熱性けいれん
熱性けいれんは小児には決して珍しいものではありません。1歳前後から3〜4歳までに起こすことが多いです。そして、一回きりという人が半数以上。このけいれんは家族歴があることも知られています。お父さんまたはお母さんが小さい時ひきつけたということ、です。
熱性けいれんは、熱が急にあがる病気ではどの病気でも起こりえます。ひきつけたから重い病気というわけではないのです。普通のカゼでも、夏カゼでも、インフルエンザでも、または、まれには尿路感染症や中耳炎、敗血症といった細菌感染症でもひきつけることがあります。病気の最初(発熱の24時間以内)に起こすことがほとんどで、時には、けいれん後にはじめて熱に気付くということもあるくらいです。
けいれんは突然起こり、多くはからだが突っ張った後に、がくんがくんと手足を震わせます。白目をむいて(上転するといいますが、上を向いています)、呼吸が止まり顔色は真っ青になり、意識がなくなります。聞いてるだけでも恐ろしくなってしまいますね。
このようなときに、
あらかじめ知っておいて頂きたいことを、書いてみようと思います。
まず、単純なものなら多くは1〜2分、長くても5分以内に自然にとまります。衣服を緩めて、静かに横にしてあげてください。揺すったりしないように。それから、舌を噛まないように口に物を入れるということもやめましょう。かえって危険なことがわかっています。もしも、嘔吐したら、肺に吸い込まないように顔を横にして、できたら口の中のものをとりのぞいてあげます。
医者に聞かれることは次のようなことです。
どのようなけいれんだったか。
だいたい何分くらい続いたか。
左右差はなかったか。
たとえば手足のひきつけ方は右と左で違わなかったかとか、目は上ではなく右寄りや左よりではなかったか、意識はどのくらいでもどったか、けいれんのあとに麻痺がないか、というようなことです。
熱性けいれんは子どもの病気としてはよくあるのですが、5分以上のけいれん、左右差のあるけいれん、意識がもどりにくいけいれん、一日に(24時間以内に)何回も繰り返すけいれん、熱が高くないけいれんは心配なけいれんといえるでしょう。そのようなけいれんはすぐに救急外来を受診して、単純なものかどうか診察を受ける、または場合によっては入院して検査を受けたり経過を観察した方がいいこともあります。
単純なものであっても、初めてけいれんを起こした後はとても心配だと思います。救急外来で一度みておいてもらうと、安心できますね。私は、けいれんという症状は「あわててしまってすぐ救急車を呼んでしまった」ということは当然あるだろうと思います。白状しますと、研修医時代、初めて見たときは私自身怖かったくらいです。
救急外来では、けいれんの予防薬(ダイアップといいます)を座薬で処置されると思います。私の研修医時代にはない薬でしたが、現在はポピュラーな治療薬になっています。8時間後にもう一回使えば、予防としては一応万全ということになっています。
単純な熱性けいれんは、一度きりという人が半数以上。3〜4回繰り返す人も数パーセントではありますが、5〜6歳で自然に起こらなくなり、後遺症もありません。
熱性けいれんの予防には、上記のけいれん予防薬の座薬が有効です。一回きりのことが多いとはいえ、心配な人はお守り代わりに処方しておいてもらって、冷蔵庫に常備しておくといいと思います。使う場合は37.5度以上でまず一回挿入、熱が下がらず(病気の勢いで、という意味、この座薬には解熱効果はないです)、心配な状態なら、8時間後にもう一回挿入するというのが、標準的な使い方です。
心配なら、診察を受けて、相談しながら使ってくださいね。
もちろん、お母さんの感覚で、大丈夫そうだから使わないという方法もあります。