電磁波
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3.電磁波を出すベビーシッター「ベビーフォン」

子育て中でもパートナー同伴で外出するヨーロッパ。そんなとき活躍する「ベビーフォン」。赤ちゃんへの電磁波の影響は?。

 ・子育てにかかせない「ベビーフォン」とは?
 ・赤ちゃんとって安全か?
 ・ベビーフォンと電磁波

2007年1月 文/永瀬ライマー桂


ベビーフォン」とは?

 ヨーロッパでは、夕方から夜にかけて、パートナー同伴で招待される機会が頻繁にあります。もちろん子ども抜きです。ふだん育児や家事に追われている身としては、たまに夫と二人きりで夜におしゃれして外出するのはいいものです。ただ問題は子どもたちです。小さい子どもたちだけで留守番させておくわけにはいきません。そんなときヨーロッパの親たちは、近くに住む実家や義理の両親に子どもを預けたり、ベビーシッターに来てもらったりしています。近所の人にお願いすることもありますが、その際は、わざわざ家に居てもらわなくてもよいように「ベビーフォン」を使います。

 ベビーフォンは送信機と受信機の二つがセットになっています。送信機を子どもの寝室において、受信機は子どもをみてくれる近所の人のところに持っていきます。子どもが泣くと、子ども部屋においた送信機がその音をキャッチして、それを受信機に送ります。近所の人は、受信機から子どもの泣き声が聞こえると、子どものところにかけつけてくれます。
 外出しないときでも、ベビーフォンを使う人もいます。ふつうヨーロッパでは、子どもは小さいときから両親と別の部屋で寝ます。我が家のように、子どもの寝室が親の寝室の隣にある場合は必要ありませんが、二つの部屋が離れている場合には子どもの泣き声が聞こえないので、ベビーフォンを利用する人もいます。


赤ちゃんとって安全か?
 さてこのベビーフォン、とても便利ですが、ちょっと心配になるのは電磁波です。子どもたちは眠っている間、けっこう強い電磁波を浴び続けることになります。子どもたちへの健康影響が気になりますが、安全なベビーフォンってあるのでしょうか。何を目安に判断したらよいのでしょうか。

 そんなとき頼りになるのが、TEST(エコテスト)やTEST(テスト)という月刊誌です。これらは消費者向けの雑誌で、ありとあらゆる商品を価格や機能、使い心地などさまざまな角度からテストして、その結果を6段階に評価しています。特にエコテストは「エコ」という名前の通り、環境保護に重点を置いたテストをしています。テストの結果は、商品の売れ行きにけっこう反映しているようです。高い評価を受けた数多くの商品は、パッケージにテストで「sehr gut」(英語でいうvery good)や「gut」(英語でいうgood)と判定されたというマークをつけています。また、スーパーによっては、商品名と値段が書かれた札にこのマークもつけて「おすすめ品」としています。テストで悪い結果がでた商品は、メーカーが改善することもあります。

 ちなみにエコテストが最近テストした子ども向けの商品は、50品目以上。離乳食、おしゃぶり、ぬいぐるみ、長靴、子ども用ベッド、下痢止め薬、クリーム、哺乳瓶、ソックス、歯磨き粉、カラーペン、子ども用シャンプー、浮き輪などなど。そのなかにベビーフォンもありました。


ベビーフォンと電磁波
 ベビーフォンのテストでは、8社18機種の調査結果が出ていました。テストの判定で一番重要視されていたのは案の定、電磁波でした。同じベビーフォンでも、使われている電磁波は機種によって違います。例えばPhilips社製のものは、絶え間なくパルス波のマイクロ波を出します。これは、あるドイツの医者たちのグループが問題視しているワイヤレスフォンの電磁波(DECTスタンダード)と同じです。 この電磁波を使ったベビーフォンは音声が明瞭に聞こえ、受信機が圏外に出るとアラームが鳴るという利点があります。でも、絶え間なく出す電磁波が子どもに悪影響を与えかねないという理由から、悪い点がついていました。
エコテストは、音声は明瞭でなくても、赤ちゃんが泣いたときだけ電磁波を出して信号を送るベビーフォンを勧めています。我が家もエコテストがお勧めのベビーフォンを購入しました。

 しかしどんなに電磁波が少ないベビーフォンを使っても、眠っている子どもたちにかかる負担は大きいようです。エコテストによると、最悪の機種では、ベビーフォンから30センチ離れたところの交流電場(※1)は、スエーデンのコンピュータ規格TCO(※2)の基準値の10倍も高いのだそうです。オフィスでコンピュータを使って働いている人よりも、眠っている子どもたちのほうが強い電磁波を浴びることになります。

 だからと言ってベビーフォンを使うな、というわけではありません。ちょっとした工夫でリスクを減らすことができます。例えば、子どもとベビーフォンをできるだけ離すこと、ベビーフォンが必要でないときは、子ども部屋の送信機のスイッチを消すこと、送信機の音声品質を調整できる場合には、高い音声品質を選ばないこと、などをエコテストは消費者に勧めています。
 またエコテストは電磁波以外にも、どんな素材でできているかをテストしていました。例えば、ダイオキシンを出す塩素系のプラスチックが使われている機種には、しっかりマークがつけられて、減点されていました。
 もちろん、電磁波を出すベビーフォンを避けるにこしたことはありません。でも、ベビーフォンを時々使うことで、親が自由な時間を持つことができ、それによって育児ストレスが軽減されるなら、それも悪くないと思うのです。子どもの安全はもちろん最重要ですけれど、親が不満を抱えていないこと、イライラしていないこと、これもとっても大切ですよね。

第3回 電磁波を出すベビーシッター「ベビーフォン」 2007年1月 文/永瀬ライマー桂子

(※1)交流電場
家庭に送られている電流は交流電流であり、それが流れるとそこから、交流電場と交流磁場が発生する。その2者は時間的に大きさが変化しつつ互いに相手を引き起こしながら波となって空間中を伝播する。これを電磁波と呼んでいる。

(※2)TCO
TCOとは、スウェーデン最大の労働組合「スウェーデン中央労働者協議会(The Swedish Central Organization of Salaried Employess)」が定めた、ディスプレイから放射される電磁波やディスプレイの消費電力のレベルを規定した規格。電磁波については、「正面30cm及び周囲50cmで、交流電界は、5Hz〜2KHzの周波数では10V/m以下、2KHz〜400KHzの周波数では10V/m以下でなければならず、交流磁界は、5Hz〜2KHzで2mG以下、2KHz〜400KHzで0.25mG以下でなければならない」としている。(V/mは電界の単位、mGは磁界の単位)



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