つるつる
正道かおる/文 村上康成/絵 童心社
息子の散髪は、私の楽しみのひとつだ。
「私もキミのように髪の毛短くしたいなあ」
それを聞いた息子は、切られたばかりの自分の髪を指先でさわりながらこう言った。
「おかあちゃんは女の子だからね。女の子は短くしないんだよ」
そして首のあたりに手をおろし、
「女の子はこれ位」
・・・おお。
私は本棚から「つるつる」を持ってきて読み始めた。
女の子のミオは、男の子のタカチャンに憧れてる。
だからブランコも飛び箱も逆上がりも、がんばってできるようになった。
タカちゃんみたいになりたくて、とこやさんで「つるつる」にしもらったミオ。
なのに、幼稚園で会ったタカちゃんは、ミオを指さして笑うじゃないか。
「ひどい! タカちゃんがつるつるにするって言ったから、わたしもつるつるにした
のに」
「ぼく、そんなこと言ったっけ」
・・・この男女関係って、大人になっても変わらない気がする・・・。
2人はめでたく仲直りするんだけど、ミオはやっぱりタカちゃんみたいになりたくて、
ちんちんがはえてこないかと、毎日見てるんだって。
「な、つるつるでも女の子。ミオはかわいいと私は思うよ」
「よーし。わかった」
口をへの字に曲げ、自信満々の息子の様子。
・・・何がわかったか聞きたかったけど、今のところはまだいいか。
大好きな友達は、自分を成長させてくれることがあるね。
もうひとりミオを成長させてくれたのは、たじろぐとこやさんに
「いいんです。ミオの言うとおりやってもらえませんか」
ときっぱり言った、とうさんの言葉だ。
(文;森 ひろえ)