メイベルおばあちゃんの小さかったころ
アリータ・リチャードソン/作 中村妙子/訳 朔北社
「大草原の小さな家」や「赤毛のアン」が好き…という人なら、
この本もきっと楽しめる。
今もアメリカ・ロサンゼルスに住む著者が、幼い頃、メイベルおばあちゃんに
聞いたエピソード集。
田舎町に住んでいたおばあちゃんが、子どもの頃、
次々に起こった(起こした)出来事を読んでいると、100年前のアメリカの田舎町に、
そして、自分の子ども時代にタイムスリップしてしまいそうだ。
中でも好きなのは「小さなグレーの靴」の章。
新しい靴を買いに店を訪れたメイベルは、銀色のボタンのついた素敵なグレーの
靴に夢中になる。靴は一年に一度しか買えないのに、その靴はぴったりすぎた。
でもメイベルは「きつくなんかないわ。この靴で大丈夫よ」と言い切ってしまう。
メイベルの心の中は、その素敵な靴を友達に見せたい気持ちでいっぱいだった。
でもとうとうその靴がはけなくなる日がきて、母親に泣きながら謝るのだ。
その後、兄の古いドタ靴で一冬過ごすはめになったメイベル…。
その年のクリスマスプレゼントに、母の手作りの人形をもらう。
人形の目は、あのグレーの靴のボタンだった。
「わたしはいそいで母さんの顔を見たわ。でも母さんは知らん顔をしてたのよ。」
それからメイベルの宝物になったその人形。
ボタンの目を通して、母親がいつも子どもを見つめている。
この母ニクイね。
このシリーズは、メイベルが結婚し、母親になっても続く。
(全12巻、他、絵本も有り)
(文;森 ひろえ)