子育て環境とアレルギー

子育てにやさしい家と暮らし-1

子育て環境とアレルギー
協力/NPO市民科学研究室(2004年3月掲載・2017年11月再編集) 

アレルギーっていったい何?

花粉症や喘息、皮膚炎など、何らかのアレルギー症状を持っている人は今や10人にひとりといわれています。乳児の湿疹を含めれば、全体では20%を越す勢い。もはや国民病といってもいいでしょう。しかし、アレルギーとはそもそもなんなのでしょう?
きっかけは何かに触れたり吸い込んだり食べたり。症状は鼻水が出たり皮膚が荒れたり下痢をしたり…。同じ条件で症状が出る人、出ない人などアレルギーの特徴は様々です。

花粉症や喘息、アトピーなどアレルギーもいろいろですが、これらの反応はすべて同じ身体の仕組みから発病するもの。その仕組みを「免疫」といいます。


外敵から身体を守る「免疫」のありがた迷惑な働きでアレルギーに

化学物質過敏症とアトピーもアレルギーと関係がある?

ダニ、カビ、化学物質が増えればアレルギーも増えてゆく!?

アレルゲンに対して感受性が高い乳幼児期こそ、アレルゲンフリーの生活環境づくりを


 例えば、麻疹に一度かかったことがある人は二度とかかることはありません。一度かかると、麻疹に対抗する「抗体」と呼ばれるたんぱく質や「リンパ球」と呼ばれる白血球の一種が増え、再びウイルスが体内に侵入してきてもただちに退治してくれるようにセットアップされた身体となるからです。これが「免疫ができた」状態。身体を外敵から守るための身体のしくみです。このしくみを利用したのが病気にかからないように受ける予防接種というわけです。

 このボディガード役であるはずの免疫が、外敵とぶつかりあうことでかえって身体に害となる激しい反応を起こすことがあります。これがアレルギー発病のとき。例えば、鼻の粘膜に花粉が付着したとき、免疫が「外敵」と判断すると、その働きによって鼻粘膜にいる細胞からヒスタミンという物質を放出させます。ヒスタミンは神経を刺激し、くしゃみや鼻水を発生させて外敵を追い出そうとするのです。
 しかし、実際には体内に花粉が入ったからといって特に毒ではありません。その反応のほうがよっぽど身体にこたえます。つまり、アレルギーとは身体のために働こうとする免疫のありがた迷惑な反応なのです。



 化学物質過敏症もこの免疫の働きによって発症すると見られています。ただし、その発症の仕方は少し違いがあり、花粉のように細胞からヒスタミンを放出するのではなく、化学物質そのものが直接神経や筋肉を刺激してダメージを与えると見られています。

アトピー性皮膚炎の原因に関してはいろいろな考えが言われており、まだはっきりと解明されていないのが現状です。主に皮膚の乾燥や外部からの摩擦による刺激、食べ物と関連したアレルギーである可能性も高いと見られています。特に皮膚の浅い部分の異常であることから、外部から侵入するアレルゲン(アレルギーを引き起こす因子)、つまりダニなどとの関係が深いと思われます。
 化学物質がアトピーを発症させたり、花粉と化学物質の複合作用で花粉症を発症したりと、これらは複雑に関係しあっているといえます。



 今のアレルギー症状をもつ人の増加の原因は、この「外敵」が増えたことが大きいと見られています。高温多湿の日本では、自然と換気がされる風通しの良い木造の建物が主流でした。そこへ調湿作用のあるイグサでできた畳を敷き、暮らしていたのです。それが今は気密性の高いアルミサッシに、床はフローリングやじゅうたん、壁は空気を通さないビニールクロスで被われています。
赤ちゃんの安全、安心

 風通しがなく湿度が高くなった住居には、ダニやカビがたくさん発生します。実際に、木造住宅に住んでいる子どもはダニに対する免疫ができている子が23%であったのに対し、鉄筋コンクリートの家に住んでいる子では38%もあったという調査もあります。

 さらに激増している外敵が、住まいのなかの化学物質です。私たちのすぐ身の回りには、今や7万種類の化学物質が使われていると言われています。住宅建材や塗料、接着剤、洗剤、防虫剤、食品添加物や農薬、化粧品など数え上げればきりがありません。気密性の高くなった家のなかでこれらの刺激物にさらされているのですから、これらがアレルギーの発症の原因となっても不思議ではありません。



 そんな昨今では、子ども達のアレルギーに悩むお母さんがとても多いそうです。すでに発症している子はもちろん、もしかしたらこれから発症するのではと心配する人も少なくありません。
 実は、アレルギーは乳幼児のころに最も気をつけてあげる必要があります。というのも、乳幼児の身体は、大人と比べても極端に外敵に侵入されやすいからです。

 外敵に侵入されやすい身体の箇所のひとつが腸です。乳児の腸はとても未熟で、食べたものが未消化のまま素通りしがち。そのとき、消化されていない食べ物の中にアレルゲンがあると、免疫が外敵と判断してアレルギー反応を起こしやすくなるのです。もうひとつは外気にさらされている皮膚です。乳児の皮膚はバリア機能がまだ弱いため、ダニや化学物質など外敵が容易に入り込んでしまいます。
 一旦発症すると根治が難しいのがアレルギーの困ったところ。しかも、ひとつのアレルギーを起こしてしまうと他のアレルギーも併発するという傾向があります。例えば、花粉症の人はアトピーになりやすかったり、またはその逆もあり、同様に化学物質過敏症になる可能性が高いかもしれないということ。いわゆるアレルギー体質というものです。

 アレルゲンに対して感受性が強い幼児期には、特に発症前の予防が大切になってきます。ダニやカビを排除し、乳時期の3大アレルゲンと言われる牛乳、卵、大豆はとらないようにする、化学物質を身近に置かないなど、しっかり対策をとりたいものです。
 特に親や身近な血縁者にアレルギー体質の人がいるならば、子どもも同じ体質を持っていると考えましょう。自分達の住まいが外敵の温床とならないように、アレルギーを発症させないための生活環境づくりを徹底してあげることが大切です。


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