どろんここぶた
アーノルド・ローベル/作 岸田衿子/訳 文化出版局 ¥1,026-
こぶたは、やわらかーいどろんこの中に、
“ずずずーっ”としずんでいくのが大好き。
それなのにおばさんは、
どろんこを掃除機で吸い取ってしまった。
もちろん こぶたはプンプン!
こんなうち、ぴかぴかすぎて、つまらないや」
新しいどろんこ求めて旅に出るんだけど・・・。
親戚の子どもが6歳位の時、庭に小さな穴を掘り、水を入れてオタマジャクシを放したんだ。
そのまま遊びに行ってる間に、水はすっかりなくなってしまい、気付いたおばあちゃんが、「あれえ、こんなとこに穴掘って、危ないねえ」と、さっさと埋めてしまった。
帰った子どもは、「ばあちゃんの人殺しー!!」と泣いて家を飛び出し、家中大騒ぎになったんだって。
子どもは大切なものの居場所を、あっという間に作ってしまう。庭に掘った小さな穴や、こっそり見つけた小さな隙間。それは子どもの心がつくりあげた、大切な空間なんだよね。
こぶたを探しに車を飛ばしてたおじさんとおばさんは、
とうとう旅の終わりのこぶたに再会。
どろんこだと思って、セメントづけになっちゃったこぶたは、
町中の注目の的。
道路をこわす道具を持ってきた消防士たちに、
おばさんが言うんだ。
「きをつけてやってちょうだい。
せかいいちだいじなこぶたなんだから」
愛を感じたこぶたは、その胸に飛び込んで、なつかしいお家へ。
そして心休まるあのどろんこの中に、“ずずずーっ”
それはそれは、幸せこの上なしって顔で‥‥。
(文;森 ひろえ)