あたたかいお産と子育て
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進先生のあたたかいお産と子育て
お産は子育ての出発点。産む人と生まれてくる人が尊重される「あたたかいお産」の環境ついて考える、進先生の連載コラムです。 掲載:2001〜2003
(故)進 純郎(Shin Sumio)先生 産婦人科医師 医学博士 (掲載当時)葛飾赤十字産院院長 人間的な出産について考える「出産のヒューマニゼーション研究会」代表。

双子ちゃん、多胎ちゃん

.........双子の種類

.........妊娠中に気をつけること

.........出産について

.........母乳哺育成功の鍵は「同時授乳」

.........育児サポートグループ


健診のとき、はじめて「双子ちゃんです」「三つ子ちゃんですよ」と言われたときは、だれもが驚かれることと思います。喜びと期待と不安で、心の中はいっぱいになってしまうことでしょう。
それでも自然に発生する双子の頻度は、日本人は西洋人や黒人に比べて、少なくなっています。西洋人では80例にひと組みくらいで、黒人ではその割合がもっと高く、日本人の場合は100〜120例にひと組。三つ子の場合は10000〜14400例にひと組くらいと言われています。
かつては排卵誘発剤による妊娠や、いくつもの卵を採取してそれを子宮に戻す体外受精などによって、四つ子、五つ子などができたこともありました。しかし5年ほど前から、不妊治療によって子宮に人工的に戻す卵は3つまでと決められています。四つ子、五つ子は、自然に発生することもあることはありますが、非常にまれなことです。
 

 双子には一卵性と二卵性の二種類があって、日本では一卵性が多いといわれています。一卵性というのは、ひとつの卵子にひとつの精子が受精し、その受精卵が細胞分裂していくあいだに、受精卵そのものがパカッとふたつに分離して成長していくものです。まったくのコピーができあがるわけです。分離する時期は何日目と決まっているわけではなく、その分離する時期によって卵膜の形態が変わってくると言われています。

 一卵性の場合は、胎盤をふたりで共有し、外側の絨毛はひとつですが羊膜がそれぞれに分かれて個室になるもの(一絨毛膜二羊膜)と、羊膜もひとつで部屋が同室のもの(一絨毛膜一羊膜)があります。一卵性は、ひとつの受精卵がふたつの分かれたコピー同士なので、ふたりの性格はほとんど同じ、血液型、知能などもとてもよく似ています。非常に初期に分離した場合には、二卵性と見分けがつかない場合(二絨毛膜二羊膜)もあります。

 二卵性は卵巣からふたつの卵子が排泄されて、それぞれに別の精子が受精するものです。この場合は、胎盤をそれぞれもち、絨毛膜も羊膜も別になる部屋が完全に別室(二絨毛膜二羊膜)のものと、胎盤は共有で部屋が別室(二絨毛膜二羊膜)のものがあります。二卵性は、卵子も精子も別々なので、性別なども一般のきょうだいくらいの差異があります。
 二卵生の双子は遺伝によるものもありますが、一卵性は遺伝ではなく自然に起こるものです。遺伝については、はっきりしたことはわかっていませんが、一度にふたつの卵子が排卵しやすいということが遺伝するのではないかと言われています。
 

 双子や多胎の場合は、妊娠6〜8週目ころ超音波によってわかります。ふたり、あるいはそれ以上の赤ちゃんがおなかの中にいるわけですから、当然おなかは早く大きくなります。からだの大きな妊婦さんの場合には、それほど大きさを感じないこともありますが、母体への負担は大きく、いろいろなマイナートラブルがあらわれやすくなります。

・妊娠中毒症
 妊娠中毒症には、高血圧、タンパク尿、むくみの3つの症状があり、双子の妊娠の場合は比較的早い時期から症状が出やすくなります。重症になると、赤ちゃんの発育にも影響し、低体重児や早産の原因になります。むくみがひかない、尿の量が少ない、胎動が減る、頭痛がするなどの自覚症状がある場合には、次の健診を待たずに受診しましょう。
 予防法としては、妊娠初期から食生活に注意し、適度な運動をするしかありませんが、むくみやすくなったらマッサージをしたり、足を高く上げて休むなどの工夫を。

・切迫早産
 妊娠30週前後には、ひとりの赤ちゃんの妊娠期の40週ほどのおなかの大きさになりますから、おなかが張りやすくなります。また、子宮が伸ばされて子宮の出口が広がりはじめることもあり、早産になりやすくなります。おなか全体が硬くなったり、生理痛のような痛みを感じたり、下腹部がだるく感じるようなときには、横になって安静に。おなかが張りやすい場合には、張り止めの薬が処方されます。また、頸管縫縮術といって頸管の出口を縛る手術をする場合もあります。

・貧血
 妊娠中は、母親の血液中の水分量が増えるために、血液が薄くなります。また、おなかの中の赤ちゃんふたり分の鉄分を供給しなければなりませんから、貧血になりやすくなります。重症の貧血は、胎児に影響し、また産後、母親のからだは疲れやすくなってしまいます。妊娠初期から、鉄分の多く含まれている食材や、鉄分の吸収を助けるビタミンC、良質のタンパク質をとるように心がけましょう。貧血の程度によっては、内服薬や注射で鉄分を補うこともあります。

・そのほかのマイナートラブル
 おなかが非常に大きくなるために、いろいろな症状が出てきます。大きなおなかを支えるために骨盤に負担がかかり、腰痛も出やすくなります。また、骨盤周辺の血流が悪くなることから、こむらがえりや静脈瘤などがみられることもあります。そのほか便秘、頻尿、妊娠線なども、ひとりの赤ちゃんの場合より、よく見受けられる症状です。

 

 多胎の場合は、通常の出産予定日より早く生まれることが多いのですが、できるだけ赤ちゃんがおなかの中で成長するように、当産院では双子の場合は37〜38週、それ以上の多胎の場合には33〜35週を妊娠継続の目標にしています。

 三つ子以上の場合には、帝王切開になりますが、双子の場合は、37週頃に赤ちゃんの推定体重や胎位(頭位か、逆子かなど)を考慮して、その人にあった出産の方法を選びます。ふたりの赤ちゃんともに2000g以上で、妊娠週数が37週以降、母親が妊娠中毒症などの問題がない、赤ちゃんが元気であれば、自然分娩は可能です。子宮口に近いほうの赤ちゃんが先に出てくるわけですが、その赤ちゃんが逆子の場合は、自然分娩だとひとり目の赤ちゃんの頭が出るときに、次の赤ちゃんの頭と重なってしまい危険が伴うので、帝王切開になります。胎児の胎位は、出産前にあらかじめ予測していますが、陣痛がはじまってから、超音波で再度確認します。

 双子の場合は、おなかが大きくて子宮の筋肉が伸びきっているので、陣痛が微弱になることがあります。当産院では、子宮の開きぐあい、陣痛の強さ、間隔などを考慮して、陣痛促進剤を使用することがあります。もちろんその場合には、そのむね説明していますが、あらかじめパンフレットを渡して、使用する可能性のある陣痛促進剤について説明しています。
 経膣分娩の場合には、ひとり目が誕生してから、ふたり目が誕生するまで、5〜30分ほどかかります。まれに、ひとり目が自然分娩でも、ふたり目が帝王切開になる場合もあります。
 双子以上の多胎の場合には、小児科医が出産に立ち会います。週数が早く生まれたり、小さく生まれた赤ちゃんは、新生児室ではなく、NICU(新生児集中治療室)へ入ります。  


 双子の場合でも、当産院では母乳哺育がすすめられるように、助産婦がサポートしています。授乳のコツは、ひとりひとり順番に授乳するのではなく、ふたり同時に授乳すること。ふたりをたて抱きにしたり、座ぶとんの上に寝かせたりして、左右のおっぱいを同時に吸わせます。授乳のたびに、左右交換して吸わせるようにしましょう。
 ミルクと混合の場合にも、先に母乳を与えてから、そのあと同時にミルクをあげるなどの工夫を。
 

 当産院では、一般の病院より双子の出産が多いということもあって、産後に双子の親子のための会を設けています。近くにそうした会がない場合でも、双子の赤ちゃんの育児をサポートするグループはたくさんあります。先輩からの育児のアドバイスや、相談を受けてくれるところもありますから、育児の力強い見方になってくれるでしょう。

 ツインマザースクラブ http://www.tmcjapan.org/
 ツインキッズクラブ  http://www.twinkidsclub.com/

参考図書
『双子&多胎の本』たまごクラブ特別編集 たまひよブックス ベネッセ
『ツインズ』多胎家族向け雑誌 季刊誌  ビネバル出版 

妊娠・出産、母乳ワード101妊娠・出産・産後ワード101
安産と楽しいマタニティライフに役立つ101用語を解説しました。
監修/医学博士・産婦人科医師(故)進 純郎先生(監修当時)葛飾赤十字産院院長


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