babycom ARCHIVE

不妊体験・不妊治療レポート
不妊を考える「ウノトリはやってくる?」


不妊の悩みを解消するには?
 ・・・赤城恵子さん(カウンセラー)

悩みの解消に向けて
感情をため込まない 心の傷を癒しておく
グリーフ・ワーク(嘆きの仕事)
仲間と出会う 社会の常識をみなおす

不妊の悩みとは?
個人的喪失 社会的喪失 心傷体験

悩むこと、それも成長のチャンス


 不妊の悩みの根っこにあるものとして、「個人的喪失」「社会的喪失」「心傷体験」という三つの側面をみてきました。不妊状態の「落とし穴」は、その哀しみも苦しさも「子どもさえ産めればらくになる」と思い込んで、「不妊治療」を続けなければならないという強迫感に縛られてしまうことかもしれません。その気持ちは痛いほどわかりますが、もう少し悩みとじょうずにつきあって、ゆとりを回復していくことはできないでしょうか。子どもができてもできなくても、悩みを解消することは独立したメンタルなテーマです。次に、気持ちをらくにしていくポイントとして、5点ほどをあげてみましょう。



1.感情をため込まない

 ひどくつらいときは、自分の気持ちに向き合えないものです。少しでも向き合えるようになったら、苦しさをため込まないで、できるだけ自分の気持ちや感情にぴったりする言葉に置きかえていきましょう。不妊の体験を文章にしたり、安心して話せる人がいれば無理のない範囲で話してみてください。怒りたければ怒ってもいいし、泣きたければ泣いてもいいのです。
その際、自分の体験を知的に考えたり、解釈したり、「だれそれがこうした、ああした」といった状況説明だけに終始していてもあまり意味がありません。苦しさから解放されるには、自分の感情や気持ちを大切に受けとめて、じゅうぶんにそれを「感じとること」です。
悲しみや怒りより身近な人が妊娠したときに感じる嫉妬のほうがつらい、という声もよく聞きます。「気持ちよくおめでとうと言えない自分はこころが狭い」と自分を責めている人もたくさんいます。嫉妬とは「当然、自分も得られたはずだ」という期待が破られたときにわき起こる、人間の自然な感情です。ましてや、つらい努力を重ねてきたのです。自分を責めないで「無理もないよね」と許してあげましょう。



2.心の傷を癒しておく

 人間関係や医療で受けた心の傷は、子どもができてもできなくても癒しておくことが大切です。なにかを思い出したとき、胸が苦しくなったり、のどが詰まったりするようなことはないでしょうか。なんらかの不快な感じが襲ってくるのは、傷ついたままの状態だからです。
そんなときは、出来事が起こった少し前の場面から始めて、出来事が終わったあとの場面までをていねいにたどってみましょう。最初はとてもつらい。でも自分の感情とつきあえるほどの距離をおいて感じつくしていくと、苦しみはおのずから消えていきます。ふいに襲ってくる生々しいシーンも、まるで静かな一枚の絵のように、過去の物語として記憶の中に納めることができるのです。
けれども一向にらくにならないというときは、不妊以外のなにかが影響している可能性も考えられます。小さい頃の虐待やいじめ、性暴力など、意識の外に切り離さなければ生きられなかったほどの傷に向きあうときは、専門家を訪ねたほうが賢明です。



3.グリーフ・ワーク(嘆きの仕事)

 不妊は子どもを切望する人にとって、人生における大きな喪失体験です。とくに流産したときや妊娠の限界に対峙したときは、大切な人を亡くしたときのように思いのたけ嘆き哀しみましょう。実在の子どもを亡くした哀しみは誰もが認めますが、「イメージの中の子どもを亡くした哀しみ」は本人も認めにくいものです。でも、想像力をもつ人間にはそんな哀しみもあるのです。強がらないで、仕事や趣味だけに没頭しないで、次々とわきあがってくる哀しみを汲み上げていきましょう。そして自分をいたわる涙をじゅうぶんに流してください。
これをグリーフ・ワークといいますが、こころの後遺症を残さないためにも、一生を喪失感に支配されないためにも、絶対に必要なことです。生まれてくる子どものリスクも考えられないまま「代理母」「代理妊娠」「提供卵子」などに救いを求めていく人がいるのは、グリーフ・ワークが十分にできていないためではないか、と私には思えてなりません。
子どもをあきらめることを「敗北」と感じる人は多いものです。でも「あきらめる」ことは状況を「みきわめる」という積極的な意味もあります。自分のそんなこころの働きを、ほめてあげてもよいのではないでしょうか。時間はかかりますが、このグリーフ・ワークが完結すると驚くほどらくになって、悩んでいた日々がまるでウソのように感じると思います。



4.仲間と出会う

 一人で悩みに向きあうことも大切ですが、人の暖かさを感じながら悩みに向きあうこともできます。不妊の体験をした仲間と出会い、気持ちを通わせることによって、不妊は特殊なことではなく、ごくありふれたものであることがわかるはずです。話を聴くことで人を援助することは、自分もまた援助されること。そんな情緒的な支援ネットワークをつくれるといいと思います。
その際は相手のどんな気持ちも否定してはなりませんし、安易なアドバイスや励ましも禁物です。プライバシーも絶対に守りましょう。グループに入るのがつらいという人は安心できる人やカウンセラーの共感をえながら、悩みと向きあってはいかがでしょうか。



5.社会の常識をみなおす

 悩みとじょうずに向きあって「こころの体力」がついてきたら、社会の常識や価値観を見直してみましょう。
子どもを産み育てなければ、本当に人間として成長しないのだろうか?
自分もパートナーも幸せになれないのだろうか?
親不孝なのだろうか? 老後がさびしいのだろうか?
緊張がほぐれ、自分を大切に思えるようになると、それらはあまりにも偏った思い込みであったことに気づくことでしょう。また、社会の偏見から自由になっていくためには、女性学や社会学が参考になると思います。


※babycom(ベビーコム)のすべての情報の無断掲載、転載は禁止いたします。 Contents Copyright © babycom 1996-

TOP▲