旅の絵本
安野光雅/作 福音館書店 各¥1,512-
絵本にはじめて魅せられたのは、高1の時。
一人の旅人が船で陸にたどり着き、手に入れた馬に乗り、
行事や遊び、建物などがうつり変わる風景の中での旅が始まる。
文章は何もなく、どのページにもどこかに旅人の姿が‥‥。
本屋で何気なく手に取ってパラパラとめくり、
旅人が去って行く最後のページの草原の中に、
私を釘付けにするものがあった。
「これ、ミレーの“晩鐘”だ‥‥」
あわてて前のページをめくってみると、そこには“落ち穂拾い”。
ページの奥で花を摘んでいる赤ずきんを、川をはさんでじっと見つめるおおかみ。
そして農家の窓から見えたのは、ベートーベンだ!
なけなしのおこづかいで次の日、生まれてはじめてその絵本を買い、
帰りの電車では、夢中で絵の中を旅していた。
きっとここには、まだいろんなものが隠れているんだろうな。
“私の知らないことが、世の中にはたくさんあるんだ”
その瞬間、私はこれからの自分の旅を想ったのだ。
先日、息子に「どろんこハリー」を見つけられた時は、
驚いて悔しくて‥‥そして笑いが止まらなかった。
何年か時間をおいてこの本を開き、新しい発見をする度に、
はじめて絵本に心動かされた時の感動も思い出す。
旅の絵本〈1〉北部ヨーロッパ編
ブレーメンの音楽隊・はだかの王様など‥
旅の絵本〈2〉南部ヨーロッパ編
聖書物語・さんびきのこぶた・シンデレラなど‥
旅の絵本〈3〉イギリス編
ピーターパン・ビートルズ・くまのプーさんなど‥
旅の絵本〈4〉アメリカ編
トムソーヤ・チャップリン・スーパーマンなど‥
その他、絵本や物語、映画のシーン、かくし絵などもたくさん楽しめる。
(文;森 ひろえ)