マタニティと子育てに役立つ栄養学、シーフードベジタリアン

マタニティと育てに役立つ栄養学


3.海と大地のテーブル
子どもたちの脳と心を健やかに育てる
DHAの力


「日本人の子どもはIQが高い」。そんな話があります。これはなぜかというと、日本人の母親の母乳には、DHAが他国の母親よりも多く含まれているからだそうです。
魚をたくさん食べる日本のお母さんたちにはうれしいニュースでした。DHAとは魚の油脂に豊富に含まれる不飽和脂肪酸の「ドコサヘキサエン酸」のこと。この成分が脳を活性化させるということを英国の脳の研究者マイケル・クロフォード氏が発見しました。
今回はもう少し詳しく、このDHAのお話をしたいと思います。


DHAが頭の働きをよくするワケ

DHAが心を穏やかにしてくれる?

DHAを食べる知恵。


取材協力:鈴木たね子(すずき・たねこ)氏

農林水産省研究機関を経て、日本大学教授、国際学院埼玉短期大学教授。大日本水産会おさかな普及学術諮問会議座長、海洋開発審議会委員等を歴任。 現在は、国際学院埼玉短期大学客員教授、おさかなマイスター協会講師。「健康のための食生活」をテーマに、執筆、講演活動をしている。著書に『なぜ、魚は健康にいいと言われるのか?』(成山堂書)、『お魚を毎日食べて健康になる』(キクロス出版)など多数。



さて、どうしてDHAは頭の働きをよくするのか。脳の脂肪を分析すると、その数%はDHAでできています。脳が働くときには、細胞同士がお互いに情報を伝え合うのに突起(ニューロン)を伸ばします。そのときの材料として、DHAが必要となるのです。つまり、脳の発達、脳の情報処理のためにDHAは欠かせないものであるということです。
特に大急ぎで脳を発達させる時期にある胎児は、母親から送られるDHAが不足すると発育不全になるといいます。そしてもちろん、生まれた赤ちゃんにもDHAを与えることが非常に大切であることは想像するに難くありません。
世界的な食品基準を定めるコーデックス委員会では、調製粉乳にDHAを添加することを提案しています。それほど脳の発達に欠かせない重要な役割をDHAは担っているのです。


脳の発達をすばらしく助けてくれるDHA。実は心にも思わぬ影響をもたらすことがわかりました。
こんな面白い実験があります。富山医科薬科大学の浜崎教授の研究で3ヶ月間、あるチームにはDHAのカプセルを、もう片方のチームには偽薬として大豆油のカプセルを飲ませました。するとDHAを飲んだグループでは、攻撃性が低下したそうです。同じ内容の実験を小学生にも行いましたが、同じく血中のDHA濃度が高いほど、身体的攻撃性が低い傾向が見られたとか。つまり、魚を食べることで脳の機能が高まるだけでなく、穏やかな心をも育めることがわかったのです。

なぜDHAが心を穏やかにしてくれるのか? そのメカニズムはまだわかっていません。でも昨今のキレやすい子ども達は、もしかしたら魚を食べない肉食タイプなのかもしれません。


まずは魚の選び方。DHAは油の成分ですから、油ののった魚を選ぶことです。つまり旬の魚がいいということ。種類でいえば、背の青い魚であるイワシ、サンマ、サバ、アジ、マグロ、カツオなどです。白身魚は比較的少ないのですが、ギンダラなどは含有量が多いです。
また、油の成分であるDHAは煮魚をしたときには煮汁に溶け出します。ムニエルをしたときにはフライパンに残った油分にDHAがたくさん含まれています。それらはまさしくDHAスープ。残さずおいしくいただきましょう。
DHAは調理による熱で壊れることはありません。てんぷらやフライは揚げ油の方にDHAが流れてしまいますが、衣を厚くつけることで防げます。

いろいろお話ししてきましたが、つまりは「魚に野菜をそえて、汁まで残さずまるごと頂く」。主菜の魚、副菜の野菜という日本の伝統的な献立が、私達の身体だけではなく、頭の働きと心のバランスをよくしてくれるのです。

(談/鈴木たね子 構成・文/babycom)



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