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子どもの発達と脳の不思議 TOP

赤ちゃんの心のめばえと発達

 早期教育は本当に必要なのだろうか。テレビなどのメディアとのつき合い方はどうすればいいのか…。
子育てをする上で悩みごとは尽きません。しかし、大切なのは、発達のプロセスを正しく理解したうえで、子どもに働きかけることではないでしょうか。

 第3回は、赤ちゃんの"心"のメカニズムを研究している「赤ちゃん学」の提唱者、開一夫先生にお話をうかがいました。
「子どもを育てている人なら、『この子は私の言うことを理解しているようだ』とか、『うちの赤ちゃんは泣いてばかりで、何もわかってないようだ』といった気配を感じた経験はきっとあるはずです。その"気配"を実証的に明らかにするのが、赤ちゃん学なのです」と開先生は言います。
 赤ちゃんとのさまざまな「実験」を通してわかった、脳と行動の発達について解説していただきました。

談・開一夫(東京大学大学院総合文化研究科助教授)

ヒトの"心"はどのように働くのか

生後10カ月でテレビと現実世界を区別する

「鏡に映っている自分」がわかるのはいつからか?




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生まれたときから持っている「初期知識」

早期教育とテレビゲームの是非

親も「実験」を通して、赤ちゃんの心に迫ってほしい




 ヒトの"心"はどのように働くのか


 私たちがふだん何気なく行っていることは、たくさんあります。たとえば、朝起きて鏡を見ながら髪を整えたり、服装を選ぶ。昼下がり、友人や仲間とコーヒーを飲みながら、おしゃべりを楽しむ。夕食後、好きなテレビドラマを観て過ごす。
 ただ、それを「どのようにして」できるようになったのかを考えると、ちゃんと答えられない場合が多いのではないでしょうか。鏡に映っている自分を見て、それがなぜ自分の姿だとわかるのか? 気が置けない友人との会話はなぜ楽しいのか? テレビの映像の中の出来事と現実世界の出来事をどのように区別しているのか?

 実は、私たちが一見、簡単そうにこなしていることも、そのほとんどがある日、突然できるようになったわけではありません。赤ちゃんから大人になるまでの発達過程を経て、可能になったものばかりなのです。
 そうした人間の認知発達のメカニズム、いわば"心"のメカニズムがどのように働くのかを科学的立場で解明するのが、私が取り組んでいる「認知科学」といわれるものです。研究対象には幼児や成人も含まれますが、発達のスタートラインに立っている赤ちゃんの研究=「赤ちゃん学」が最も重要だと思っています。なぜなら人間の心は生まれたときから、あるいは胎児のころから機能しているからです。

 ヒトがこの世に生まれてから、言葉を操るようになり、たとえば難しい計算問題や物理学の問題が解けるようになるまでのプロセスを明らかにする。そして、赤ちゃんをとりまく環境と脳や身体の発達・成長がどのように関係し合って、そのプロセスを形作っていくのかを解き明かす。これが、赤ちゃん学がめざしていることなのです。




 生後10カ月でテレビと現実世界を区別する


 私たちがこれまで行ってきた赤ちゃんの実験のひとつに、「テレビ認知実験」というものがあります。テレビは今や我々の暮らしに大変関わりの深いものになっていますが、そのテレビ映像を赤ちゃんはどうとらえているのか、調査するものです。

 生後10ヶ月前後の赤ちゃんを、「テレビ条件」と「リアル条件」の2つのグループに分けます。テレビ条件の赤ちゃんには、坂道をおもちゃの車が転がり落ちて、画面から消えるというイベントをテレビ映像で見てもらいます。一方、リアル条件の赤ちゃんには、テレビのフレームに似せた木枠を置き、その中でテレビ条件と同様のイベントを実物で見てもらいます。赤ちゃんに各条件のイベントを何度も見せ、見飽きた後で(※1)、今度はスクリーンを上げて何もないことを見せるのです(図1参照)。このとき、どれぐらいの時間見ているかを測ります。赤ちゃんは「不思議に思うものほど、長く見る」という仮定に基づいた「注視時間」と呼ばれるものです。

 図1

 テレビに映し出された出来事を「いま、ここ」で起こっているものとしてとらえていれば、ボールやおもちゃはテレビの横を突き抜けて、スクリーンの後ろに存在していると「期待している」はずです。逆に、テレビ映像と現実世界を区別していれば、テレビ条件の場合はスクリーンの後ろに何もないと「期待している」はずです。
 その結果、リアル条件ではスクリーンが上がって何もないことを見せられると、注視時間が増加しました。「どうしてボールやおもちゃが存在しないのか」、赤ちゃんは不思議に思っているのです。ところが、テレビ条件では注視時間は増加しませんでした。「スクリーンの後ろにはおもちゃは存在しない」と思っているわけです。つまり、10カ月前後の赤ちゃんは「テレビ映像と現実世界を区別している」ことを示しているのです(※2)。

※1…これを「馴化」といいます。
※2…こうした行動レベルの実験とともに、赤ちゃんがテレビを見ている時の脳波と実物を見ている時の脳波をそれぞれ測定して、脳機能レベルでの認知の違いを調べる実験も、現在行っているところです。




 「鏡に映っている自分」がわかるのはいつからか?


 「赤ちゃんは、鏡に映っているのが自分自身と認知できているのか」という実験も行ってきました。
 自分がからだを動かせば、必ず鏡の中の「自分」も同時に動きます。これを「同時性」と呼ぶことにします。同時性がなければ鏡の中の「自分」を自分自身ととらえることはできないかもしれません。赤ちゃんは、この同時性をどうどらえているのかを調べてみたのです。

 赤ちゃんの前に、2つの画面を示します。ひとつはCCDカメラで撮った赤ちゃんの足の動きを「ライブ映像」で、もうひとつは特殊な機械を使ってライブ映像を2秒だけ遅らせた「遅延映像」で流しました。そして、どちらの注視時間が長いかを測ってみました。

 4カ月から7カ月の赤ちゃんを中心に実験したところ、4、5カ月児ではライブ映像も遅延映像も注視時間はほぼ同じで、区別して見ているとは言えませんでした。ところが、6、7カ月児は遅延映像を長い時間見ていたのです。このことから、生後6カ月ごろから鏡の中の自分を認知し始めていることがわかるのです。




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子どもの発達と脳の不思議

子どもの発達と脳の不思議-3

赤ちゃんの心のめばえと発達

 開一夫(ひらき・かずお)

プロフィール

1963年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科助教授。専門は赤ちゃん学、発達認知神経科学、機械学習。人間の心のメカニズムを、脳と行動の発達・成長の観点から研究している。著書に『日曜ピアジェ 赤ちゃん学のすすめ』(岩波書店)、『現代工学の基礎 情報の表現と論理』(共著、岩波書店)など。


開先生の研究室が行っている赤ちゃんの調査・研究プロジェクト。赤ちゃんにビデオ映像などを見てもらい、そのときの反応(見ている場所や時間、脳活動など)を調べるなど、さまざまな実験を行っている。
現在、東京近郊在住で、生後8ヶ月頃までの赤ちゃんのいる親たちに、調査への協力を募集している。
[赤ちゃん研究員応募フォーム]
また、0〜2歳児を子育て中で、赤ちゃんの心の発達に興味がある親向けの会員制のウェブ上コミュニティ「赤ちゃんラボon the Web」も開設。会員登録・詳細は下記のサイトまで(登録料・利用料は無料)。
赤ちゃんラボon the Web







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