ラマーズ法
薬剤などを使わず、できるだけ自然に産むことを目的とした出産法。
ラマーズ法はまず、医療にお任せするのではなく、自分で産むという前向きな姿勢を持つことから始まる。妊娠中から出産に関する知識を身につけ、心と体を準備するというのがラマーズ法の前提になっているので、ラマーズ法が登場してから、次第に出産準備教室を開く施設が多くなっていった。さらに、陣痛の痛みを緩和するという目的から、呼吸法とリラックス法がとり入れられている。呼吸法は5〜7種類ほどあり、出産の進行ぐあいや痛みの程度に合わせて使い分ける。
ラマーズ法は当初、海外から輸入された法式で行われていたが、時代を経るとともにアレンジされ、今は日本式ラマーズ法が定着している。呼吸法も簡略化され、リラックスに重点がおかれるようになっている。呼吸をしながら体から力を抜き、リラックスする。呼吸はゆっくりとした胸式。
これまで、出産は力いっぱいいきんで産むものとされてきたが、呼吸を止めることによって胎児への酸素供給量が減るため、最近ではいきみを極力短く、無理に腹圧をかけない呼吸法に変わってきた。
ル・ボワイエ式−暴力なき出産
フランスのル・ボワイエという産婦人科医が70年代に展開したアプローチ。
ル・ボワイエは人間が生まれ出るときの環境として、従来の病院の分娩室は最適とは言えないとし、出産直後の赤ちゃんの扱いを優しくすべきだと、『生まれる環境』という概念を作った。
ここで初めて、出産のときの赤ちゃんの立場が大きくクローズアップされることになる。それまで、出産はとにかく医療主体であったし、女性たちすら自分たちだけの問題と考えていた。ル・ボワイエは、生まれたばかりの赤ちゃんはすでに五感は発達しており、するどい感性を持っているのだから、ていねいに扱うべきだとした。さらに、出生体験は心理的なトラウマとしてその後に影響するという『出生外傷』と誕生の在り方を結びつけた考え方が出てきたのも、この暴力なき出産が最初のアプローチと言える。
消毒薬の匂い、こうこうと照らされた照明器具、スタッフの事務的な対応、医療器具のガチャガチャいう音。そうしたことが、誕生する赤ちゃんにとっては暴力になるとして、消毒薬の匂いを消し、照明を暗くして、雑音を極力避ける出産法を提示した。
こうした、出生のトラウマという考え方はその後、トランスパーソナル心理学につながり、医療サイドからではない出産へのアプローチも見られるようになってきた。
アクティブ・バース
これまで医療主体に考えられてきた出産を、女性と産まれてくる子どもを主体に考えようとする出産ムーブメント。アクティブ・バース以前までの自然出産法は、みな産科医師が考案してきたものというのに対し、アクティブ・バースは産む側の女性たちの声から始まったという点で、出産に対する考え方がまったく違っている。
まず、出産の主役は母と子であることを主張。さらに、出産する場所や出産方法も自分たちが自由に選択していいはずと主張している。出産場所を出産の環境と考え、一番自分がリラックスできるところを選ぶことをすすめている。従来の病院やクリニックだけでなく、助産院や自宅にまでその枠を広げている。
また、出産のスタイルは、しゃがんだり、立ったり、歩いたりなど、産婦の好きな姿勢で陣痛期を過ごし、仰向けでない姿勢、あるいは分娩台を使わずに出産する。上体を起こした姿勢は、重力の力を借り、無理ないきみをしないで、より自然に出産することができる。
アクティブ・バースの大きな特徴は、出産を性的なこと、本能的なことと捕えていることだ。西洋医学に出産がとり込まれてから、女性たちは医療に中で患者として扱われてきた。病院の分娩室はまるで手術室のようだし、出産本来の性的、本能的部分は切り捨てられてきた。アクティブ・バースはそうした失われてきた出産本来の姿をとり戻そうというムーブメントなのだ。それは、生まれてくる子供たちへの配慮も含まれている。それまで、母と子は出産直後、医療の管理体制の中で離され、ボンディングする時間を持つことができなかった。出産直後のボンディングは、その後の母子及び父子関係にいい影響を及ぼすとされ、赤ちゃんが生まれるとすぐ母の胸に抱かれる。
しかし、日常的に自然とはかけ離れた生活をしている先進国に住む私たちは、出産のときにだけ自然に体が動くようにはなかなかできなくなっていることも事実である。そうしたことから、アクティブ・バースでは妊娠中からヨーガなどをして体の中にある自然に気づく準備をすることをすすめている。
参考文献/「イマーゴ」青土社 1994