「養子制度」について考える

 子どもを育てる選択のひとつに「養子縁組み」があります。「養子制度」は、日本ではあまりなじみがありませんが、アメリカでは不妊治療後のひとつの選択肢として、あるいは子どもがいる家庭に養子を迎えたり、人種を越えた家族の在り方としても、多様化したファミリーの形態が存在します。

 日本でも2008年に、NHKの連続テレビドラマで「里親」が取り上げられましたが、それでもまだあまり一般に馴染みのある制度とは言えない状況です。
 一方、アカデミックな世界では、家族社会学などの領域で多様化する家族のあり方をフィールドに研究する研究者も増えています。
 東京大学大学院生の野辺陽子さんもその一人。東京大学大学院で社会学を専攻し、養子制度の研究をされている野辺さんに、養子制度について報告していただきます。


野辺陽子(のべ・ようこ)さんプロフィール
東京大学大学院人文社会系研究科 社会学専門分野 博士課程在学中
韓国のソウル大学に留学中、親探しのためなどで母国訪問している数多くの海外養子に出会う。韓国で実親探し・ルーツ探しをする海外養子の姿を見て、養子縁組の問題に関心を持つ。帰国後は家族社会学を専攻し、日本の養子縁組の状況に関心を持ちはじめる。養子縁組を通して変容する家族・親子・社会の姿を捉えることをライフワークとしている。




子どもを育てるためのもう一つの選択--養子制度

by 野辺陽子(東京大学大学院 社会学)


 養子制度とは、「他人」が産んだ子を引き取り、(法的な)親子関係を結んでその子どもを養い育てる制度で、歴史も非常に長い制度です。養子制度の利用者は戦後60年間で非常に減少していますが、現在も子どもを持つためにこの制度を活用する夫婦もいます。養親となった夫婦の中には、不妊治療を経験した方も多いと考えられています。
 ここでは、子どもを育てるための選択肢として存在しながら、非常に情報量が少ない養子制度の実態についてレポートします。


 まず、養子縁組が毎年どのくらい行われているのかをみてみましょう(図1)。養子縁組数の統計をみると、未成年の子どもとの普通養子縁組は戦後持続的に減少して、近年では、毎年1000〜1500件程度の養子縁組が行われています。1987年に立法化された特別養子縁組は施行当時から利用者が少なかったですが、やはり持続的に減少し、近年では、毎年400〜300件程度の養子縁組が行われています。

 一方で、体外受精によって生まれた子どもの数は急激に増え続けています。統計から、成長し続ける不妊治療と衰退し続ける養子制度という2つの選択肢の対照的な動きがはっきりと見て取れます。

図1 養子縁組件数と体外受精児数

出典:未成年養子および特別養子の家裁認容件数は司法統計各年度より筆者作成。体外受精児数は(江原・長沖・市野川、2000: 3)より筆者作成。
*1988年の体外受精児数は1983〜1988年の合計

●養子縁組関連のサイト
東京都福祉保健局HP (東京都里親認定基準

書籍の紹介
『家族づくり 縁組家族の手記』 絆の会編、1997、世織書房

『親子になる 養子縁組の選択』 絆の会編、2007、御茶ノ水書房

『里親が知っておきたい36の知識』 社団法人家庭養護促進協会、2004、家庭養護促進協会神戸事務所



養子制度について考える

「養子制度」について考えるインデックス

1.養子縁組の件数

2.養子制度と運用

3.どんな人が養子縁組をするの?

4.当事者の気持ち

特別寄稿: 不妊と多様な選択
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