9.誕生のドラマ
出産日から2週間遅れて、ひとりの赤ちゃんがやっと生まれました。母親も父親も待って待って待ち続けた2週間でした。
とくに最後の1週間、母親の気持ちは揺れていました。
「このまま生まれないのではないか」。
赤ちゃんはまだ外に出る準備ができていないのかもしれない。それとも、陣痛を起こすホルモンの分泌が足りないのかもしれない。ストレスが子宮に鍵をかけてしまっているのではないか。私も電話でやりとりしながら、いろいろなことをいっしょに考えてきました。
自然に産みたいとだれもが思っても、自然は厳しさを秘めています。思ったようにはすすまないこともあります。
幸いクリニックの医師は、じっくり待ち、最後には少量の陣痛誘発剤を処方してくれました。その忍耐強さと、絶妙な処方は経験豊かな医師ならではのみごとな技です。
それにしても、母親も医師も助産師もよく待ちました。それは互いの信頼関係と、母親が自分のからだと赤ちゃんの力を信じたからこそ生まれたもの。自然は厳しいけれども、信頼することで、ダイナミックな展開を見せてくれる。それが冥利というものでしょうか。
マタニティ・クラスの赤ちゃんたちの誕生の知らせが、次々に届きます。
それぞれに個性豊かな誕生ドラマ。生まれ方は個性です。それを尊重するたくさんの医療がサポートがありますように。
マタニティ・クラス 『Tea for You』
第10回 2003.8掲載