乳歯の生える時期と虫歯の原因

歯育・子どもの歯を育てる

3.
乳歯の生える時期と虫歯の原因【Part.2】

取材協力・監修:北原信也 先生(2007年1月掲載・2017年11月再編集)

この世に生まれ出た赤ちゃんは、お母さんのおっぱいやミルクを飲んですくすくと成長します。だんだん外の世界に興味を持ち始め、手当たり次第にいろんなものを口にするようになったら、そろそろ乳歯が出てくる合図。一般的には6カ月ころから、下の歯ぐきにかわいらしい白い歯が頭を出します。 乳歯は、赤ちゃんが「自分で食べる力」を養う、重要な役割を果たします。「乳歯はいずれ永久歯に生え替わるから」と、ケアを怠ってはたいへん。なぜなら乳歯は、子どもの噛む力や食べる力だけではなく、骨格や容貌、発音までをも左右するからです。
シリーズ3回目は、乳歯がいつ、どのように生えてくるのか、また、虫歯はどうして起こるのかについて学んでいきます。

【Part.1】乳歯の生える時期とその仕組み

【Part.2】赤ちゃんの虫歯の原因は、親の虫歯菌?

【Part.3】乳歯の健康こそが、赤ちゃんの健やかな成長の鍵になる



虫歯の原因菌、ミユータンス菌

 親が虫歯が多いと、その子どもも虫歯が多くなりがち。「虫歯は遺伝する」。そう信じている人は意外と多いかもしれません。
ところが、これはまったくの間違いだと北原先生は言います。「歯並びや骨格が遺伝することはあっても、虫歯が遺伝することはありえません。なぜなら、生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には、虫歯の原因菌であるミュータンス菌は存在しないからです」

虫歯は、細菌の感染によって引き起こされる、一種の感染症です。虫歯を引き起こす代表的なな細菌として、ミュータンス菌(ミュータンスレンサ球菌=mutans streptococci)が挙げられます。虫歯菌は食べ物のカスなどが歯にくっついてできた歯垢(プラーク)に棲息し、長く歯の表面に留まります。

これら種々の虫歯菌が生産する「酸」によって、歯のカルシウムやリンなどの無機成分が溶け出し、エナメル質や象牙質が破壊され、最終的に歯根まで達して歯を崩壊させます。これが「虫歯」のメカニズムなのです。
生まれたばかりの赤ちゃんは、ミュータンス菌を持っていません。では、いったいどのようにしてミュータンス菌は赤ちゃんの口の中に侵入するのでしょうか?

赤ちゃんを虫歯に感染させないたに

「実は、お父さんやお母さんなど、身のまわりにいる大人によって、赤ちゃんがミュータンス菌に感染してしまうのです」と、北原先生。
例えばお父さんが口をつけた箸やスプーンで赤ちゃんにごはんを食べさせる、固い食べ物をお母さんが自分の歯で噛んでそれを与えてしまうなどの行為によって、そこから両親のミュータンス菌が赤ちゃんの口の中に入ってしまうことが考えられます。現在、虫歯の人はもちろん、過去に虫歯になったことがある人は必ずミュータンス菌を持っており、その割合は日本人の9割にのぼると言われています。
母乳による免疫が切れ、自分でつくる免疫機能が安定するまでの1歳半〜2歳半の間は、特に要注意。乳歯が生えそろう3歳までに虫歯に罹患する子どもは、実に36.5%にものぼると言われています。そのうち、すでに2.1本が虫歯になっているのです(1999年、厚生省調べ)。ひとたびミュータンス菌が口の中に入り込んでしまうと、その後も虫歯になりやすい性質になります。逆に、ミュータンス菌への感染の機会を遅らせれば遅らせるほど、虫歯にはなりにくい体になります。

「両親の口腔内環境は、驚くほどその子どもに反映されます。これは、遺伝ではなく、生活習慣が反映されているのです。極端な話をすると、口の中にミュータンス菌が入ってこなければ、一生虫歯になることはないのですから」と、北原先生。例えば、ダラダラ間食をし続ける、砂糖が大量に入ったスポーツドリンクを好んで飲む、歯の隙間や奥など細かいところまでていねいにブラッシングしないなど、口の中の環境が悪化する理由はさまざま。赤ちゃんにミュータンス菌を感染させないためにも、両親が歯をきちんとケアする、口の中を清潔に保つことがいかに大切かがわかります。


北原 信也(きたはら・のぶや)先生(ノブデンタルオフィス院長)
顔、唇、歯、歯肉それぞれを科学的かつ審美的に分析し、一般治療から審美修復治療、メインテナンスプログラムにおけるまで、口腔プロデューサーとして治療・予防に全力を尽くす。著書や講演会も多数。歯のケアを通して子どもの知的発達を促すことを目的とした歯科医と教育カウンセラーによる日本初の「歯育」プロジェクト、ノブキッズ・プロジェクトの代表でもある。


子どもの発達と脳の不思議-babycom あわせて読みたい
子どもの発達と脳の不思議

健やかな脳に育てるために親が知っておきたいこと、親がでくきることとは?




歯育・子どもの歯を育てるデンタルケア

歯育・子どもの歯を育てる インデックス

1.赤ちゃんのために知っておきたい
 マタニティの歯のケア

2.赤ちゃんの歯の健康は胎内からスタート

3.乳歯の生える時期と赤ちゃんの虫歯

4.0歳からの歯のケア

5.はじめての離乳食と歯の健康

6.よく噛んで、健康で頭のいい子に育てよう!

北原先生のワンポイント・アドバイス


babycom おすすめ記事
babycom Site
わが子のペースで考える離乳食レッスンわが子のペースで考える離乳食レッスン

母乳や粉ミルクから離乳食への移行をどのようにすればスムーズに行えるか、0歳からの食育!わが子のペースで考える離乳食レッスン


babycom 関連情報

子どものための快適な室内の空気環境

子どものための快適な室内の空気環境

赤ちゃんや子どもが一日の多くを過ごす家の中、だから考えたい「子どものための快適な室内の空気環境」。


自分でつくる!赤ちゃんすくすく環境

赤ちゃんすくすく環境

アレルゲン、誤飲、転倒、やけど…赤ちゃんにとって家の中は危険がいっぱい。室内を安全に、いつもゴキゲンに過ごせる状態にしてあげたい。




TOP▲