はじめての離乳食と歯の健康

歯育・子どもの歯を育てる

5.
はじめての離乳食と歯の健康【Part.1】

取材協力・監修:北原信也 先生(2007年5月掲載・2017年12月再編集)

赤ちゃんがおっぱいやミルク以外のものに興味を示すようになったら、それは、離乳食開始の合図。おもちゃに手を伸ばし口に入れる、指をしゃぶる、口をもぐもぐさせる、また、飲み込み方の変化は、赤ちゃんの「食べる機能」の発達を示しています。離乳食が始まってしばらくすると、徐々に歯が生え始めてきます。少しずつ口周りの機能が発達し、自分で「ごっくん」ができる、「もぐもぐ」と顎を動かして食べられるようになる。歯ぐきや歯を使って「かみかみ」できるようになってきます。

子どもの味覚は、大人以上に鋭敏です。6歳までの食生活がその子の一生を左右すると言っても過言ではないほど、小さいうちにふれる食事は大切です。「美味しく食べる力」は、歯の健康があってこそ。よく噛んで、味わい、しっかり消化できるようになるためには、どんなことに気をつければいいのでしょうか。シリーズ5回目は、離乳食と歯の健康について学びます。

【Part.1】「自分で食べたい!」が、離乳食開始のサイン

【Part.2】6歳までの食生活が将来を左右する?!

【Part.3】子どもの口の中は、家庭の鏡である



離乳食は口の発達にあわせて

赤ちゃんが大人の食事に興味をもつようになったら、さあ、離乳食のスタートです。一般的には5か月ごろが離乳食開始の時期と言われていますが、赤ちゃんはそれぞれに発達のスピードも個性も違います。ひと括りに「何か月」と言っても、赤ちゃんの口周りや顎の発達、消化能力が離乳食開始に追いついていないこともあります。赤ちゃんの体の準備ができていないのに無理して離乳食を与えてしまうと、赤ちゃんが食べることに楽しみを見いだせないばかりか、消化に負担がかかって体調不良を起こしてしまうこともあります。

赤ちゃんの口の発達を見分ける最初のポイントは、おっぱいやミルクを飲む時の口の動き。赤ちゃんの哺乳行動は原始的な反射の一種で、生まれて間もないほどただひたすらおっぱいに吸いつきます。この頃は、唇と顎を開いたままで喉に直接おっぱいを流し込むようにして飲みます。飲む量を調節できずに吐いてしまうのは、このためです。成長してくると、反射的に乳首を加えるのではなく、飲みたくない時には哺乳を拒否するようになります。こうして、自分で吸う量を調節できるようになるのです。これと時を同じくして、口を閉じて「ごっくん」と飲み込むことができるようになります。そのころがちょうど5〜6か月にあたると言われています。

離乳食開始のサイン
離乳初期は、離乳食から栄養を摂取するというよりも、食べ物に興味をもたせる、おっぱい以外の味に慣れさせることが目的。まずは1日1回から、お粥、裏ごしした野菜、スープや果汁などを与えます。まだ、「ごっくん」が上手にできないので、なるべく飲み込みやすいよう、液体に近いドロドロ状に調理してあげるとよいでしょう。最初のころは上唇が動かないまま、下唇だけがぱくぱくと動きます。しだいに、上下の唇を使って食べ物を捕らえられるようになり(捕食)、口の中に送り込めるようになってきます。
捕食ができるようになると、舌と上顎を使って食べ物を押しつぶすことができるようになります。食べ物が口の中で移動しても舌を動かして上顎の中央にもってくるので、唇の動きは左右対称です。このように口を「もぐもぐ」させる動きが見られる離乳食中期(7〜8か月)は、舌でつぶせるような固さの食べ物、おじややはんぺん、ペースト状のものが食べられるようになってきます。離乳食の回数も1日1回から2回に増やしていきましょう。また、この頃に最初の歯が生え始めます。

少し固い、もしくは繊維質の食べ物は、すりつぶさなくては飲み込むことができません。次第に赤ちゃんは舌を左右に動かして食べ物を奥の歯ぐきに移動させ、「歯ぐきでかむ」ことができるようになります。片方の歯ぐきで噛むため、顔はねじれたような表情になります。これが、後期離乳食開始(9〜12か月)の合図。少しずつ固形のものも食べられるようになり、食べられる食品の幅も広がるので、赤ちゃんにとっては食事が楽しくなっているはずです。だいたい1歳ごろまでの間に、1日3回食べるようになります。また、この頃にはスティック状の野菜を手に持って口に入れ、「かみかみ」と噛む練習をします。

離乳食は1歳半を目安に完了期となりますが、最終的には1日の栄養をおっぱいやミルク以外の食事から摂取できるようになるのが目標。「15か月までに離乳食を完了できなければ、発達が遅れているのではないか?」などと考える必要はまったくありません。5〜6か月が離乳初期、7〜8か月が離乳中期、9〜11か月が離乳後期、12〜15か月が離乳完了期、という『離乳の基本』は、あくまでも厚生労働省が定めた基準に過ぎません。「大切なのは月齢ではなく、赤ちゃんの口の動きや歯の状態を見て離乳食を与えること。口の中の機能は、食べる能力につながっているのです」。北原先生はそう話します。


北原 信也(きたはら・のぶや)先生(ノブデンタルオフィス院長)
顔、唇、歯、歯肉それぞれを科学的かつ審美的に分析し、一般治療から審美修復治療、メインテナンスプログラムにおけるまで、口腔プロデューサーとして治療・予防に全力を尽くす。著書や講演会も多数。歯のケアを通して子どもの知的発達を促すことを目的とした歯科医と教育カウンセラーによる日本初の「歯育」プロジェクト、ノブキッズ・プロジェクトの代表でもある。


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1.赤ちゃんのために知っておきたい
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2.赤ちゃんの歯の健康は胎内からスタート

3.乳歯の生える時期と赤ちゃんの虫歯

4.0歳からの歯のケア

5.はじめての離乳食と歯の健康

6.よく噛んで、健康で頭のいい子に育てよう!

北原先生のワンポイント・アドバイス


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