妊娠、子育ての環境問題-babycom

環境-babycom
babycom ecology
babycom TOPこれから妊娠妊娠・出産育児・子育てワーキングマザー食と健康


<<戻る | 子どもの発達と脳の不思議 TOP

夜ふかしは、子どもの脳と体と心に何をもたらすか

 夜ふかしは、子どもの脳と体と心に何をもたらすか


 夜ふかしをしたからといって、子どもたちの体が、ただちに明らかな異常を見せるわけではありません。しかし、それは眠りの持つ重要な働きを損ない、取り返しのつかない大きな危害を子どもたちに加え続けるのです。
 夜ふかしは、子どもに次のような悪影響を及ぼすと考えられます。

(1)夜に蛍光灯などの光を浴び、朝寝坊して朝の太陽の光を浴び損ねることで、生体時計が乱れる。時差ぼけに似た体調不良となり、作業能率・意欲・食欲が低下し、疲労感が増えていく。

(2)夜の明るい光は、脳内で作られる「メラトニン」というホルモンの分泌を減らす。メラトニンは抗がん作用や老化防止の作用があるといわれる物質で、とりわけ乳幼児期に多量に分泌される。メラトニンをこの時期に浴び損ねてしまう恐れがある。

(3)睡眠時間が減る。寝不足では集中力を欠き、イライラもつのる。アメリカの高校では睡眠時間が少なく、夜ふかしをしている者ほど学業成績が悪いという報告もされている。

(4)肥満になりがち。3歳時に就床時間が夜11時以降の子どもは、9時前に就床していた場合に比べ、小学校4年生時点で1.5倍肥満になりやすいなどの報告がある。肥満は生活習慣病のもとになる。

(5)脳の発育を促し、感情をコントロールする役割も果たす「セロトニン」という神経伝達物質の働きが落ちる。セロトニンの活性が下がると、精神的に不安定になり、気分が滅入り、攻撃性や衝動性が高まる。

 夜ふかしは、子どもの脳と体と心の発達にとって、これほどまでに深刻な問題をもたらすのです。



 眠らなければ学力は身につかない


 夜ふかしと学業成績の関連については、日本の調査でも明らかにされています。小学校高学年(4〜6年生)の成績上位群の50%は、午後9時半前に就床しているのに対し、下位群ではこの割合は20%に過ぎず、午後10時半以降に就床している者の中には成績上位群はいなかったという報告があります。別の調査では、睡眠時間が短いと学業成績も悪いという結果も出ています。
 つまり、「眠ることで学習効果は上がる」のです。言い換えれば「眠らなければ、塾通いをしても学力は身につかない」といっていいでしょう。
 眠りが不足すると、発育期の脳にどのような変化をもたらすのか。その参考になるアメリカでのネコを使った実験があります。生後1ヶ月の仔猫の片目をふさぎ、6時間、明るい環境でその間ずっと眠らせないでおくと、左右の目で光刺激に対する反応に差が出ます。これを対照群として、同じ操作(6時間、明るい環境でその間ずっと眠らせない)をしたあと、以下の3つの異なる条件にして、その反応を比べました。

・第1のグループ
 …眼帯をはずして、次の6時間は真っ暗闇で自由に眠ることができるようにする。
・第2のグループ
 …眼帯をはずして、次の6時間は真っ暗闇の状態だが、眠らせないようにする。
・第3のグループ
 …眼帯をしたまま、次の6時間も明るいところで眠らせないようにする。

 この結果、第3のグループは、眼帯で目をふさいだ側とふさいでいない側の目で、光刺激に対する反応差は、対照群の2倍ほどありました。さらに、眠らせた第1のグループでも同程度の差が見られました。ところが、眠らせなかった第2のグループでは、左右の目の反応の差は対照群より目立たなくなっていたのです。つまり、眠らないことで、それ以前に生じた変化が失われ、眠ることで以前に生じた変化が増強、固定(記憶)されたと解釈できます。
 私たちは「夜、勉強してその晩きちんと眠ると、翌朝も勉強内容は身についているが、勉強しても徹夜してしまうとすっかり忘れてしまう」という経験があると思います。眠ることは、特に発育期において記憶、すなわち脳に生じた変化を確かなものにするのです。



 「早起き早寝」と眠りのしつけ


 ヒトは周期24時間の地球で生活しています。朝陽を浴び、昼間は活動し、夜にゆっくりと休むときに、その能力を最大限に発揮できる動物なのです。脳の発育を促すセロトニンは、朝の光によって働きを高めることが知られています。よく噛んで食事をし、昼間はしっかり体を動かすことによってもその分泌は増え、活性化されます。日中に光を浴びると、夜間にメラトニンの分泌が増えることもわかっています。
 子どもの脳と体、心の豊かな成長をはかるうえで、「早起き早寝」はとても大切なのです。もちろん、昨晩まで深夜12時まで起きていた子どもを、今日から9時に寝かせることは無理でしょう。まずは、早起きをさせ、朝陽を浴びて、日中の活動を促すことが大事です。昼間にたっぷりと体を動かして遊べば、心地よい疲れで夜は早く寝られるし、質の高い、ぐっすりした睡眠がとれます。
 早寝のためには、「寝かしつけ」も必要です。子どもを眠りに導く「儀式」、たとえば「寝巻きに着替える」「翌朝に着る衣類をそろえて、枕元に置く」といった眠るまでの段取りをさせましょう。あるカナダ人の父親は、「おやすみツアー」という入眠儀式を子どもにやっていたといいます。眠る前にお父さんが子どもを抱っこして、テレビや冷蔵庫など家中の物品に「おやすみ(good night)」を告げて、回るのです。「ツアー」が終わって、布団に入れると、子どもは静かに寝入るそうです。各家庭でそれぞれの子どもに適した入眠儀式を編み出していただきたいと思います。

 図3は、睡眠とともに、「運動」「食事」も含めた、子どもの健やかな発達を促すための8カ条です。こうしたしつけは、子どもが生まれたらすぐに始めるべきでしょう。幼少期は、子どもの発達にとって何よりも大切な時期だからです。眠りのしつけとは、親が子どもに施す最初の健康教育なのです。子どもは親の生活パターンに大きく影響されます。子どもが生まれる前から、親自身もライフスタイルを見直しておいたほうがいいでしょう。ただし、これだけ多様化している社会ですから、親の仕事や家庭の事情もあります。あまり厳密に考えすぎず、できる範囲で努力することが大切です。
「人間は明暗の変化のある、周期24時間の地球で生きている動物であって、このリズムを無視して生きることは困難なのである」。いつの時代になっても、この事実は変わりません。子も親も「24時間社会」に振り回されるのではなく、うまく付き合う術も身につけることが大事です。そうした視点で、子どもの「早起き早寝」の生活習慣を確立するためのマニュアルを考え、実行していただきたいと思います。

図3 子どもたちの健やかな発育のために、
    昼のセロトニン・夜のメラトニンを高める八か条

 1.毎朝、しっかり朝日を浴びて。
 2.ご飯はしっかりよく噛んで。特に朝はきちんと食べて。
 3.昼間はたっぷり運動を。
 4.夜ふかしになるのなら、お昼寝は早めに切り上げて。
 5.寝るまでの入眠儀式を大切にして。
 6.テレビ・ビデオはけじめをつけて、時間を決めて。
 7.暗いお部屋でゆっくりおやすみ。
 8.まずは早起きをして、
   悪循環(夜ふかし→朝寝坊→慢性の時差ぼけ→眠れない)を断ち切ろう。

 (神山潤『「夜ふかし」の脳科学』中公新書ラクレ、2005年より)


 神山先生のお話から、眠りは脳内ホルモンの分泌をはじめ子どもの脳の発達、さらに体と心の発達に大きな影響を与えていることがわかります。そして、豊かな脳を育てるには、「生物としての子どもを大切にする」という視点で子育てすることが重要だといえます。
「欧米では、中学生までは夜9時までに寝るというしつけが、厳しくなされている」と神山先生は言います。しかし、これまで日本では「眠り」について、さほど重要視されてきませんでした。親が子に施す「初めての健康教育」としての「眠りのしつけ」を、今すぐ、できることから、始めていくべきでしょう。



 第2回 眠りが育てる子どもの脳と体と心

 談・神山潤(東京北社会保険病院副院長)
 
 ◎関連情報:babycom ecology 子ども環境問題
       「子ども脳のこと、もっと知ろう

 子どもの発達と脳の不思議 TOP


子どもの発達と脳の不思議

子どもの発達と脳の不思議-2

眠りが育てる子どもの脳と
 体と心


神山潤(こうやま・じゅん)

プロフィール

東京北社会保険病院副院長。小児神経科医。睡眠についての臨床的試みや研究を長年、続けているとともに、「子どもの早起きをすすめる会」には発起人の一人として関わり、講演など社会的活動にも力を入れている。著書に『「夜ふかし」の脳科学』(中公新書ラクレ)、『子どもの睡眠』(芽ばえ社)、『眠りを奪われた子どもたち』(岩波ブックレット)など。



●『「夜ふかし」の脳科学』
人間の眠りのメカニズムから、日本の子どもたちの睡眠事情、夜ふかしのもたらす問題点、さらには子どもの発達に求められている睡眠を含めた生活習慣のありようまで、詳細に論じている。本書では、とりわけ脳の発育を促す神経伝達物質セロトニンのしくみと役割を強調している。

●「早起きサイト」
http://www.hayaoki.jp
神山先生らが2001年秋に結成した「子どもの早起きをすすめる会」のWebサイト。合言葉は「朝陽をあびて、昼間は大活躍、バタンきゅう」。眠りや生活リズムに関する基礎的な知識を、わかりやすく伝えている。同会は各地で講演会やシンポジウムなども行ない、子どもたちをとりまく生活環境を改善するための活動に力を入れている。




 子どもの発達と脳の不思議TOP

 1.乳幼児期は、五感と身体を
  育てる時代


 2.眠りが育てる子どもの脳と
  体と心


 3.赤ちゃんの心のめばえと発達

 4.0歳から育てる「社会力」






1.携帯電話は子どもを守れる!?

2. 学校で「携帯電話」を学ぶ

3. 電磁波を出すベビーシッター
 「ベビーフォン」


4.キッチンのメリーゴーランド
 電子レンジ


5.高圧線とIHクッキングヒーター


babycom ecology TOP   電磁波の健康への影響   子育てハウス   子ども環境問題   ロハスな台所



Contents Copyright(C)2006- babycom