電磁波の健康への影響
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電磁波の健康への影響

専門家インタビュー3

電磁波の精神への悪影について

電磁波の精神への悪影響について、栗原 雅直先生(財務省チーフカウンセラー)にインタビューしました。

インタビュアー:上田昌文 NPO「市民科学研究室」代表。


インタビュー2003年7月 掲載 2003年10月(専門家の肩書きは取材当時)

電磁波による健康への悪影響について考え始めたきっかけは?

電磁波は精神にどんな悪影響を与えるのか?

超低周波磁界の被曝と小児白血病が生じるメカニズムは?

子ども達に対する影響はどのように考えているか?


栗原 雅直 先生 プロフィール
精神科医。東京大学医学部医学科卒業、東大病院精神神経科入局。虎の門病院精神科部長、大蔵省診療所所長を経て現職。かつては川端康成の主治医も勤めた。主な著書に『大丈夫か日本人』(風濤社)、『壁のない病室』 (中央公論社)。





精神科医である先生が、電磁波による健康への悪影響について考え始めたきっかけは何ですか?

私自身が、電磁波を浴びたことで大変な不調を実体験したことからです。
そもそものきっかけは、私が60才で定年を迎えた時、子ども達がお祝にインバーター付きの蛍光灯ランプをプレゼントしてくれたことでした。ベッドの横にそれをおいて、就寝前の読書を楽しむようになったんです。でも、そのころからいろいろな身体の不調が現れはじめました。
まず、夜中にトイレに起きることが2度、3度と頻繁になり、ひどいときには失禁 することも。同時に軽い射精障害にもなったんです。これはまさか前立腺肥大なのではないかと疑いも持ちました。泌尿器科医に診 てもらったところ、前立腺肥大ではないが、これと同じ老化現象と診断されました。
同時に睡眠障害気味にもなりましたね。熟睡できないし、隣に寝ている妻が逃げる程歯ぎしりがひどくなりました。
ある夜、ふと蛍光灯ランプを眺めてみたら、スイッチが切ってあるのにぼんやり光っている。こういった家電はスイッチを切っても少しだけ電気が通っているんですね。私の頭は一晩中、電磁波を浴び続けていたことになります。ちょうどそのころ、電磁波による健康障害の本を読んでいたものだから、不調の原因はこれかもしれないと直感し、白熱灯に変えてみました。そうしたら障害はあらかたなくなりました。
それから、自分自身でも気をつけることはもちろん、患者を診察するうえでも電磁波への悪影響を考えるようになりました。長時間コンピューター作業を続けた後、動機、不安発作、心拍の乱れを訴えた患者を何人か診察しています。また、高圧線の下でパニック障害が起こったことを電磁波の影響と判断したこともあります。




先生は特に電磁波に対して過敏だったからそういった症状を起こしたと考えられますか?

いや、私がとくに電磁波に過敏であるということではなくて、私は何かに対する身体の反応が正確に起こる人間だと思っています。しかし水俣病にかかるのは、水銀に対して過敏な人で起こると言うべきでないことと同じで、電磁波で症状が起こるのは特別に過敏な人の場合だから起こるのではありません。
電磁波の影響の大小をいうなら、浴びる時間帯の違いが考えられます。つまり、生物には電磁波の影響を受けやすい時間帯があるということ。

電磁波の有害性は、簡単にいうと遺伝子のDNAの配列を乱すことにある。でも、この乱れは寝ている時に脳の松果体から出される「メラトニン」の働きによって成長ホルモンが分泌され、ある程度は修復されると仮説的に考えられます。こうしてガンや老化現象を防いでいるのです。しかし、就寝時に電磁波を浴びると、この脳の働きが乱されて、DNAの修復もなされなくなる。つまり、就寝中の電磁波の被曝は昼間よりも危険と言えます。しかも私は一晩中という長時間の間浴び続けていた。そのため、障害がはっきりと現れたと考えられます。




化学物質と電磁波の複合的影響を調べる研究はどのくらい行われているのですか?

まだ客観性のある機関で行われている研究は少ない段階です。

国立環境研究所では電磁波による影響を統計的に調べる疫学研究で、送電線の下に住む人たちの白血病の発症率を調べ、発症率の上昇を示す結果を出してはいますが、それを実験的に動物を用いて再現するデータを出すにはまだいたっていません。
四六時中、電磁波に被曝している日常生活を実験室で同程度再現するのは難しいのです。

現在、私たちの実験室では100ガウスという磁場で実験を行っています。高圧送電線の真下が約15ミリガウスですから、100ガウスという電磁波は私達が日常的に浴びることの多い低周波よりも強いものといえます。ただし、家電製品の中には100ガウス位の磁場を発生するものはあります。
恒常的に浴びる低周波の強度を実験室で再現することも、今後の実験の課題のひとつと考えています。
また、お酒やたばこの摂取等のライフスタイルの要因もからんでくるため、因果関係がつかみにくいことも実験を難しくしています。
しかし、疫学研究で出されたデータを裏付けるための実験は、必要であると考えています。




先生が主治医をされていた川端康成氏の自殺は、電磁波によるものと考えられているそうですが、電磁波は精神にどんな悪影響を与えるのですか?

彼はもともと食が細く、睡眠も不規則でした。そのうえ、冷え性ということから電気毛布を愛用していました。電磁波の影響は距離が近いほど大きくなることはもう御存じですよね。しかも先にいったとおり、夜間の電磁波の照射は睡眠リズムを狂わせます。彼は限り無くゼロに近い距離から、しかも影響を受けやすい睡眠中に長時間、電磁波を浴び続けたんです。それによって松果体から分泌される睡眠をコントロールするホルモン、メラトニンの分泌がおさえられ、不眠症を悪化させ、うつ病を起こしたのではないかと考えられます。
また、メカニズムはわかりませんが、電磁波はほかの精神障害を起こしていることも考えられます。なんとなく頭がぼんやりしたり、記憶力が低下したり、突然不安抑うつが起こったりします。ワシントン大学の実験では、低レベルのマイクロ波を1時間ラットに被曝させると長期の(遠い)記憶が損なわれ、方向感覚が低下するといった結果も出ています。実際、携帯電話を使っているときの交通事故は多い。これは、注意力が散漫になるということだけではなく、強い電磁波を出す携帯電話を耳に直接あてていることで、脳になんらかの影響を与えているからとも考えられます。




子ども達に対する影響はどのように考えていらっしゃいますか?

携帯電話の例で言えば、特に子どもには悪影響が大きく現れることが考えられます。 子供は神経細胞が若く、不完全です。パソコンやテレビゲームでも言えることでが、夢中になって長時間使用することになりやすいのでより心配です。これはパソコンやテレビゲームでも言えることです。先にも話しましたが、電磁波によって破損をうけたDNAを回復させるべく、回復期である睡眠をよくとり、イギリスなどでそうであるように、あまり長く携帯電話やテレビゲームをさせないように注意をすることが、親にとって大切な仕事のひとつと言えるでしょう。


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