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Working Motherとして、そして産婦人科医療の現場から

 大学病院産婦人科に勤務する医師です。同業の夫とともに核家族で5歳と2歳の男児の育児もしています。産婦人科の勤務は他科と比べ当直勤務が多く、厳しいものです。毎年8000人の新しい医師が誕生していますが、少子化の影響で産婦人科医師はむしろ減っています。8000人のうち産婦人科に入局する医師はたった300人足らずです。産婦人科が若い医師にとって魅力がないのはいろいろな原因があると思います。大きな原因は多忙で自分の生活が楽しめないことでしょう。新人が入らないことでますます職務はきつくなり、卒業して10年以上たってもまだ雑用がいっぱいです。産婦人科医が減るなかで女性医師はむしろ増えています。しかし出産、育児などの負担が女性に偏っている現在、仕事を続けるのは大変です。小さい子供がいる間はパートや休職をしている人もいます。私も一時は臨床を離れており下の子が1歳になって復帰しました。仕事についているからには自分だけ当直を免除してもらったり、仕事を減らしてもらうわけにはいきません。同僚と同じだけ当直もしています。夫と私がどちらかがいない夜は月の半分以上にのぼり、子供も今日は誰が当直、ときくくらいでかわいそうに思うときもあります。それでも仕事を続けているのはこの仕事がやりがいがあり、好きであるからです。また、育児中だからとやめてしまっては、父親も母親も同等に仕事も家事も育児もやるという姿を子供たちにみせることができなくなります。そうはいっても毎日の生活はまさにつなわたりのようで、保育園への送迎ができなくなったらどうしようとひやひやすることも少なくありません。子供が学校に入ったら早く帰ってくるし、勉強や非行も心配になってくるし、と将来への不安もあります。

 産婦人科に対して、患者、妊婦の立場からの意見も興味ありますが、産婦人科医療を支える人々の現状についてぜひいろいろな立場のかたからのご意見をおききしたいと思います。産婦人科医師は朝家を出てから、一日勤務し、そのまま当直をし、翌日は通常通り勤務をし、夕方あるいは夜遅くまで病院内に拘束され長時間勤務をしている、この異常な現状をぜひ多くの人に知ってもらいたい。当直で一睡もできない夜であっても、翌朝から外来、手術、分娩取扱いをしているのです。どんな人間でも判断力、集中力はそんなに長時間続きません。とうぜん事故やちょっとしたミスは多発します。産婦人科に他科より医療訴訟か多いも不思議ではありません。当直は少ない常勤医師だけでは足りず、経験の少ない研修医や、よその病院に勤務していて当直だけにやってくる、その病院をよく知らない医師によってまかなわれていることが少なくありません。自分のお産のときにどんな医師にあたるか、それは運しだいです。こんな現状を変えていく必要はありますが、産婦人科医師の団体、学会ではまだまだ取り組む姿勢も見せていません。私は学会でこうしたことを訴えましたが、反応はいまひとつで、自分たちの生活も、患者や妊婦の安全性も、何も考えていない人が多いのにがっかりしています。しかしなんとかして産婦人科医療が安心して供給されるようにする責任があります。24時間安心して緊急事態にも対応できるようにする必要があります。母体死亡もまだイギリスなどより多く、救命できるはずの命が失われています。医師がゆとりをもって診療にあたれるようになれば、ミスも減るだけでなく患者や妊婦に納得いくように時間をかけて説明したり、優しさをもって接することがもっとできるようになるはずです。日勤は夕方5時には当直と交代する、当直は夕方出勤して翌朝は日勤と交代して帰宅する、そういう働き方を私は推進していきたいと思います。

(木戸さんより/1998/9)


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