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電磁波対策 緊急レポート「日本の電磁界の規制のゆくえは?」TOP電磁波の健康への影響 TOP



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電磁波対策 緊急レポート
「日本の電磁界の規制のゆくえは?」


第1回:日本の対策はこれで大丈夫か? 市民の不安に向き合う対策を

第2回:どれくらい電磁波を浴びているのかを調べないままでよいのか?

第3回:規制は不要、リスクコミュニケーションで、というけれど……



第1回:日本の対策はこれで大丈夫か?市民の不安に向き合っていこうとする対策を


 今年6月にWHOが低周波電磁界に関する「環境保健基準」を出したことは、連載「科学報告書を読み解く」の第1回目でお伝えしました。日本ではこれに機をあわせて、送電線や変圧器など電力設備周辺の電磁波対策のための話し合いが6月1日にスタートしました(経済産業省原子力安全・保安院の「電力安全小委員会電力設備電磁界対策ワーキンググループ」(以下、WGと略))。
 12名からなるWGには電気事業連合会の部長やこれまでも「現行の基準で問題なし」との主張をしてきた学者らに加えて、生活者の立場を考慮してか、婦人団体や国民生活センターの役員や毎日新聞の記者も含まれています(リスクコミュニケーションの専門家である慶応大学の教授が何故か説明もないまま、2回目以降顔をみせなくなりました)。これまで4回の委員会が開かれ(6月1日、8月20日、9月28日、10月23日)、WGの結論がほぼかたまってきた段階です。WGの議事要旨や配付資料などは、経済産業省のホームページの「審議会・研究会」一覧で公開されています。
 私はこれまでの委員会を全部傍聴しましたが、このレポートでは、その詳細にふれるのではなく、WGでのやりとりの中で浮き彫りになってきた、低周波電磁界対策に関する問題点を、いくつかのトピックを取り上げながら、考えてみます。

 つい先日の新聞報道では、「強い磁界による人体への急性的な健康影響を防ぐため、周波数50ヘルツの東日本は100マイクロ・テスラ(テスラは磁界の強さの単位)以下、60ヘルツの西日本は83マイクロ・テスラ以下にそれぞれ規制することを決めた」と出ていましたが、これまで磁界に対する規制値を持たなかった日本が、WHOの推奨する国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインをそのまま受け入れるという形になったわけです(ICNIRPの規制値については下図を参照)。

■ICNIRPの低周波磁界ガイドライン



※図1を拡大して見る
 しかしこれは急性影響について定められた規制であり、一般の市民がこれを超えるような磁界に出くわすことは、まずありません。市民が気にするのは、ICNIRPの規制値をずっと下まわる磁場ではあるけれど、いつもそれを浴び続けることになるような環境―たとえば先日私がある方のお宅で計測した例ですが、マンションの部屋のすぐそばを高圧送電線が走り、近接した部屋の中で常時2マイクロ・テスラ(20ミリガウス)を超えるような磁界が計測できるような環境―で、特に妊婦さんや子どもに何か慢性の影響は出ないのだろうか、という点です。

 いくつもの疫学研究で「(たとえば0.4マイクロ・テスラ以上の)低周波磁場と小児白血病の発症の増加」が示唆されているにもかかわらず、微弱ながらも常時磁場を浴びることについて、「安全と言い切ることはできないが、今のところ対策はとれません」では、市民は納得できないでしょう。第4回の委員会で、ある委員たちが述べたような「送電線の移設もしくは送電線近くの建物の移設は、莫大な費用がかかるから難しい」「新設のものにだけ(磁界低減の)対策を適用すると不公平が生じる」「そもそも微弱な磁界に対して低減策をとると、電磁波は危ないというイメージを植え付け、かえってそれで病気になる人が出てくる」「日本は人口密集地だから諸外国のような移設の処置はとれない」などという発言は、対策をとらないための言い訳を並べ立てているだけに聞こえてしまいます。経済産業省自身が資料としてまとめた「海外での商用周波磁界の規制導入状況(pdf)」からも読み取れるように、いくつかの国はその国の状況に応じてなんとか市民の不安に向き合っていこうとする対策を導入しています。そもそも今回のWGは、日本なりにそのことを検討する貴重な機会ではなかったのでしょうか。

 次回は、「環境省や厚生労働省は対策をとらないのか(なぜ経済産業省なのか)」「微弱な曝露というけれど、ほんとに現実に即した曝露データをとっているのか」といった点を論じてみたいと思います。

上田昌文(NPO法人市民科学研究室 代表)2007.11

第2回「どれくらい電磁波を浴びているのか」を調べないままでよいのか? >>
第3回:規制は不要、リスクコミュニケーションで、というけれど…… >>

上田昌文さん
NPO「市民科学研究室」代表。
科学技術に関連するさまざまな社会問題に注目して、多くの専門家やグループと連携しながら、市民が必要としている研究、調査をすすめている。
大阪出身。大学では生物学を専攻(分子遺伝学、発生生物学)。英語を使った仕事(教育や翻訳)も多い。


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