はじめての離乳食と歯の健康

歯育・子どもの歯を育てる

5.
はじめての離乳食と歯の健康【Part.3】

取材協力・監修:北原信也 先生(2007年5月掲載・2017年12月再編集)

赤ちゃんがおっぱいやミルク以外のものに興味を示すようになったら、それは、離乳食開始の合図。おもちゃに手を伸ばし口に入れる、指をしゃぶる、口をもぐもぐさせる、また、飲み込み方の変化は、赤ちゃんの「食べる機能」の発達を示しています。離乳食が始まってしばらくすると、徐々に歯が生え始めてきます。少しずつ口周りの機能が発達し、自分で「ごっくん」ができる、「もぐもぐ」と顎を動かして食べられるようになる。歯ぐきや歯を使って「かみかみ」できるようになってきます。

子どもの味覚は、大人以上に鋭敏です。6歳までの食生活がその子の一生を左右すると言っても過言ではないほど、小さいうちにふれる食事は大切です。「美味しく食べる力」は、歯の健康があってこそ。よく噛んで、味わい、しっかり消化できるようになるためには、どんなことに気をつければいいのでしょうか。シリーズ5回目は、離乳食と歯の健康について学びます。

【Part.1】「自分で食べたい!」が、離乳食開始のサイン

【Part.2】6歳までの食生活が将来を左右する?!

【Part.3】子どもの口の中は、家庭の鏡である



子どもの口の中で、家庭の様子がわかる?

「子どもの口の中を診ると、その家庭の様子が驚くほどよく見えてきます。どんなものを食べさせているのか、きちんとリズムをもった生活を送っているのかなどが、すべてわかってしまうんです」。北原先生が今まで診てきた乳幼児の歯は、ひどい虫歯か健康な状態か、極端に分かれるそうです。

歯磨きを怠っている、歯磨きが下手、間食ばかりしている…など、虫歯の原因はさまざま。特に、食生活が歯の健康に与える影響がたいへん大きなものであることが、東京医科歯科大学大学院若松研究室の研究(「子供の生活習慣と虫歯の関連」日本健康科学学会、2003年)で明らかになりました。虫歯に連なる食行動、生活習慣についての大規模な調査データから、虫歯が多い子どもほど甘いものを多く摂る割合が多く、野菜が嫌い、食事が不規則、食事自体を美味しいと感じていないことがわかりました。砂糖に代表される単糖類、二糖類を大量に摂取すると、糖が分解されて口の中が酸性に傾き、虫歯の原因となります。また、だらだらと間食を続ける、飴やキャラメルなど常に口の中に糖分が含まれている状態は、虫歯菌が繁殖しやすい状態を慢性的に作り出していることになります。

間食やながら食べ、食べ方にも注意して

甘いものを与えすぎることには注意しなければなりませんが、それ以上に食べ方にも気をつけなければなりません。間食や、「ながら食べ」は要注意。たとえば、夕食の時にテレビをつけていると、子どもはテレビに集中してしまって噛むスピードがゆっくりになり、口の中にいつまでも食べ物が残ってしまうことになります。たとえばおやつだったら3時と時間を決め、甘いものはお茶や水と一緒に食べさせるようにしましょう。だらだら食べ続けさせないよう「15分以内にしようね」と時間で区切るのも一つの手です。また、スポーツドリンクは砂糖の塊を飲ませているようなもの。ジュースやスポーツドリンクを入れたほ乳瓶を与え、子どもがそれを飲みながら寝入ってしまうのは、虫歯の発生を助長するようなものです。前歯が全部溶けてしまう「ほ乳瓶虫歯」の例も後を絶ちません。

北原先生は「なんのために歯があるのかと考えれば、その根っこはやはり“食べること”にあります。そもそも人間は、食べなければ生きていけないのですから。虫歯になって歯を失うと、食べることに不自由し、“美味しい”という感覚を持つことすら難しくなってしまうのです」と話します。歯を健康に保つことは、人間が生きていくうえでそれだけ大切なことなのです。何せ、口は人間のいちばん始めの消化器官なのですから。


北原 信也(きたはら・のぶや)先生(ノブデンタルオフィス院長)
顔、唇、歯、歯肉それぞれを科学的かつ審美的に分析し、一般治療から審美修復治療、メインテナンスプログラムにおけるまで、口腔プロデューサーとして治療・予防に全力を尽くす。著書や講演会も多数。歯のケアを通して子どもの知的発達を促すことを目的とした歯科医と教育カウンセラーによる日本初の「歯育」プロジェクト、ノブキッズ・プロジェクトの代表でもある。


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1.赤ちゃんのために知っておきたい
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2.赤ちゃんの歯の健康は胎内からスタート

3.乳歯の生える時期と赤ちゃんの虫歯

4.0歳からの歯のケア

5.はじめての離乳食と歯の健康

6.よく噛んで、健康で頭のいい子に育てよう!

北原先生のワンポイント・アドバイス


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