妊娠・出産のアウトライン

妊娠・出産のアウトライン-3

「妊娠したかな」と思ったとき、検査に行く病院はもう決めていますか?
また、実際に産む施設によって、出産方法がまったく異なることを知っていますか?いざというときに悩まないために、今から妊娠・出産についての知識を得ておきましょう。


子どもを産むということ

「お産は自然なこと」と多くの人が考えていることなのに、多くの人が病院へ行って出産する。それが今の時代のあたりまえの出産だと考えられているからだ。もちろん、お産は命がけ。何が起こるかわからないこともある。それでもなぜ、出産=医療というふうに考えられているのだろうと、私はいつも不思議に思う。

お産は時代によって変わってきたものだし、民俗や国によっても様々な様式がある。今の時代の世界的な傾向が、西洋医学中心に出産を捕らえているのだけれど、それでも出産を語るときには、まず医療ありきでなくてもいいはずだと思う。
そこには女と男のパートナーシップや葛藤もあるだろうし、性の問題も見えてくる。子育ての環境も見えてくる。こんな時代だからこそ、産みたくないという人もいれば、こんだ時代だからこそ産むという人もいるかもしれない。
政府は「少子化への対応」として「育児支援事業」に積極的だ。名前や背景は違うけれど、政府が子どもを産むということに口を出してくるのは、「産めよ増やせよ」の戦争の時代と同じように、子どもは国の財産、国力として考えられていること自体に変わりなないのだなあと、感じる。
そんな国の思わくとは別に、女たちは産むことを選択したり、産まないことを選択したりしているのだけれど、今では育児が社会の中でひじょうにしにくい状況になってしまったのは事実だ。育児なんて、いかにもお金のかかる、めんどくさい、かっこ悪いものになってしまってさえいるような気がする。
けれど、いくら女が産むと言ってみても、国民として子どもたちが生まれてこないにしても、お産や子育ては大人だけが考えることではなくて、そこには主役である「子ども」という存在がある。

産まれて10分の赤ちゃん

産まれて10分の赤ちゃん
Photo by きくちさかえ

お産は女が産むこと、だけではなくて、生まれてくる子どもにも焦点を当てて考えるほうがいい。
私は16年間、妊婦とその家族を対象に『マタニティ・クラス』という出産を準備するためのクラスを各地で行ってきた。そこで出会う、妊婦さんやそのパートナーももちろんだけれど、おなかには生まれてこようとしている赤ちゃんがいるんだなと、いつも考えながら仕事をしている。いっしょにヨーガをやるとき、妊婦のおなかの中で胎児もいっしょに呼吸をしたり、リラックスをしているのだと思うと、私まで幸せな気分になってくる。

自然、いのち、男女の性差など、お産を通じていろいろなものが見えてくる。そして「自然なお産」を考えるときに、その言葉がまるで流行のようにもてはやされていると耳にすることがあるのだけれど、自然なお産を考えるときに、「自然」そのものについて考えなければならないだろう。いくら自然なお産がしたいと望んでも、日頃の生活や考え方が自然に即していなければ、お産だけ自然にできるとは考えにくいのだ。自然をよく理解し、さらに、自然と科学(医学)の融合をどこでどのように考えていくかもポイントになる。

今は、社会全体のうねりのようなものを感じる。便利で、簡単、お手軽がもてはやされ、もちろんそうした生活も悪くはないのだけれど、実際、お産や子育ては便利で、簡単、お手軽とは180度反対の方向にあるものだ。だからこそおもしろいのだけれど、便利で、簡単、お手軽を追求している社会とはなかなか馴染めない。だからこそ、育児のしにくい時代なのだろう。でも、子どもと関わっていくうちに、その便利で、簡単、お手軽でないものの考え方や優しさに触れることにもなる。合理的な社会にあって、子どもというものは、出てくるお産のときから、あまり合理的であるとはいいがたい存在なのだ。そうした社会の中で、子どもを産むということがどういうことなのか、その社会の中で子どもはどのような存在なのかも考えていければと願っている。

by きくちさかえ 掲載:2000年

きくちさかえ プロフィール(掲載時)
出産準備教室、マタニティ・クラス主宰。日本マタニティ・ヨーガ協会推薦指導員。 社団法人日本写真協会会員。日本赤ちゃん学会、日本母性衛生学会、乳房文化研究会会員。
立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科博士課程。研究テーマ「出産」2007年第2回平塚らいてう賞、奨励賞受賞。
自らの助産院での出産を契機に、出産に感心をもち研究と取材をすすめるようになる。アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、アジア、ブラジル、ミクロネシア諸島など、世界15ケ国以上の出産を取材。マタニティ雑誌、医学専門誌、新聞などに数多く作品を発表。講演多数。


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