環境危機で変る子どもの生活
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環境危機で変わる子どもの生活

温暖化時代を生きる子どもたちのために、あなたはどんな未来を選びますか?

取材協力/高木宏明(全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)事務局長)

2008年2月掲載(専門家のプロフィールは掲載当時)



PART 2 未来は自分で選ぶことができる

 自分の子どもが親になるころ、地球はどのようになっているのだろう--。子を持つ親ならば、誰もが一度は考えることではないでしょうか。地球温暖化によって未来がどうなるのか、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の「排出シナリオによる特別報告(SRES)」では、4つの異なる社会の発展方向を想定しています。シナリオは大きく、経済を優先にする志向「A」、環境を優先する志向「B」の軸と、地球主義志向「1」、地域主義志向「2」の軸に分かれます。


 「A1:高度成長社会シナリオ」においては、経済のグローバル化と技術革新が進み、エネルギーを高効率に使うことができるようになります。世界のGDPが上がり、日本では資本や人口が都市部に集中し、活発な消費活動が行われます。

 「A2:多元化社会シナリオ」では、地域の独自性が保たれる反面、国際的な貿易などはブロックされて地域主義に傾きます。そのため、経済成長は緩慢で、環境への関心も低くなります。世界の人口は増加を続け、2100年には150億人を突破します。

 「B1:持続発展型社会シナリオ」では、物質志向から情報やサービス産業にシフトし、経済成長を維持しながら脱マテリアル化が進みます。人口も「A1」同様21世紀半ばから減少傾向にシフトし、2100年には71億人に。クリーンで省資源の技術が導入され、環境に配慮したライフスタイルに変化します。

 「B2:地域共存型社会シナリオ」は、地球規模よりもローカルな視点を重視し、地域内でサスティナブルな社会の実現を目指します。日本では、ワークシェアリングによって女性や高齢者の社会進出が進み、大都市一極集中型よりもコンパクトな都市が地方に点在するようになります。

 このうち、最も温暖化が進むのが「A2:多元化社会シナリオ」で、逆に温暖化を抑えることができるのが「B1:持続発展型社会シナリオ」。IPCCによると、2100年までに最大で6.4℃気温が上昇するリスクが指摘されていますが、シナリオによっては、気温の上昇を最小限に抑えることができるのです(詳しくは第1回:地球温暖化はどこまで進む? 生活はどう変わる?を参照)。


 「この4つのシナリオはあくまでも将来の予測であって、必ずこのようになる、というものではありません。見方を変えれば、わたしたちの行動次第で未来は変えられる、ということを示しているとも言えるのです」と、高木さんはいいます。

 例えば、今までならちょっと用事がある時に車で行って済ませていたものを、車を使わずに歩いていく。そうすると、健康増進につながる。みんなが元気になれば医療費が減り、社会費用の負担が少なくなる。歩道が整備され、商店街が賑やかになるかもしれない。人と人が顔を合わせ、挨拶を交わすような社会になる。子どもたちは外で安心して遊ぶことができ、家に閉じこもってゲームをするよりも、家庭で使うエネルギーの量が減る……。
 「食べる」ことで考えれば、輸入食品の輸送にかかるエネルギーやハウス栽培で使う光熱費などを考えると、地場産の旬の野菜や果物を食べるほうが環境負荷も少なく、何よりも新鮮で美味しい。しかも、地域の農業の活性化にもつながる……。つまり、「歩く」「食べる」という行動一つをとっても、よりよい循環を創り出すことができるというわけです。

 高木さんは、「これからは、“ないものねだりより、あるものさがし”で温暖化対策を進めていく時代です」といいます。雪国ならば雪冷熱を使った冷房を、風の強い地域であれば風力発電ができます。「地域の特色を見つけて、それに適した温暖化対策を行えば、地域が活性化して、より暮らしやすい社会が実現できるのではないでしょうか」(高木さん)

 高木さんの言うように、わたしたちができる温暖化対策とは、日々の小さな気づきと実践を積み重ねていくことにほかなりません。買い物袋を持参する、電気をこまめに消すなどの小さな一歩も、それを楽しみながら続けていけば、大きな成果につながります。

 「モノに依存しなくても、生活を楽しむことはできます。豊かな社会をつくるための第一歩を踏み出せば、きっと、未来は変えられるはずです
(取材協力/高木宏明)

「電磁波の健康への影響/地球温暖化について」アンケート結果報告書

全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)

高木さんが事務局長を務めるJCCCAのページ。地球温暖化の基礎知識や用語集、国や地域の取り組み、世界の動向などが簡潔に記されている。また、温暖化写真館やすぐ使える図表、環境教育に利用できるプログラムなどのダウンロードも可能。

財団法人省エネルギーセンター

工場、交通、省エネ機器などのほか、わたしたちの暮らしに密接する「生活の省エネ」についてのデータ、情報が満載。「生活の省エネ」ページでは、「家庭の省エネ大事典2008年版」をダウンロードできる。

環境省「環境教育・環境保全活動のページ」

環境教育や環境保全活動に関するリンクが充実している。環境教育や環境学習に関するデータベースや、環境教育に役立つパンフレットなどをダウンロードすることができる。


CONTENTS 関連情報

実践!エコライフ
babycom的エコライフの提案5

できることから始めよう!JCCCAに学ぶ、温暖化対策10のアイデア


環境と健康に関する科学報告書を読み解く

第5回:「子どもの環境保健研究の10年:環境保護庁科学プログラムの成果の要点(米国)」を読む〜子どもの脆弱性をふまえての取り組みの行方


環境危機で変る子どもの生活

環境危機で変わる子どもの生活
インデックス

1.地球温暖化はどこまで進む?
  生活はどう変わる?

2.光化学スモッグから子どもを守ろう!

3.温暖化時代の地球にやさしい食育

4.感染症から子どもを守るために

5.温暖化時代を生きる子どもたちのために



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子育てと環境問題子どもの発達と脳の不思議

子どもの発達の基礎知識とともに、最新の脳科学や発達科学の研究成果なども紹介し、環境や発達の視点から、健やかな脳に育てるために親が知っておきたいこと、親ができることを考える。




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