よあけ
ユリー・シゥルヴィッツ作 瀬田貞二訳 福音館書店 ¥1,296-
むかし、何かで落ち込む私を励まそうとした友達は、せっせとカラオケや居酒屋に連れ出したり、旅行に引っ張り出したりしたものだ。
一人でいたり、みんなといたり、そうして、だんだん元気になってきた。
何だか一人ではいられなかったのに、そのくせ一人でいたかった。元気になる薬は、一人で過ごす時間の中にも必ずあると思うんだ。
おともなく、
しずまりかえって、
さむく しめっている。
つきがいわにてり、
ときに このはをきらめかす。
やまが くろぐろと しずもる。
うごくものがない。
あ、そよかぜ・・・
さざなみがたつ
部屋の中で、よろよろの姿で、赤ん坊を抱きかかえていた私。何度、この言葉に、体を静かに包みこんでくれるような色彩に、こっちをむいて笑いかけてくるおじいさんの表情になぐさめられたことだろう。
「子育ては、ひとりではできない。どんどん外へ飛び出そう!」なんて言葉が鬱陶しく感じる時は、こう思うのもいい。「今は洞穴の中で、子どもとじゃれてるキタキツネ。私も時期が来たら、外へ出ようっと。」だって、「よあけ」は必ずやってくるからね。そしたら、ボートをこぎだして、こんなステキな朝の光を、いっぱいに浴びよう。
(文;森 ひろえ)