どろんこハリー
ジーン・ジオン/文 マーガレット・ブロイ・グレアム/絵 わたなべしげお/訳 福音館書店 ¥1,296-
ある友人からの手紙に、忘れられない文がある。
「とうとうゲームボーイが我が家にもやってきました。クラスの中で持ってない子はうちの息子だけになり、
友達にも色々言われていたらしいです。でも本当は、息子はどろんこになって遊びたいのかもしれない。一緒に遊ぶ友達がいないだけかも‥‥」。
犬のハリーは水たまりにジャバジャバ入り、友だちとおにごっこ。蒸気機関車の煙をあびて、仕上げは石炭トラックのすべりだい。後先考えないハリーの遊びの中に、私はホントの子ども精神を見てしまう。子どもはどろんこになっていくハリーを、うっ‥‥とりとながめる。
“黒いぶちの白”が?白いぶちの黒”になったハリーは、なかなか家族にハリーだとわかってもらえない。
ついに大嫌いだったお風呂に飛び込んで‥‥!
息子が4歳になろうとしてる時、水たまりの前で私を振り返り、「入ってもいい?」と聞いてきた。驚いた。
今までは許可を求めたことなどなかったのに。その少し前、私が長い風邪をひいていた時、どろんこの洗濯が面倒だなあ‥‥って少し思ったことがある。子どもは大人がそう思うだけでその情報をキャッチし、ハチャメチャ遊びができなくなることもあるのかなあ。
庭に息子の友達が集まり、どろ人間がひとり、ふたりと増え、窓からそのにぎやかな様子を覗き見るたびに、
私は絵本の中で輝いてた、どろんこハリーの表情を思い出すんだ。
(文;森 ひろえ)