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お産の民族学

お産の民族学(日本)

文/きくちさかえ 掲載:1996年 更新:1998年 1999年 2006年

 昔、自宅でお産していた頃。「お産が始まるぞ」というときには、「お湯をわかさなくちゃ!」と誰もが思ったはずだ。これは、日本人にとって“普通”のことだったのかもしれない。しかし、ヨーロッパなどでは、昔から生まれたばかりの赤ちゃんに産湯をつかわす習慣はとくになかった。
 産湯は取りあげてくれた親(のちに産婆)、とくに老婆に入れてもらうという所が多い。また、ただのお湯というよりは、湯に何か入れるところもある。もっとも全国的に伝承されているのは、塩を入れること。塩を入れると、子どもが風邪をひかなくなる、丈夫に育つとも言われていた。
 地方によっては、米のとぎ汁、卵の白味、ホシナ(大根葉の干したもの)の煮汁、いちじくの葉の煮汁、酒、酢、銀貨などを入れるところもあった。中には、ネズミの糞(!?)、漆器などを入れる風習があったところもある。
 こうしたことは、産湯をたんに清潔にするという目的だけでなく、むしろ赤ちゃんに生命力を身につけさせ、「丈夫に育て」という親の願いがこめられている。



 自分のへその緒を持っている人は多い。家のどこか箪笥の奥のほうに、へその緒は大事にしまわれているはずだ。
でも、最近では赤ちゃんが誕生しても、へその緒をくれない病院が増えてきた。
 その昔、へその緒はとても大切なのもだった。日本各地で大事に保存され、その子の九死に一生という場合に、へその緒をけずって飲ませると、一度は必ず治るといういい伝えがある。
また、へのそ緒を紛失すると、その子の運命が弱くなる、病弱になる、物覚えが悪くなるとの言われ、へその緒を生命力とは切っても切れないものとして伝承している所が多い。
 自分のものでなく、兄弟姉妹のへその緒を持つことによって、魔除け、お守りになると言われた地域もある。
 奄美諸島では、産婆のことをヘソババという。へその緒を切る役をする者という意味だ。

参考文献/『日本人の子産み・子育て--いま・むかし』鎌田久子ほか著/勁草書房
文/きくちさかえ 掲載:1996年 更新:1999年



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