カマキリ
今森光彦/文・写真 アリス館 ¥¥1,512-
5月23日の早朝、
窓にたくさんの赤ちゃんカマキリが、頼りなげにうろうろしている。
窓枠の上に、カマキリの卵がくっついていて、
そこから次々に赤ちゃんが生まれていた。
小さな三角の顔、いっちょまえのカマ。息子は慌てて父親を起こしに行き、
3人で今年の庭の住虫?誕生に、有頂天になった。
去年の秋の終わり、テラスで死んでいたカマキリを、
息子と庭の片隅に埋めて、お墓を作ったんだ。
夏から秋をこの小さな花壇の中で生きていたカマキリ。
「きっと卵を産んだんだね」
「どこに?」
「この庭のどこかにさ」
その卵が、いつも私たちの頭の上にあったとは・・・。
カマキリは、いつも花壇のしその葉の上にいた。
私がしその葉を摘んでいる間は、「あっ来た来た」と、
慌ててとなりのヒイラギの葉に身をかくし、
私の用事が済むのを、じーっと見ながら待っている。
時には息子や私の腕に上り、そのしなやかな動きを見せてくれた。
ある日「ねえ、カマキリー」と声をかけると、クイッとこっちを振り返り、
そのまましばらく、私たちは見つめあっていた。
緑の丸い目の中に、小さな黒い点。
なんだか、悩みごとを聞いてもらえそうな気がしてしまった。
話のわかりそうな虫なんて、キミが初めてだよ。
作者は琵琶湖近く、田園風景の中にあるアトリエを拠点に、
世界中の自然を撮らえ続けている写真家。
美しく迫力ある写真はカマキリを語り、
文はカマキリを通して、作者を語っているみたい。
『やあ!であえたね』シリーズ。「ダンゴムシ」に続く第2弾。
(文;森 ひろえ)