子どもと食べもの/胎内からはじめる食育

子どもと食べもの「胎内からはじめる食育」

2. 胎児が危ない!
危険な妊婦のダイエット
【1】

取材協力・監修:福岡秀興 先生 (2006年5月掲載・2017年11月再編集)

おなかの中の赤ちゃんがよりよく育つ環境を整えるためには、妊娠中、そして妊娠前に何ができるのか・・・・。厚生労働省の「食を通じた妊産婦の健康支援方策研究会」の報告と、東京大学大学院助教授の福岡秀興先生のお話をもとに、妊娠中の食生活について考えてみましょう。

1.ダイエットは胎児の成長を抑制する

2.体重増加はどこまで?

3.正しい食事は赤ちゃんへの最高のプレゼント

取材協力・監修:福岡秀興(ふくおか・ひでおき)先生
兵庫県出身。医学博士。東京大学大学院医学系研究科発達医科学助教授。米国内分泌学会・骨代謝学会正会員。日本内分泌学会代議員。産婦人科生殖内分泌学の視点より、妊娠中や思春期の女性の骨代謝の研究を行っている。第6次、第7次日本人の栄養所要量の策定委員。(プロフィールは取材当時)



胎児が危ない!危険な妊婦のダイエット

24時間営業のコンビニエンスストアや惣菜店で、いつでも手軽に調理済み食品が手に入る現代。飢える心配から開放された反面、現代人は、「生きるために食べる」「食べものが体を作る」という基本的なことさえ、忘れがちになっているのかもしれません。

食事によって体が変わることは、人間以外の数々の生き物によって証明されています。例えば、女王バチと働きバチは、遺伝子的にはまったく同じです。成長期に与えられた食べものの違いで、その役割が変わってくるのです。
人間も、この世に生を受ける前、つまり、母親のおなかの中にいるときに受け取る栄養によって、体の組織やシステムの構造、機能が決定づけられることが分かってきました。そして、胎児のときに栄養不足になって、成長が抑制され、小さく生まれた赤ちゃんは、成人後の高血圧、糖尿病、動脈硬化、高脂血症などの病気になるリスクが高いことが、近年の研究によって明らかにされています(成人病胎児期発症説)。

おなかの中の赤ちゃんがよりよく育つ環境を整えるためには、妊娠中、そして妊娠前に何ができるのかーー。厚生労働省の「食を通じた妊産婦の健康支援方策研究会」の報告と、東京大学大学院助教授の福岡秀興先生のお話をもとに、妊娠中の食生活について考えてみましょう。



「1カ月に増えていいのは、1キロまで」「妊娠中の体重増加は7〜10キロに押さえましょう」。つい最近まで、妊婦の体重制限は、常識といってよいものでした。その根拠となっていたのは、妊娠中に太ると、産道に脂肪がついたり、赤ちゃんが大きくなり過ぎたりして、難産になりやすく、妊娠中毒症(※1)や妊娠糖尿病のリスクも高くなる、という説でした。
危険な妊婦のダイエット

しかし、妊娠中の女性といっても、もともと太っている人もいれば、痩せている人もいます。太っている人、あるいは、体質的に高血圧や糖尿病のリスクを抱えている人の場合、妊娠中の体重コントロールは確かに必要でしょう。しかし、痩せている女性、特別なリスクのない女性までもが、妊娠中の体重増加を制限する必要があるのでしょうか?体重コントロールのために、妊娠中に食事制限をすることで、赤ちゃんに影響が及ぶことはないのでしょうか?

こんな当たり前といえば当たり前の疑問が、最近になって大きく取り上げられるようになってきました。

日本の女性の「やせ願望」は根強く、若い女性の多くがダイエット経験者です。 15歳〜29歳では、全体の約4分の1がBMI(体重を身長の2乗で割った数値)が18.5以下の「痩せ」女性であるというデータが出ています。「痩せ」の中身もさまざまで、BMIだけですべてを語ることはできませんが、この中には、適切ではない食生活やダイエットなどの影響で、栄養不良となっている女性も相当数いるはずです。平成15年の国民健康・栄養調査によると、朝食の欠食(何も食べない、あるいは、サプリメントや菓子などで済ませる)率は20代女性で23.6%、30代で12.7%にのぼっています。また、食事の内容をみても、ビタミンやミネラル、カルシウムなどの摂取や、エネルギー摂取が必要量を下回る女性も多くみられます。東京大学大学院助教授の福岡秀興先生は、「このような食生活を送っている女性が妊娠し、体重を増やさないために、さらなる食事制限を行った場合、おなかの赤ちゃんが栄養不足になり、成長が抑制されてしまう可能性が高い」と、若い女性の痩せと食生活に警告を発します。

グラフ1「低出生体重児の増加」 グラフ1「低出生体重児の増加」
グラフ1は、2500g未満で生まれた赤ちゃん(低出生体重児)の出生率の推移を現したものです。1980年には5%ほどだった低出生体重児が、その後少しずつ増え続け、2003年には9.1%になっています。つまり、生まれてくる赤ちゃんの10人に1人は低出生体重児ということになります。低出生体重児の増加は、若い女性の喫煙率や飲酒率が上がっていること、体外受精など生殖医学の発展によって多胎妊娠が増えたこととも、深い関係があるといわれています。しかし、それだけではなく、赤ちゃんを生む前の女性に「痩せ」が増えていること、さらに、妊娠中も体重制限を行うことが、大きく影響している可能性は否めないのです。

小さく生まれた赤ちゃんは、将来、高血圧や心臓病、糖尿病などの成人病になる可能性が高くなるという「バーカー説」については、第1回「胎内で将来の病気の原因が作られる?」で紹介した通りです。このようなリスクを少しでも減らすためには、まず、妊娠前〜妊娠中の体重コントロールや食生活について、もう一度考える必要がありそうです。


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