、ぜったい のってやらないから。」
隣のベルイおばさんが昼寝したすきに、
物置きから大きな自転車をひっぱりだすロッタ。
そして、自転車は坂道を風をきって走り、
ベルイおばさんの垣根に・・・ドーン!!!
ロッタは、もう涙、涙。なんてひどい誕生日なの!?
泣いてもいい。悪い言葉使ったっていい。
ロッタはいつでも、正直な自分の心の中をさらけだす。
だからロッタのまわりは事件ばかり。ママだっておかんむり。
でも、そのほうが見ている大人が安心したりする。
感情むきだしのロッタに、読み手の子どもは、深く共感したりする。
そして、ロッタの心が、悲しみと怒りで一杯になった時・・・・
パパがむこうから、赤い小さな中古の自転車を引っぱって来るのが見えたんだ。
(文;森 ひろえ)