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 子ども環境問題:第5回「胎児・子どもの電磁波感受性」 Interview



高電圧送電線から生じる超低周波磁界は、小児白血病の発症リスクを高める可能性がある。1979年、アメリカの疫学研究ではじめてこの問題が指摘されました。その後、1996年にWHOが『電磁界プロジェクト』を発足。各国が協調して研究を行い、結論を出すために疫学研究を進めてきました。

日本にも研究班があり、小児白血病と電磁波の関係についての疫学研究を中心的に行っているのが齋藤先生です。
今回は現在も行われている研究についてのお話を詳しく伺います。



電磁波は白血病のプロモーター?!

まず、小児白血病とはどういう病気なのかを教えて頂けますか?

「小児がんのうち一番多く約3分の1を占めているのが白血病です。簡単にいえば血液中にがん細胞が発生し、それが増殖してしまう病気です。血液の働きが正常に行われなくなり、貧血や鼻出血、感染症などを起こしやすくなってしまいます。また、これらが重症化しやすくなる。
白血病は急激に起こる『急性白血病』と、ゆっくり発症する『慢性白血病』があります。急性はまた、『急性リンパ性白血病』と『急性骨髄性白血病』に分類されます。子どもの白血病の80%弱は急性リンパ性白血病で、急性骨髄性白血病は20%弱です」


どんなことが原因で起こる病気なのですか?

「今現在、わかっている原因としてあげられるのは妊娠中のX線被曝などです。ベンゾールなど一部の化学物質も原因となります。あとはまだはっきりとは解明されておらず、疫学調査でも国別の違いはあまりみられないので、食べ物や遺伝が深く関係してはいないようですね。ここから推測すると、何かどの国にも共通の普遍的な環境要因が関係しているのではないかと考えられます」


そのひとつが電磁波ではないかということですか?

「そうですね。今、世界中の研究者の間では小児白血病と極低周波は関係があるという認識が広まっています。1976年にアメリカの研究機関が小児がん患者は送電線近くに住む割合が多いと指摘したことをきっかけに、世界中で電磁波と小児がんに関する疫学調査が行われました。今、その数は50を超えていますが、その多くでリスク比は1以上。つまり、電磁界が強いと発病のリスクが上がる、というものです。そのことから国際癌研究機関(IARC)は電磁波を発がんの可能性ありのランク『2B』をつけています」


電磁波ががんを発症させるのはどういうメカニズムからなのでしょうか?

「それについてわかっていることはほとんどないのが現状です。がんの原因には細胞に発がんを引き起こす『イニシエーター』と、起きたがん化を促進する『プロモーター』があります。先に述べた胎児期の放射線曝露はイニシエータと考えられますが、実験や疫学調査の結果と照らし合わせると、電磁波は小児白血病のプロモーターとして存在しているのではないかという見方があります」


こども環境TOP

胎児・子どもの電磁波感受性-2

専門家インタビュー






齋藤 友博 先生

プロフィール

医学博士。国立成育医療センター研究所成育疫学研究室・室長。
2004年よりWHOの電磁波プロジェクト諮問委員会に委員として参加。群馬大学医学部卒業後、Harvard大学大学院School of Public Healthにて同修士課程修了。東京都立築地産院小児科、産業医科大学医療技術短期大学教授などを経て、現職。



WHO『電磁波プロジェクト』
 ワークショップ レポート



2004年夏、WHOの「電磁波プロジェクト」主催のワークショップが開催。そのテーマは「子どもの電磁波感受性」




こども環境問題INDEX
1.子どもの健康と環境
2.子宮内環境は今・・・
3.ライフスタイルという環境
4.子どもの脳が危ない
5.胎児・子どもの電磁波感受性
6.未来の子ども達へ





先生が行った調査、研究とはどういうものなのですか?

「私たちはWHOのプロジェクトの一環として、15才以下の小児白血病の子どもがいる家庭の全国疫学調査を1999年に始めました。これは、これまでにない曝露評価を行うことが目的でした。というのも、これまで一週間続けて住宅内を連続で計測した研究はなかったのです。電磁界は家庭や産業活動の状況によって変化しますから、計測にはある程度の日数が必要だと考えたのです。昼と夜では、またウィークデイと週末では電気を使う量や頻度が変わりますから。全体としては、夜より昼、土日よりウィークデイに使用量は多くなります。
また、この研究は始まるまえから世界的な関心が高かった。なぜなら国土が狭いうえに密集して住み、経済活動が盛んでほとんどの家庭に電気製品が溢れている日本は高曝露の人が多いのではないか、と見られていたからです。結果的には、他の国と比べても、曝露のレベルはほぼ同じであることがわかりました。
調査は白血病患者とその家族、主治医の協力のもと、2年半かけて行われました。症例数は約500、対照群となる健康な子どもが約700という大規模な調査です。患者のうちの約350人に対しては面接をして今迄に住んでいた場所、予防接種歴、電気製品の利用状況、殺虫剤の使用状況などを調査しました。また、住んでいる家の内外と周辺の電磁界を測定し、患者と健康な対照者の寝室では1週間測定しました。同時に、送電線からの距離も測定しました。」


その調査結果からわかったことは何ですか?

「平均0.4マイクロテスラ(4ミリガウス)以上の電磁波では、小児自血病の発症が2〜4倍ほど増えるということがわかりました。これは、国際癌研究機関が各国の疫学調査20件のデータを一つに束ねて解析した分析から得られた2倍とほぼ同じものです。ちなみに0.4マイクロテスラ(4ミリガウス)というのは高圧送電線から数十m、街路上の約6600ボルトの配電線から数mの磁界の強さに相当します」


日本の疫学調査の結果は、各国で出揃ったがん発症リスクの結果をより後押しするようなものだったのですね。

「そうですね。ただ、こうした数値が大きいのか小さいのかは立場やリスクのとらえ方によって違います。 0. 4マイクロテスラ(4ミリガウス)の磁界が日本の小児白血病患者の発症リスクを2倍にしているとして計算してみると、毎年全国で電磁波が原因で小児白血病を発症しているのは2、3例ということになる」




あまり神経質になることはないということですか?

「過度に怖がるのではなく、冷静にリスクのもつ意味を考えて欲しいと思います。妊婦さんで言えば、電磁波を避けてもタバコを吸っていたとしたら、そちらのほうが胎児にとって病気になるリスクは高い、ということです。電磁波を過度に怖がるあまり、それがストレスになると性ホルモンの出方がかわって、やはり胎児に影響が出るかもしれない。必要な対策の知識さえ備えておけば、それほど恐怖心をもつ必要はありません」


具体的に妊婦や子育て中の母親はどんな対策をとればいいのでしょうか?

「身体に密着させるような家電、例えば電気毛布や電気カーペットなどの使い方に気をつけることです。調査中、子どもに計測器をつけていると、あるときに数値がポンとあがっていることがありました。電気カーペットに座ったり寝転んだりすると数値が跳ね上がることがわかったのです。測定してみると、電気カーペットでは10マイクロテスラもありましたからね。妊婦さんはその上に寝ころんだり座ったりすることを控えたほうが無難でしょう。また、電気毛布は寝る前だけスイッチを入れておく。ほとんどの家電は1メートル以上離れると0.4マイクロテスラ以下になりますから、そのことを頭にいれて配置を考えるといいでしょう。
また、盲点となりやすいのが家のすぐ横にある約7キロボルトの電線です。これも数m以内では0.4マイクロテスラ以上あります。電柱の変圧器へと入るこの電線が近くを走る2階の部屋には妊娠中は寝ない方がいいでしょう。子ども部屋も同じことがいえます。
子育て中のお母さん達なら、子どもが通う学校に高圧送電線が走ってないか確かめてみることです。先日、歩いていてふと小学校の運動場の隅を見たら、送電線が立っていました」


スウェーデンでは小学校や幼稚園の近くにある鉄塔の撤去や移転が行われていると聞きますが…日本はまったくそういった対応が見られないのですね。

携帯電話はどうでしょうか? 最近、子どもに持たせる親が増えてきましたが。

「WHOの会議でも、今後、携帯電話の影響についてもっと研究をするべきだという声が多数上がっていましたね。特に子どもの使用者数は各国で爆発的に増えていますから。こちらはまだ使用されはじめて数年しか経っていないので、疫学調査が難しい。ただ、大人の研究では脳腫瘍や耳下腺腫瘍へ影響しているのではという研究が出ています。WHOの国際プロジェクトでも1、2年のうちに、大人での携帯電話とがんの共同研究結果のまとめを出すことになっています。研究者の間では、携帯電話のパンフレットに電磁波レベルをはっきりと表示すべきだという意見が出ていますよ。
他の家電についても、どれくらい離れればどのくらいの電磁波の数値になるのかということを表示するようになればいいと思います。そうした働きかけがこれから必要になってゆくのではないでしょうか」


そうすれば、逆に電磁波を出さない製品の開発に繋がるかもしれませんね。
そうしたメーカーの努力や自主規制から始まって、国の規制レベルまで波が広がってゆけばいいと思います。

WHOの電磁波プロジェクトは、遅くとも2007年には最終的な結論を出すと、齋藤先生はいいます。
今現在、日本は生活圏での超低周波の磁界の強さを規制していない。経済産業省・資源エネルギー庁原子力安全・保安院電力安全課の田中英治氏は、WHOのプロジェクトで超低周波に関する環境保健基準ができるのを待っている、とした上で、「万が一磁界が人体に何かしらの影響を及ぼすと認められれば、法律やガイドラインで対応すべきだとは思う」(『日経Byte』2002年9月号)と発言しています。

国は電磁波を安全なレベルまで下げる規制を制定し、メーカーは電磁波を出さない製品をつくる。そんな方向へ国と企業を促す心構えを得るためにも、WHOの結論の正式発表が待たれます。



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