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不妊体験・不妊治療レポート
不妊を考える「ウノトリはやってくる?」


不妊治療体験レポート-6
fさん
12年間に渡る長い治療のすえ、顕微授精で妊娠

 27歳から39歳まで12年間、不妊治療をしていました。結婚してすぐに子どもが欲しくて、半年で治療を開始。基礎体温をつけ、クロミッドを飲みながらのタイミング法を続けました。その後、離婚し、34歳で再婚。すぐにまた違う病院で治療を再開しました。
最初の治療から数えると、通った病院とクリニックは5件。治療を続けているあいだ、セックスはほとんど排卵日に合わせて月1回。今考えてみると、セックスは子どもをつくるための行為と割り切っていたのだと思います。

 再婚して4年たった頃、不妊専門のクリニックで行なった検査結果から、精子に卵を突き破る力がないということがわかりました。それまで夫もほかの検査は受けてはいましたが、その検査はしていなかったので、原因が今ひとつはっきりしていなかったのです。時代とともに検査や治療は進歩しています。私は早くから治療をはじめましたが、それまでの苦労はなんだったのだろうと、複雑な思いでした。そのクリニックで顕微受精をすすめられ、2回目の顕微受精で妊娠しました。
けれど顕微授精の際、排卵誘発剤の副作用で、卵巣過剰刺激症候群になってしまいました。卵巣に作用する排卵誘発剤には、ヒュメゴン、パーゴナル、フェルチノームpがありますが、これらはまれに、副作用としておなかに水がたまるなどの卵巣過剰刺激症候群が起こると言われています。
私の場合は腹水がたまり、おなかがはれました。水がたまると血液が濃縮されて脳血栓になることもあり、危ない状況になることもあるといいます。そんな思いまでして、1回目は妊娠しなかったので、ひじょうに落ち込みました。精神科に行ったほうがいいのではないかと、思いつめたこともあります。
そのとき39歳。これ以上あとがないという思いで、2回目に挑戦。このとき授精卵を3つ戻し、ひとつが着床しました。このときは排卵誘発剤を別のものに変えたのですが、それでも卵巣過剰刺激症候群になり、かなり悲惨でした。胚移植してから2週間入院しました。
妊娠がわかったときは、もちろんうれしかったですが、これで病院にいかなくてもいい、治療は終わったんだという思いのほうが強かったですね。

 治療には、フルタイムで働きながら通っていました。体外受精をするようになってからは、職場に不妊治療を受けているということを伝えました。それまでは、治療で休むたびに別な口実をつけていたので、職場に伝えたことで、気は楽になりましたね。幸い職場は独身が多く、子どもがいない人のほうが多かったので、根掘り葉掘り聞かれることもありませんでした。不妊治療に通っていることは友人、家族にも内緒。妊娠したあとに伝えました。

 長い治療の間には、「もしかしたら子どもができないかもしれない」と思うこともあり、そういうときは「小さな子どもがいたら海外旅行にいけないけれど、子どもがいなければ気楽に旅行にもいける。キャリアを積むこともできる」と考えるようにしていました。けれど35歳を越えたあたりから、本格的にあせりました。治療も、少し休んだらと言われたこともありましたが、続けないとかえって不安でしたね。排卵誘発剤の注射を半年休んで、クロミッドだけにしていたこともありましたが、病院には定期的に通い続けました。

 漢方薬を飲んだこともあります。整体にも1度行きました。おばが占いの人のところへと行けと言えば、占い師にも見てもらった。人にすすめられたものは、とにかく試してみようと思っていました。それを断ることで、新たな原因をつくるのもいやだと思って、とりあえず耳を傾けた。でも、私の場合は、漢方も占いも効き目はありませんでしたね。顕微授精を受ける前は、腹腔鏡検査も2回しました。全身麻酔で3泊4日の入院でした。治療は経済的に、フルタイムで働いていなかったらできなかったと思います。

 とにかく子どもが欲しかった、その強い思いで治療を続けられたのだと思います。何ごとにも一途な性格で、思うどうりにならないとバランスをくずしてしまうタイプ。神も仏もないと思ったこともありますし、子どもをあたりまえのようにもって幸せそうにしている家族がねたましいと感じたこともありました。子どもが生まれたという写真入りの年賀状をもらうと、いてもたってもいられなくなり、主人の目の前でライターで焼いたこともあります。今思えば、そうしたことをやることによって、自分の中でバランスをとっていたのだと思います。

 子どもができてよかったなあという気はします。私にとっては大きな節目を越えた気持ちです。これからは家族単位で物事を考えていきたいですね。今は、夫や子どもがうれしい顔をすることが私にとっての喜びです。でも、そんなふうに思えるようになった自分に驚いてもいるんです。子どもが変わるきっかけを、与えてくれたのでしょうね。自分の子どもだけでなく、よその子もかわいいと思えるようになったなんて、それまではなかったことですから。


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