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いまや「お産は病院で」があたりまえのように言われているけれど、出産する場所は病院に限らずいくつかの選択肢がある。



いまや「お産は病院で」があたりまえのように言われているけれど、出産する場所は病院に限らずいくつかの選択肢がある。基本的には出産は病院でしなければならないという法律はないのだ。ただ、日本の場合、出生証明書を書く人は医師か助産婦と法律で決められている。

厚生省では出産場所を5つのカテゴリーに分けている。病院、診療所、助産院、自宅、その他。「その他」というのは、出かけた先のデパートだったり公園だったり駅の構内だったり乗り物の中だったり。ちょっと信じられない話だけれど、今の日本でもこうしたお産はまだ存在する。不思議なことに、こうしたお産は超軽い。あれよあれよという間に生まれてしまうから、施設に運び込まれる暇もなく現場で出産ということになるのだろう。

病院

病院というのはあたりまえの話だけれど『○○病院』という名前で呼ばれている施設のこと。大学病院、総合病院、産科専門病院など。ベット数も20床ほどの小規模のものから診療科目もたくさんあるベット数1000床を越えるマンモス病院までそれぞれ。かたや『○○クリニック』『○○産婦人科医院』という名称の施設は正式には診療所と呼ばれている。こちらは医師は1人以上、一般的に規模は小さいのだけれど病院を見まごうばかりに立派なことろもある。そのほかには助産院でもお産をすることができる。

助産院

助産院というのはあまり知られていないけれど、助産婦が経営している医師のいない施設だ。こうした施設ばかりでなく、自宅で出産することも可能だ。

出産場所の種類を詳しき見る…..
産院選びのためのお産情報「出産施設のいろいろ」


施設にはそれぞれに特徴があるから、それを知った上で自分の希望やからだの状態にあった施設を選ぶことになる。ところがここでちょっと気になるのは、病院の規模や外見、医師の対応、食事のゴージャス度、入院部屋のインテリアなど、表面的なことは雑誌や口コミで伝わってくるけれど、肝心な医療内容については知りたいことの情報がほとんどないこと。ほんとうに知っておきたいのはそうした表面的なサービスより、どのような医学的管理が行われていて、その施設のスタッフがどのような考え方でお産をしているかという医療内容とケアの質だ。
病院というところは、多くの人にとってそんなにしょっちゅうお世話になるところではないので、その医療内容やケアの質についてよくわからないまま受診することのが一般的ではないかと思う。

私も妊婦のときには月に1回病院に通っていたけれど、ふだんはめっぽう丈夫で病気知らずなので、数年に1回内科に行くくらい。ずいぶん以前に胃の調子が悪くなって病院へ行ったときのことを思い出してみたのだけれど、そのときは適当に近所の病院を選んで(たいした根拠もなく)、たまたま担当に当たったドクターに診療してもらった。愛想のいいドクターだったし、説明も十分とは言えないまでもそれなりにていねいにしてくれた。看護婦は忙しそうで、口もきけない状態だったけれど、薬をもらって帰るだけなのだから「まあ、いいか」とそれ以上求めるものはなかった。

ひとつの施設のひとりのドクターの診察しか受けなければ、たとえほかの治療方法や処方、あるいは診療値段があったとしても比べようがない。長い闘病期間を必要とするような深刻な病気ならともかく、流感やストレスによる軽い症状くらいなら診療や治療の質は多少気にはなっても「治ればいいわ」ということになってしまう。

そのとき私は、お産も多くの人にとっては病院で産むということはこういう感覚なんだろうなと感じた。治ればいいのであって、それ以上は求めない。いわんやドクターと突っ込んで話をする気分にもなれなかったし、忙しそうな看護婦に向かって「こちらの病院での診療方針はどんなものなのでしょうか」などと聞く気もまったくなかった。その病院とのつきあいはその初診のときと、次の週に行ったときだけだったから、それ以上深く関わることも期待することもなかった。この程度のことなら、どこでもどの医師でも同じだろうというあきらめもあったような気がする。

外来を訪れる多くの患者の心理はこんな感じなのかもしれない。もちろん医師をもっと関わることになれば、じっくり話を聞きたいと感じたと思うし、この病院でいいのかどうかまず考えたに違いない。そのとき私が感じたのは、お産のときにも多くの人はこうした期待のないお任せしながら深く関わらないという冷めた目で病院なり施設を見ているのかなあということだ。

どんなことであれ、深くかかわり合いたくないと感じる人もいるかもしれないけれど、お産の場合には、妊娠中毎月1回以上通うことになるし、出産もそこでやって、出産後1週間入院して、おつきあいすることになる。しっかりその施設の考え方や分娩内容を知っておきたいし、お産の場合にはとくに、医師や助産婦といった医療者とのコミュニケーションが大切になってくる。

お産はまず病気ではないのだから、医療に任せる前に自分で産むという行為なのだ。女性の性にかかわる営みなのだ。自分を大切にするためにも、生まれてくる赤ちゃんの尊厳を大切にするためにも、自分のからだを預けてしまうのではなくて、ていねいに出産する場と介助する人たちを選んだほうがいい。
結局、お産は関わる人たちとのコミュニケーションが一番大事なんだと、マタニティ・クラスを通じて感じることだ。病院の医療者と心を通ったコミュニケーションを通わせることは難しいことだけれど、それが一番贅沢なことなんだと思う。

 by きくちさかえ

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