だってだってのおばあさん
さのようこ/作・絵 フレーベル館 ¥1,296-
“階段を上ると息切れがするの。もう歳だからねえ。”
“妙に忘れっぽいのよ。やっぱり歳かしら。”
子どもの時は子どもらしく、若者は若者らしく、
歳をとれば、それらしくみんな生きてるように見えるけど。
小さな家で5歳の猫と暮らしているおばあさんの、今日は99歳の誕生日。
でも買い物に行った猫が、川にろうそくを落としてしまい、
ケーキに立てられたのは、たった5本のろうそく・・・。
「5さいの おたんじょうび おめでとう! おばあちゃん ほんとに5さい?」
「そうよ、だってちゃんとろうそくが 5ほんあるもの」
「ぼくとおんなじ!」
それまで“98歳のおばあさんらしく”暮らしていたおばあさんは、
次の日、猫と一緒に魚釣りに出かけ、
川だって、ぴょーんと飛びこしちゃうんだ。
「5さいって なんだか とりみたい」
「ああー! お母さん! 凧が、凧がー!!」
いたずらな風で引っ掛かった凧を取りに、高い木に登った時、
私はすっかりはしゃいでしまってた。
いつもと違う風景と、心配そうに見上げる息子を見つめ、
いつまでも降りたくないと思いながら、
私は、私の5歳の時間を取り戻したような気がした。
子どもと遊ぶ時は、せめて子どもと同じ歳になって思いっきり遊びたい。
20歳の頃の友達と語り合えば、いつでもその頃に戻れるように、
母として生きている今の自分の中にも、
たくさんの“私”が生きている。
(文;森 ひろえ)