きょうというひ
荒井良二/作 BL出版 ¥1,404-
父が「庭にかまくらを作った」と言うので行ってみると、
バケツに雪をつめてひっくり返し、
中をけずって作った“バケツかまくら”が、
庭中にぽこぽこ並んでいた。
夜、中に一本ずつろうそくを立てて灯すと、
自分たちが巨人になり、
足下に小さな町が並んでいるよう。
子どもたちはかまくらを踏みつけないように、
灯と灯の間をはしゃぎ回っていた。
息子がふとしゃがみこんでその灯を見つめ、
手を合わせて何かお祈りしていた。
おおきいおばあちゃんがいる仏壇の前のろうそく。
幼稚園のクリスマス会のろうそく。
ろうそくの灯を見つめると、
人は祈りを思い出す。
絵本の中では、女の子が
同じような雪の家をたくさん作り、
中に灯を灯している。
“きょういちにち”という時間をいただいたこと。
そして、あしたも、あたらしい一日がはじまる幸せを。
どんなことにも感謝し続ける灯火が、
みんなの心の中で、ずっと続いていきますように。
(文;森 ひろえ)