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電磁波問題は専門家の間でどのように取り上げられ、そしてどのように研究され、そして今後どのような取り組みが必要なのかなどを知るために、さまざまな立場の専門家や研究者の方々に市民科学研究室 上田さんとbabycomがインタビューしました。

第4回目 大久保貞利氏(電磁波問題市民研究会事務局長)





最も新しい現代病「電磁波過敏症」の治療法はあるのでしょうか?
その答えを探しに、アメリカのダラス環境医学治療センターを訪問してきたという電磁波問題市民研究会の大久保貞利さん。世界最先端の電磁波過敏症の最新治療の様子を、今回はお話し頂きました。

インタビュー:2003年12月 掲載:2004年1月

 アメリカの電磁波過敏症の治療専門機関への取材

 電磁波過敏症の患者さんたちはどのような診察を受けているのか?

 電磁波過敏症にはどんな症状があるのか?

 具体的にはどんな治療法があるのか?

 どれくらいの患者が来ているのか/再発することはないのか?

 日本でこれらの治療を受けることはできないのか?

 日本で電磁波過敏症が認知されるためにはどうすればいいのか?


 電磁波の基礎知識2「電磁波過敏症って何?」

「携帯電話を使っていると耳が熱くなったり、めまいを感じる」。「パソコンを使っているとひどく頭痛がして……」。そんな人たちが昨今、多くなってきたのではないでしょうか? 強い電磁波を浴びたり、長い間電磁波にさらされた生活をしていたために、人によっては身体に様々な障害があらわれることがあります。それが「電磁波過敏症」。化学物質過敏症と同じく、最近急増している現代病、ハイテク病のひとつです。

症状は化学物質過敏症とよく似ています。頭痛、めまい、吐き気、関節炎、筋肉痛、しっしんやじんましんなど身体にでることもあれば、うつや記憶力低下、不眠症などといった精神的なダメージとしてあらわれることも。
電磁波過敏症の患者は他の人が何も感じないような電磁波でも強く反応します。送電線や電車の中はもちろん、家電製品や携帯電話の近くにも強く症状があらわれるため、生活するのに大きな障害となっています。

日本ではまだこの電磁波過敏症の治療法が確立されていないため、患者の多くは適切な診断と治療を受けられていないのが現状です。「原因不明のノイローゼ」と診断されてしまうケースも。現在、一部の医療機関や市民団体などで電磁波過敏症について研究がなされていますが、その治療法の確立はまだ難しいようです。




大久保貞利氏  プロフィール

化学物質汚染や電磁波などの環境問題にかかわるNGO活動に従事。電磁波問題市民研究会事務局長。止めよう!ダイオキシン汚染・関東ネットワーク事務局次長。廃棄物処分場問題全国ネットワーク事務局員。『誰でもわかる電磁波問題』、『電磁波過敏症』(緑風出版)など著書多数。



電磁波:専門家インタビュー
さまざまな分野での専門家の方々の
考え方や意見を紹介


大久保貞利氏
 (電磁波問題市民研究会事務局長)
 「電磁波過敏症
    治療の最前線を行く」

栗原雅直先生  
 (財務省チーフカウンセラー)
 「電磁波の精神への悪影」

清水英祐先生(東京慈恵医大)
 「電磁波と化学物質の
     複合的影響について」

山崎 洋先生(関西学院大)
 「電磁波と発がんの研究-世界の潮流」




大久保さんは電磁波問題に取り組む市民団体で活動されていますが、今回はアメリカの電磁波過敏症の治療専門機関まで足を運んでこられたとか。
そこまで行くことになったきっかけは何だったのですか?

それは、電磁波問題のなかでも電磁波過敏症が手付かずの問題であるなあと痛感したことからです。
電磁波問題には3つあるんですね。送電線や電気製品などの「極低周波問題」、携帯電話や無線LANなどの「高周波問題」、そして「電磁波過敏症」です。極低周波や高周波はWHOが国際的な環境基準をあと1〜3年で確立させることが決まっています。そういう意味ではこのふたつは国際的なコンセンサスがこれからとられてゆこうとしているんですね。それが日本でも波及してゆくかもしれない。確実に解決にむけて歩みが始まっているんです。

でも過敏症に関しては、まだ国際的なコンセンサスがなく治療法もほとんどないと言っていい。WHOの「電磁波プロジェクト」の専門家たちも、過敏症に関してははっきりとした意見はさけるほどです。私は日本でもお医者さんや一部の大学で電磁波過敏症の情報を集めていたのですけど、なかなかはっきりとした意見が出てこない。この病気に関してはまだ研究者たちが及び腰、という印象がありました。
なのに、私達のところへは過敏症の人たちからの相談が絶えず、年々増加しているんです。
ほとんどの人たちが医療機関でノイローゼ扱いされて、まともに治療が受けられない。これはどうにかしなくてはいけないと強く思いました。

そこで、電磁波過敏症の最先端の治療をしているアメリカのダラス環境医学治療センターへ直接出向いて、 その治療法を調査しようと思ったんです。






 ダラス環境医学治療センター
 写真提供:大久保貞利氏
ダラス環境医学治療センターでは、電磁波過敏症の患者さんたちはどのような診察を受けているんですか?


まずは患者の過去の病歴や体質をすべて洗い出すことから始まります。具体的には尿・便検査や血液、血管、甲状腺と腎臓、免疫や抗体、栄養状態、肺機能、抗体抗原 複合測定などのあらゆる身体検査を行います。また、花粉やかび、食べ物や化学物質 に関する過敏症かどうかなどの皮膚検査、メンタル面などのチェックなども重要な検査になっていました。

これだけの検査が必要なのは、このセンターでは「人は一人ひとり違う」という観点から治療を行うからです。
過敏症は何が引き金となるのかは人によって違います。同じ電磁波過敏症でも、ちょっとした周波数の違いで発症するしないに個人差があったり、他の化学物質が複合的に関係して症状を起こしていることがあります。それをすべて把握した上で、その人それぞれの治療プログラムが組まれているのです。それがこのセンターの一番の特徴でもありましたね。
残念ながら「3時間待ち3分診察」である日本では、あたりまえのようでできていない医療の姿勢ですよね。





電磁波過敏症にはどんな症状があるのでしょうか?
また、電磁波過敏症はよくノイローゼなどの心身症との違いを判断するのが難しいと言われますが、センターではどうやって区別をつけているのでしょうか?

化学物質過敏症と症状はとてもよく似ています。記憶障害、頭痛、筋肉痛、不整脈、発疹など。症状のでかたは、まさしく「一人ひとり違う」んです。なかには骨折をしたときに体内にいれた金属が電磁波の影響を受け、関節痛になる人も。電磁波を浴び続けて、身体が恒常性を維持しようと働き、そのストレスが頂点に達した時に症状が溢れ出てくると言われています。ただ、話だけ聞くとおっしゃる通りにノイローゼや単なる怠け者扱いをされてしまいがち。日本で診断をつけるのはとても難しいようです。

このセンターでは専用の測定機器を使って判定していました。まずは患者を電磁波をカットした部屋で金属のベッドに寝かせていろんな周波数を浴びさせて反応をみるのです。電磁波過敏症の患者は被曝すると瞳孔が開きます。それで心身症との区別をはっきりとつけることができるそうです。





一人ひとり違う治療法ということですが、具体的にはどんな治療法があるんですか?



まずはすでにわかっている問題物質の「排除と回避」です。電磁波だけではなく、検査によってほかの物質が複合的に要因となっている場合はその誘発物質がわかれば、生活の中から排除してゆくことが可能となります。「免疫療法」といって、特別なワクチンを投与することで問題となる因子に対する免疫を高める方法がとられることも。
また、要因が食べ物の場合、「ローテーションと多様化食餌療法」という方法があります。これは要因となる食べ物を一定期間のなかでローテーションを考えて取り、アレルギー抗体を強めて過敏反応を弱めるものです。
このようにひとつの原因に対してもそれを排除・回避する方法と、向かってゆく方法とがあり、患者によってとられる方法が違うんですね。

もうひとつ、センターでとても重要視されているのが栄養学的な観点です。予防医学の観点を持っているここでは、病気になるのは必要な栄養がたりなくなっているからと考えられます。とくに電磁波対策としては脂肪をとることを勧めていました。人間の脳は脂肪でできていて、脂肪は絶縁体として働くことからです。また、電磁波によって乱された神経のシステムを回復させるために、正常に機能させる働きをもつミネラルを充分にとることも大切だとか。センターではミネラル豊富な天然の塩をとることを勧めていましたね。ほかにも刺激の少ないオーガニックの食品をとり、水にも気をつけるといった食生活の指導が行われています。時には静脈注射で栄養を取るという治療もありました。

他にも外科手術や薬物療法もありましたが、これは必要な場合のみに施す、というスタンスでした。なるべく患者のもつ身体の機能を高めてエネルギーバランスを整えることで、電磁波過敏症を克服させるというのが目標となっています。そのために、気功療法、心理学的カウンセリング、サウナ風呂(神経組織の回復に役立つ)なども治療の一貫として取り入れられていました。

これらの治療法を慎重に組み合わせてゆくことで、個々の医療プログラムが作られていました。





どれくらいの患者がこのセンターに来ているのでしょうか?
それにここから出たらまた再発することはないのですか?


化学物質過敏症の患者は開設以来3万人、電磁波過敏症は1500人ということでした。人によっては早く治ったり、やっぱり治らなかったりと個人差があるようです。それは自宅に戻ってからも同じだと思いますね。

ただ、このセンターでは診察、治療をすべて患者に開示して自分がどういう状態にあるのかを知らしめることも大切という考えがあります。自分の症状を充分に把握するからこそ、自宅に戻ってからも環境要因を自分自身の努力によって排除したり、食生活を改めたりできるからです。センターの分析医のひとりは「人は運動しなかったり必要な食べ物を摂らないと身体のいろんな部位にへんな信号が行き、細胞が勝手なことを始める。だからこそ、規則正しい生活は大事と言います。生活を自分でコン トロールすることも、再発を防ぐ必要な治療のひとつであることがよくわかりますね。





日本でこれらの治療を受けることはできないのでしょうか?
また、携帯電話世代の子ども達をもつお母さん達に向けて何か対策があれば教えて下さい。


個々の医者や市民団体が電磁波過敏症について研究していますが、治療を受けることはまだ難しいのが現状です。現在、一部の大学で動物実験を行ったり、環境省が認定した電磁波過敏症患者に対してモニターを実施しているなど、まだまだ研究、調査の段階です。
ただ、メカニズムがわかっておらず、特効薬がないのはダラス環境医学治療治センターでも日本でも同じです。ガンだってその発症のメカニズムがわかっていないのですから。でも科学で解明されることが不可能だからこそ、すでに危険であることがわかっているのならば、予防すること、危険を回避することが重要だと思うのです。それが 今、欧州連合などヨーロッパで広まっている「予防原則」です。肺がんにならないためにはたばこを吸わない、と同じ考え方で、電磁波にも対することです。

各国ではすでに予防原則の考えにもとづいて、政府は様々な勧告を出しています。16才未満の携帯電話使用の抑制を告知したイギリス、子どもの脳と生殖器の成長を阻害するからそばに置かないことと勧告したフランス、使用は3分以内インターバルは20分と抑制しているロシアなど。ここ数年でたくさんの国が電磁波過敏症の予防に取り組んでいます。

日本では携帯電話のCMに子どもを出演させるなど、まだまだ意識は低い。だからこそ、親が子どもに根気よく伝える必要があるでしょう。それが電磁波過敏症の予防原則として広まればいいと思っています。





日本で電磁波過敏症が認知されるためにはどうすればいいのでしょう?



今やすっかり認知されている化学物質過敏症もほんの数年前まで、電磁波過敏症と同ようにノイローゼ扱いされていましたよね。でもいまは市民運動によってマスコミでも大きく取り上げられるようになり、問題意識がぐんと広まりました。電磁波過敏症もあと数年で大きな問題として取りざたされるようになると私は考えています。

スウェーデンでは電磁波過敏症は推定2万人から5万人いるといわれています ます。ドイツでも、数年前から環境問題のなかで国民が最も高い関心を示している は電磁波問題です。携帯電話、パソコンのヘビーユーザーである日本の電磁波環境がもっと悪いのは確かなのですから、隠れた患者数ははかり知れません。携帯電話、無線LANなどの健康にかんする何の評価も調査もしなかった新技術のすごい「つけ」を、私達はこれから払うことになると感じています。私達市民団体の運動や患者の急増などが引き金となって、これから大きく問題意識が広がるでしょう。



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