ガンピーさんのふなあそび
ジョン・バーニンガム/作 みつこしなつや/訳 ほるぷ出版 ¥1,296-
「ダンボールの箱ありませんか。あそびたいんですけど」私を見上げて、やけにていねいな言葉を使いだす息子。
「何に使うんでしょうか」
「あのね、あそぶんです。舟にのっていくんです」 手ごろな大きさのダンボール箱を見た息子の目は輝き、さっそく舟のしかけ作りが始まった。
ひもをセロテープではりつけ、
「おぼれたときは、これにつかまるんです」ペットボトルにひもを結び、
「これでさかなをつるんです」
おもちゃのタイヤを前にはりつけ、
「これで運転するんです。では、いってきます」とたんに居間は川になった。
バスタオルを波のかわりに。
むこうから、幼稚園で作った空き箱の舟がくる。
「ガンピーさん」を思い出した私は、くまちゃんを連れてきて、「ぼくものりたいなあ」
「はい。どうぞ」
ぬいぐるみコーナーのみんなが次々に小さな舟に乗り込み、さいごはダンボールも破れて・・・バシーン!!笑いながら起きた息子が「もういっかーい」
ガンピーさんは、舟に乗りたがる子どもや動物たちに、「ケンカさえしなけりゃね」とか、「とんだりはねたりしなけりゃね」とか言うんだけど、そんなこと、したいに決まってるよ。するに決まってるよ。
でも、みんなとりあえずガマンするんだ。舟に乗せてほしいからね。舟にはたくさんの動物たちが乗ってくる。鳥も羊も、豚も牛も・・・。ガンピーさんの「・・・しなけりゃね」をくり返しながら。
読み手の子どもたちは、絶対に心の中で期待している。そして、期待通りになるのが嬉しいよね。
・・・「みんな、かわのなかに おちてしまいました。」
川岸の草や樹、石橋のトンネル。静かな川面。何よりも、淡々としているように見える動物たちの表情。 (でも、よく見るとヤギのつぶらな瞳などはたまりません)忙しい日々の中でも、この絵本の中では、
ゆったりとした時間が過ごせそうだ。
(文;森 ひろえ)