
電磁波の健康への影響6
子どもたちの未来のために
半年に渡って特集として取り上げた「電磁波問題」も今回が第6回となりました。そこで、電磁波問題に取り組み、ここまでいろいろな現状を教えてくれた市民科学研究室の上田さんといっしょに、子ども達を産み育てる私たちがどう電磁波リスクと向き合い、子どもたちが生きる未来に何ができるのかを話し合いました。
そこからは、いままでの生活をどう変えて、子ども達とどう生きてゆくのかのヒントが見えてきました。
babycom&NPO市民科学研究室 電磁波プロジェクト 2004年2月掲載 2005年9月追記
・「不確実な危険だから大丈夫」とは言えない!子ども達のために今すぐに予防的生活を始めよう
・たくさん使って、たくさん食べて......そんな社会が長くはもたないことは誰もが感じているはず
・「便利が豊か」という思い込みはもう捨てて、安全と健康という本当の豊かさを見つめ直すこと
・【電磁波の被害がはっきりしないそのワケは?】
「不確実な危険だから大丈夫」とは言えない!
子ども達のために今すぐに予防的生活を始めよう
・・・この特集を通して、電磁波問題というのが私達の想像以上に深刻だったことが本当によくわかりました。
家庭でも外でも、子ども達のすぐそばには電気を過剰に使う環境がすでに出来上がっています。そのなかで、子どもの心と身体を守ってあげることがいかに難しいことか!中でも母親のおなかの中にいるときから、赤ちゃんはすでに電磁波に被曝しているというのは本当に衝撃的でした。
健康な子どもを産み、育てたいという当たり前な願いさえ難しくなっているとしたら、私たちはこれからもっと真剣にこの 問題に向き合わなければいけませんね。
「そうですね。今までお話してきたとおり、電磁波のことはまだまだわからない部分はたくさんあります。本当に危ないのか?健康への影響があるならどの時期にどう出るのか?個人で対策をとっても防げないことが多いならばどうしてゆけばいいのか?不確実なことはまだ山積みです。でも、個人がかかえるリスクがはっきりとわからないからこそ今できることはやっておく、という考えは持つべきであることがいままでのお話でわかってもらえたと思います。」
「そう、予防医学という言葉も最近定着してきましたが、何ごとも予防するほうが効率がよいのは確か。できる限りリスクを小さくするように、予め打てる手は打っておく。これは子どもを持つ親に限らず、環境リスクにさらされている人なら誰もが生活の基本にしてほしい考え方です。『予防原則』と言うのはこれから政府がとってゆくべき政策の指針ですが、日本はまだその考えが定着していませんよね。
「身体ができあがった成人の大人より、まだ未成熟で影響を受けやすい子ども達を守る必要性のほうが高いという考えからですね。前にも話に出ましたが、そもそもリスクを回避する基準というものは"最も弱いもの"を優先に考えてあげるべき。
「妊婦さんたちはそのことをしっかりと頭に入れて、環境リスクからおなかの中の赤ちゃんを守ってあげて欲しい。そして出産に関わる医師たちも、妊婦さんたちにあたりまえに環境リスクに対する予防のことを指導してあげなければいけないと思います。」
「世界的な動きとしては、例えばアメリカでは『子供環境健康ネットワーク』というのがあり、次の世代が健康に育成してゆく社会のために活動している学際的な全米プロジェクトがあります(http://www.cehn.org/)。
「最近、千葉大学の森千里氏ら環境医学の専門家たちが『次世代環境健康学』の創設を提唱しています(http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/bioenvmed/cehsfg/)。
それはルールを作る前に、携帯電話を使うのがあたりまえという社会が先にできあがってしまったがゆえの衝突でしょう。携帯がないと仕事や人間関係に差しつかえが出たり……というわけでアンテナがたくさん必要になってどんどん作られた。こうなってしまうと、後から規制をつくって一律にそれを守りなさい、ということが難しくなってきます。たくさん使って、たくさん食べて......
そんな社会が長くはもたないことは誰もが感じているはず
「不妊というのはプライバシーに関わることから、なかなか表に出づらい問題ですが、子宮内膜症の増加や精子数の減少を指摘する報告が出てきていることは事実です。妊娠したら周囲に理解を求めて
・・・一度使うと手放せない...。それは子供達にもとてもあてはまることですよね。子どもに 一旦与えたものを取り上げるのは大変ですから。
「「そのとおりです。子どもの時期に携帯電話やテレビゲームを与えてしまうと、それが手放せなくなる。長時間テレビをだらだらと見たり、いつまでも蛍光灯をこうこうとつけて夜更かしをする生活習慣も、一度定着すると直すのは大変でしょう。だから親がコントロールする必要があるんです。これは子どもに対する携帯だけではなく、すべてのことにあてはまります。
「「別に不便な時代に戻れというわけではないですよ。例えば1980年代初頭とくらべる と、今の電気の消費量は3〜4割増しくらいになっています。
「それはあるでしょうね(笑)。それに私たちは親の世代とくらべると、自分の手で何かを創るという生きる力が低下していると思います。「便利が豊か」という思い込みはもう捨てて、
安全と健康という本当の豊かさを見つめ直すこと
「この過剰消費社会が長く続かない、変えてゆかなくてはいけないというのは誰もが感じているはずです。【電磁波の被害がはっきりしないそのワケは?】
電磁波が何にどう作用して危ないのか?どれくらいのリスクがあるのか?●電磁波の研究の難しさはココにある
電磁波の健康被害に関する研究は、大きくわけて3つの方法で行われています。 ひとつは『細胞レベルでの実験研究』。細胞に電磁波を当てて、遺伝子やホルモン等の変化をみるものです。電磁波が細胞に対してどう作用するのかのメカニズムを探ることが目的です。しかし、実際の人体内の細胞は他の多くの因子がからみ合うためにこうした実験で使われる細胞とは環境が大いに異なります。そのため、実験結果が実際の人体の「健康」と直接結びつくとは言い切れません。もうひとつの『動物実験』も、動物で得られた結果をそのまま人にあてはめることには限界があるといえます。そのため、細胞や動物の器官に対して電磁波が何かしら影響があることが実験で現れても、イコール生きている人体にも同じ変化があらわれる、と断定ができないのです。 ●リスクと対処をどう考える?
環境リスクについてあえて2つに類別してみると、ひとつは“生じる確率が低くても予想しえる被害が大きいリスク”で、これはたとえば一旦起きれば被害が甚大となる原子力発電所の事故などのケースを含みます。もうひとつは"予想しえる被害が小さくても広範囲の人にかかわるリスク”。電磁波はこちらにあてはまります。普通の環境で電磁波を浴びたとしてもすぐに健康被害を被るわけではなく、個人としてはリスクは比較的小さいものと考えられます。しかし、今の日本の社会のなかで電磁波を浴びていない人はほとんどいないとも言えます。そのため、もし被害が現れはじめたらそれは非常に広範囲なものとなると考えられるのです。
三つ目に『疫学研究』があります。これは発病のメカニズムはわかりませんが、 病気との因果関係を推定することができます。しかし、やはり電磁波以外の因子(化学物質や生活習慣など)は人それぞれ違うものが関わってくるために推定でしかなく、断定することは難しいといえます。
そして電磁波の研究や実験をもっと断定できないものにさせているのが電磁波の "不確実な性格"です。例えば、町中にも家にも電磁波は常に溢れているため、人や環境によって一日の電磁波の被曝量を正確に計ることはとても難しいといえます。そして、被曝している条件が非常に似ていても「発症」の現れかたや程度は明確に一致するとは限りません。また、同じ理由からある研究者が行った実験を、他の研究者が同じ方法で行っても同じデータ出ないこともあったりするようです。
このように目に見えず、正確に被曝量を測れない電磁波については正確に実験、研究することはとても難しいのが現状なのです。
それだけ広範囲な人々が浴びているということは、それだけ電気というものに非常なメリットがあり、なくてはならないものであるということ。そのため、電気の使用そのものを否定することは不可能でしょう。そのメリットを計りにかけながらどの程度使用を制限してゆくか?予防原則の考えと照らし合わせながら考えてゆくことが大切になります。
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