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電磁波
電磁波対策 緊急レポート
「日本の電磁界の規制のゆくえは?」

第2回
「どれくらい電磁波を浴びているのか」を調べないままでよいのか?




 電磁波の健康影響を科学的に調べようとする場合に、一番やっかいなことは、ほぼすべての人々が様々な周波数の電磁波(その大半は微弱ですが)を日常的に常時浴びる環境に生活していて、電磁波をほとんどまったく浴びない生活をしている人との比較ができなくなっている点でしょう。では、その「曝露あり」と「曝露なし」の比較が無理だとするなら、「曝露が多い」と「曝露が少ない」をできるだけ正確に比較することが次善の策になります。ところが、驚くなかれ、これまでなされてきた膨大な量の電磁波健康影響の研究において、「ある環境におかれた個人が、どういった種類の周波数の電磁波を総量でどれくらい曝露しているのか」を定量的に明らかにしたものは、ほとんど存在しないのです。

 一般的に言って、人がどれくらいの電磁波を曝露したかを知るには2つの方法があります。一つは環境中の電磁波発信源の所在を確定し、そこから発せられる電磁波の空間的な強度分布を明らかにし、人がそうした空間の中でどのように振る舞うかを調べて(たとえば24時間の平均的な行動パターンを確定して)、適切な計算によって曝露総量を求めることです。ただ、発信源といっても、10〜20数種類にも及ぶだろう家電製品(これは使用する品目や機種、使用状況などによって曝露の違いが大きい)、送電線をはじめとする種々の電力設備、携帯電話や基地局、放送電波など、比較的特定しやすいものから、地下に埋設されていたり、普段はその横を通過するだけで気づきもしない電力設備(たとえば路上の変圧設備)、電車などの乗り物、いつの間にか設置されていた無線LAN設備……等々、正確に数え上げるのはかなり大変です。もちろん、疫学研究では、たとえば携帯電話の電磁波といった着目する特定の電磁波に関して、その曝露の多い少ないを「どれくらいの期間その器機を使ってきたか」でおおよそ割り出したりするわけですが、他の(携帯電話以外の)電磁波の曝露を排除して比較するわけではないので、厳密さにはどうしても欠けてしまいます。容易に想像できるように、同じ10年なら10年それを所持していた人どうしでも、使い方がかなり異なっていて、曝露の総量が大きく違ってくるといった場合も当然あるでしょう。


計測器 EM-DEX

 そこで信頼できる曝露総量を確定するには、その人自身に計測器(メーター)を所持・装着してもらい、最低でも24時間(の数日分くらい)連続で刻々と変化する「どの周波数の電磁波をどれくらい曝露したか」を記録するのが一番だ、ということになります。ところがこれにも大きな壁があります。簡単に携帯できてしかも長時間の連続計測ができるメーターが極めて限られているのです。0〜100Hzという低周波だけしか拾えないものの、長時間の連続計測が可能であるEM-DEXは、その貴重な例外です。babycomの「一日に電磁波どれくらい?試してみました電磁波チェック!」に紹介したデータはこのメーターを使って得られたものですが、これは国立環境研究所の故・兜真徳先生から20台を貸与していただいて初めて可能になった研究でした。このデータをみればわかるように、被験者となる方にただ装着してもらうだけではダメで、その人自身に詳細な「家とその周辺環境の電磁波発信源などの見取り図」とこれまたほとんど分刻みの詳細な「1日の行動記録(いつどこにいて家電製品は何を使っていたか)」をつけていただくことが必要になります。高周波では、連続計測ができるメーターはありません。発信源が電波塔や基地局だけに限られていれば、その発信元の強さとその家までの距離がわかれば概算できるわけですが、携帯電話、無線LAN、親機・子機……と、電波を個人のニーズに応じて利用するシステムが周りに多くなればなるほど、家電製品による曝露と同様の複雑な曝露の形がうまれてくるはずで、連続計測の必要度は高まります。

 「電力安全小委員会電力設備電磁界対策ワーキンググループ」は、経済産業省がこの委員会のために新たに計測した家電製品の電磁波強度データを提出しました(に掲載された「資料2 家電製品の磁界」参照)。それは、ICNIRPのガイドライン値と比べてどの程度の強さを各々の発信源は持ちうるかを示すデータにはなっていますが、環境中で人が実際にどれくらい曝露しているかを推測していくためには、その先の計測なり計量なりが必要なのです。たとえば私が問題視して繰り返し訴えている、業務用のIHクッキングヒーターを使って仕事をしている調理師さんたちの総曝露量などは、知りようもありません。そういった現実的に問題になりそうな曝露状況の調査もないままに、“対策”(あるいは“対策”をしないこと)が決められていくとすれば、残念ながらそれは科学的なアプローチとは言い難いのではないかと私は感じてしまいます。

上田昌文(NPO法人市民科学研究室 代表)2007.12

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上田昌文さん
NPO「市民科学研究室」代表。
科学技術に関連するさまざまな社会問題に注目して、多くの専門家やグループと連携しながら、市民が必要としている研究、調査をすすめている。
大阪出身。大学では生物学を専攻(分子遺伝学、発生生物学)。英語を使った仕事(教育や翻訳)も多い。


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